倉持と力の収束(後編)
ラッキースケベとは偶然起こるスケベシチュエーションのことである。
偶然とは何の因果関係もなく起こる予期せぬ事態である。
しかるに、先ほど倉持に起こった数々の出来事は、現在認識できる情報のみで判断するならば、厳密には、ラッキースケベではない。
色仕掛けといった方が適切であろう。
ラッキースケベとは、もっと、はちゃめちゃで、非論理的なものである。
ただ、非論理的ではあるが、それらしい理由付けだけは、なされているものである。
倉持(いやいや… いったん落ち着こう… みんなノーパン何てこと… はは、あるわけない…)
倉持はいったん冷静になるために、そそくさと、トイレへ行く。
トイレのドアを開けて、用を足そうとする。
ちなみにであるが、基本倉持はトイレのノックもきちんとする派である。
しかし、この時は忘れてしまっていた。
筑紫「きゃああああ」
倉持「え?」
男女共用のトイレでは、筑紫が全裸でトイレに腰掛けていた。
筑紫は全裸放尿派であった。
筑紫は止めようとするが、つい先ほど、緩めたばかりであり、留めることができなかった。
倉持「ご… ごめん」
倉持がドアから出ようとすると、急な揺れによって、体が引っ張られるように、筑紫のほうに倒れ込んだ。
倉持の眼前にはまさに筑紫の谷から、溢れ出る尿が滝のように落ちているさまが映った。
筑紫「あ…ん…あああ… 」
倉持「ご…ごめん」
筑紫「ああ…全部…出ちゃう…」
筑紫はこれまで、倉持と接点はほとんどなかった。
だが、今回の件で、自分と緑谷のために動いてくれていたと知った。
その時、そんな男性もいるのか…と筑紫は思っていた。
本日、改めて倉持を見て、少しときめいていた。
助けてくれたこともそうだが、それを言おうともしない倉持に対して、好感を抱いていたのだ。
そんな倉持に、自分のもっとも恥ずかしい姿を見られている。
筑紫は…非常に高揚していた。
筑紫「あ…あ…ん…ふう…あ…ん…ん」
吐息が漏れる。
身が自然とよじれる。
筑紫は自分から、こんなに甘い声が出るとは思いもよらなかった。
二人はお互いにごめんと言葉を交わしながら、トイレを出る。
部屋に戻った瞬間、そこは予想だにしない環境になっていた。
喫茶店は2階にある。
窓からは道行く人々を眺めることができる。
その、窓が全て歪んでいたのだ。
倉持「ど、どうしたんですか? これは」
店長「倉持…どうも、局所的に揺れが起きたみたいだ」
倉持「え? 揺れ…」
倉持は頭をフル回転させる。
自身の能力がこの状況を引き起こしているとしたら…
倉持は結果から、何が起きているのか逆算する。
倉持が導き出した結果は…密室である。
もっともラッキースケベが起きやすい環境は密室…しかも外から干渉されることがない密室である。
倉持はすぐさま、すべての窓、ドア、階段、連絡通路を探る。
桜「倉持さん… 私たちも調べたんですが、どこも歪んで出ることができません… 壊そうにも、全部防弾使用の強化ドアや扉なので、びくともしないんです」
倉持「…電話…みんな電話は?」
白銀「通信障害だ…」
何人かは偶然であるが、何人かは、同じキャリアの場合は無料通話になるということにつられて、倉持と同じキャリアで契約をしていた。
倉持「ということは、当然ネットも…」
店長「ああ、ダメだ…」
倉持「場は引けているから…大丈夫か…」
店長「余裕あるな」
倉持は考える。
単なる密室では、ラッキースケベに直結しない。
先ほどの揺れのような…偶発的な何かが、やってくる可能性が高い…
倉持は目を見開き、耳を澄まし…ラッキースケベ要素がないか、隅から隅まで確認する。
今この場で起こりうるラッキースケベとは何か…
倉持の鼻腔に、甘い香りが入り込む。
倉持「この匂い! みんな、服か何かで、鼻を鼻を覆うんだ」
時すでに遅し…
そもそも…桜も白銀も赤井も三奈も…皆、おかしかった。
全員、倉持へ好意は持っている。
しかし、全員、倉持の特性を知っており、それ故無理な色仕掛けはしないように心掛けていた。
色仕掛けは、倉持の心と財布をむやみに傷つけるだけだと…全員理解していた。
短い付き合いではあるが、緑谷でさえ、そのことには気が付いていた。
だが、この喫茶店に入ってからというもの…女性陣は全員おかしかった。
装備品がいつもより少ない事、ライバルが多い事…
しかし、そんな状況にあっても、無理な色仕掛けをするほど、心無い女性たちではない。
倉持(一週間前… この建物の地下に出来たお店… アダルトショップだ。この匂い…おそらく媚薬成分が入ったローションがこぼれたか、破裂したんだろう…)
倉持はアダルトグッズに詳しかった。
倉持(特に女性はにおいに敏感… あらゆる媚薬成分が立ち込めたこの空間で… 正気を保つのは…不可能に近い…)
白銀「クラさあああん」
最初に理性を失ったのは白銀であった。
普段人前で抑圧している反動が出たのである。
白銀は、ブラウスを脱ぎ捨てながら、倉持に巻き付くように抱き着いた。
倉持「し、白銀さん。 落ち着いて」
白銀「いやぁ… おチ○コついてぇ」
倉持「何言って…」
白銀は肩を震わせながら、上目遣いで、倉持を見つめる。
白銀と倉持は身長差があまりないため、上目遣いになるのは貴重である。
白銀はここぞとばかりに倉持に甘える。
白銀「チュー… チュー…してぇ… 上の口にも…」
倉持「お、落ち着いてください」
赤井「ダメぇええええ」
倉持「赤井さん」
赤井が倉持の後ろに回り、羽交い絞めにする。
赤井は倉持の耳元で囁く。
赤井「…くらもちぃ… からだあついよぉ…ねえ…しずめて…」
倉持は耳元が弱かった。
赤井は何度か一緒に飲んだ時に、その情報を知っていたのだ。
赤井「はぁむ」
赤井は倉持の左耳たぶを甘噛みする。
赤井「ここ…気持ちいいんだよね? 私も…ちゅーしてほしいなぁ」
右側には桜が来ていた。
桜は倉持の耳の溝に沿って、舌を這わしながら、倉持にシャツの隙間から手を入れて胸板をまさぐる。
桜「倉持さん…倉持さぁん」
緑谷がフラフラと倉持の方へ進む。
その眼は倉持の下半身をじっと見据えていた。
それを押しのけて、三奈が進もうとする。
しかし、黒田がそれを許さない。
黒田は三奈を羽交い絞めにし、緑谷の首を足でロックする。
黒田(はぁはぁ… コンプラは… 私が守る…)
黒田(未成年の淫行はNG… それと、倉持の下半身露出も今はNG… それはさせない)
黒田「くっ…すごい力… 青野、あんたも…」
黒田は、青野に助けを求める。
黒田「…あ…お…の?」
しかし、遅かった。
青野は天然であり、普段から考えが読みにくい…
さらに、無邪気ムーブが多いせいか、アダルトな世界とは縁遠いと思われがちである。
しかし、よく考えてみてほしい。
天然童顔巨乳がエロいというのは、もはや一般論である。
また、無邪気はエロと相反するものではない。
エロは邪ではない。
邪な思いがエロに結び付くことはあっても、エロの本質は邪ではない。
つまり…青野はその、純粋な思いから、極めて綺麗な心から、単純な好奇心から、倉持のおチ○チンを見たかったのである。
黒田が気付いた時には遅かった。
青野は倉田のズボンの真ん中の穴から、すでにその法具を発掘していたのである。
青野「おおーー」
青野は倉持の身体と白銀の身体の間に生えているおチ○チンに目を輝かせる。
白銀が腰をよじる。
白銀「クラさん… いい?」
倉持「…」
その時、快楽の狭間で揺れ動く倉持の脳内では、激しい戦いが繰り広げられていた。
倉持の脳内
倉持「ダメだ…目を覚ませ。 動け…動けよ」
エロ倉持「何をいまさら、戸惑っている」
スケベ倉持「そうだ。 このまま身をゆだねてしまえ」
倉持「彼女たちは理性を失っているんだ。 こんな状態で、するのは間違っている」
エロ倉持「カマトトぶるなよ。 やってしまえばいいんだよ」
スケベ倉持「開放しろよ。 お前だってやりたいんだろ?」
倉持「それは…」
エロ倉持「大学時代からずっと一緒にいるけなげな桜…かわいいよなぁ? あそこまで献身的に尽くしてくれる子…なかなかいないぜ」
スケベ倉持「入社当時からの付き合いで、友達でもある赤井…友人のような恋人って男のあこがれだろ? しかもボーイッシュな見た目と、エロ下着のギャップ…たまらんよな?」
エロ倉持「美人な白銀もいいだろ? 人前ではクールな彼女がお前の前でだけは、こんなみだらな姿を見せるんだ… ほら…ほら…少し腰をずらすだけだ… 行っちゃえよ」
スケベ倉持「今なら、青野もいるぜ…あの巨乳はたまらんよ」
エロスケベ倉持「他の子もやり放題だ… さあ…行けよおおお」
倉持「…」
倉持「…」
倉持「…」
倉持「…」
倉持「…」
倉持「…」
倉持「…」
倉持「…」
倉持「…」
倉持はぽつりぽつりと語り始める。
倉持「彼女たちは皆…私の恩人だ。 私が…人間らしく…生きていけるのは、彼女たちのおかげなんだ…」
倉持「恩人だからこそ… 彼女たちを幸せにすることができない私が… 彼女たちに手を出しちゃいけないんだ… 私と交われば…その人は不幸になる…」
倉持「恩人を不幸にはできない… だから… だから… 私は…」
倉持「イかない!」
眼を見開くや否や、倉持は赤井の首筋をすっとなぞる。
赤井が倉持の性感帯をしているように、倉持もまた、赤井の性感帯を知っていた。
赤井「あ…」
続いて、白銀の鎖骨に口をつけて、きつく吸う。
白銀「ああ…ん、ん…あ」
白銀の身体がのけぞった瞬間、桜の顔を両手で支え、おでこにキスをする。
赤井と桜のロックが緩む。
倉持は、エビのように体を後ろに引いて、脱出する。
あおむけの状態でスライドしたものだから、筑紫の足の間に挟まってしまう。
見上げると、筑紫の足の付け根。
しかし、戸惑っている場合ではない。
倉持は腹筋を使い起き上がる。
そして、ズボンを脱いでカウンターに登る。
ズボンでわっかを作り、天井で動きを止めている空気循環用の扇風機にズボンを引っかけて、羽を掴む。
すると、全身を使って、扇風機を力ずくで回す。
ぐるんぐるんと勢いをつける。
そして、そのまま、足からガラスに突っ込んだのだ。
ガラスを完全に突き破ることはかなわなかった。
しかし、ガラスに大きな穴をあけることに成功したのだ。
部屋中に蔓延した淫の空気が、穴に吸い込まれていく。
桜「あれ…? 私… 何をして…」
白銀も、赤井も、青野も、緑谷も、筑紫も、三奈も、徐々に正気を取り戻していく。
黒田(やったわね… 倉持)
倉持はふと、黒田のスカートの中から除く、濡れた密林を見てしまうが、すぐに顔をそらした。
だが、これで終わりではなかった。
店長「う…うう」
倉持「店長? 店長?」
倉持(…止まっていた換気扇… この熱気… この熱気は、人の多さだと思っていたけど… そうか…電気も止まっていたのか)
倉持(店長は、人一倍暑さに弱い…)
倉持は店長のそばに駆け寄り、声をかける。
倉持「店長! 店長! しっかり」
店長「すまん。 倉持…」
倉持「体が熱い… 呼吸もあらい… 熱中症じゃないですか! 水分は取らなかったんですか?」
店長「はは、どうやら水道も止まってたようだ… 店の飲み物は、ぜーんぶ、ちょうどぴったり無くなってたんだ… 在庫管理…うまいだろ?」
倉持「そんな…そんなこと言ってる場合じゃ…」
店長「ふーーー ふーーー はーーー … …」
倉持(水分… 水分は… ないのか?)
その時、極限まで、研ぎ澄まされた倉持の耳に、かすかな音が聞こえる。
チョロ…
店長の下腹部に耳を澄ませる。
倉持(…出したての尿の水分率は約95%… 継続的に飲むと他の成分濃度が高くなり、却って脱水症状を加速させる恐れや雑菌の濃度が高くなる… しかし、出したて…出てすぐのものであれば!)
倉持「店長! 尿を口移しします! 思い切り出してください!」
倉持は衛生面を考えて、店長を抱えて素早くトイレへ駆け込む。
倉持(私の雑菌も加わる…決して安全とは言えない。 けれど、それでも…やるしかない!)
倉持は店長を便座にすがらせると、ズボンをおろして店長の下半身を露わにする。
倉持「店長! 今です」
店長は全身の力を抜く。
すると、自然に尿が飛び出した。
倉持は、それを全て受け止める。
少しでも多くの水分を確保する。
その一心であった。
倉持はその頬を限界まで膨らませると、店長の口を両手でこじ開ける。
スキマがないように、口をかぶせると、頬の中のものを少しずつ、店長の中に排出した。
店長「ん… ぐ…ぐ…んぐ…ん…ん…ぐ」
倉持は口内の水分を全て、店長に移し終えた。
店長「はぁ… はぁ」
倉持(少し、呼吸が整った… けど…まだ… 水分が足りない)
桜「倉持さん」
倉持「桜さん… と白銀さん…」
白銀「どうしてって顔してるな? ここは用を足すとこだぜ」
それ以上の言葉は必要なかった。
倉持は白銀の尿の出口にぴったりと口をつける。
白銀「…はぁん… ああ… ああああ…」
倉持「ふぁふぁ、ふぃやふのほうふぁふぁ!」
白銀「大丈夫だ… ああ…ちょっと…ん…あ…感じただけだ…ん」
白銀は、体内から絞るように、一点に神経を集中させた。
それを倉持は頬一杯に受け止め切った。
そして、店長の口に移す。
桜「わ…私も」
倉持「ああ!」
桜「…ん」
桜のものも全て受け止める。
別に倉持を仲介する必要は全くない。
しかし、いくら女性同士と言えど、恥部を直接口につけるのには抵抗があるものである。
その点、桜も白銀もこれまで、幾度となく倉持にク○ニをされている。
倉持を仲介するのは、二人にとっては抵抗が少ない行動であった。
店長「はあ…はあ… はあ… ふー… 助かったよ。 ありがとな」
倉持「でも油断はできません。 安静にしていてください」
倉持(ひとまず… 最悪の事態は脱出できた… しかし…これで終わりとは思えない…)
倉持は誰のものか分からない、唇の下にかすかに残った水滴を誰にも見られないようにさっと人差し指で拭いながら、来るラッキースケベに対抗せんと気を引き締めたのだった。