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倉持氏はラッキースケベでいつも金欠  作者: ものかろす
誕生日編
124/371

倉持の誕生日(中編)

暗闇の中、昇天する魂のように煙が立ち昇る。

少々の気恥ずかしさはかなぐり捨て、倉持は皆が作ってくれたこの場を素直に楽しむことにした。

テーブルに並べられたオードブルや鍋などは、倉持の好きなものばかりであった。

まるで幼い子どものように、倉持は楽しんだ。

自分の胸の内に渦巻くものを奥底に押し込めて、この日ばかりはただただ純粋な、他の要因を受けない倉持であろうとした。



ひとしきり、食事をしたところで由紀が話し出す。


由紀「さて、それじゃあ、そろそろお待ちかねのプレゼントタイムだ」

倉持「え… プレゼントですか?」

由紀「誕生日と言えば、プレゼントだろ。 実はこないだ、買いものする時に出会ったんだよ」

倉持「そうなんですか… あの… これ、遠回しに私の性癖発表会とかになりませんか? 大丈夫ですか? ちょっと不安なんですけど…」


青野(あ、ある程度自覚もあるんですね)

赤井(いまさら何を言ってるのかしら…)


白銀「大丈夫だ。 私は… とりあえず」

灰田「私も… 多分大丈夫な、ハズ」

緑谷「ですね。 放送コードには引っかかってないと思います」

倉持「そんな… ぎりぎりのラインですか?」

三奈「大丈夫です。 どれだけヘンタイでも、私は許容できますから」

倉持「くっ… その優しさが、逆に突き刺さる」


モニター越しに参加している千秋たちも口を開く。


千秋「大丈夫。 お姉ちゃんはいつでも味方だ」

花「安心しな徹」


倉持「発信源! ほんとやめてくださいよ。 というか、身内のそういうの知りたいですか?」


千夏「え? 知りたいけど」

千秋「言っても、血のつながりはないしなー」


倉持「おもちゃになる未来しか見えない…」


由紀「大丈夫さ。 な? それじゃあ、一番大丈夫そうな桜から行こうか」

桜「は、はい。 えーと、私は趣味の事はそんなに詳しくないんですが… 可愛いお人形さんがいいかなと思って… これを…」


『ドールに手を出したら…』という言葉がある。

ドールの道は終わりない、ドールの道は険しい

一歩踏み込めば抜け出せない魅力と魔力を秘めた趣味

それがドールである。


それゆえ、有識者たちはうかつにそれをプレゼントなどできない。

桜の無知ゆえのチョイスであった。

桜にとっては、フィギュアもプラモデルもドールも全て人形というくくりであった。

『倉持女の娘計画』の一端として、なるべく可愛らしいもの、お洋服の着せ替えができるものという考えで選んだ結果… 行きついたのが『ドール』であった。


無論、倉持もドールに興味はあった。

あったのだが、有識者ゆえにその計り知れない底があることも認識していた。

それゆえ手は出さなかった。

時折展示されているフィギュアの造形を眺めて楽しむぐらいであった。


白銀「いきなり、すごいのが来たな…」

灰田「ああ、しかも1/6スケール… これは捗るぞ」

緑谷「終わりましたね… 倉持さん」


倉持は喜びながらも、青ざめた表情で桜にお礼を述べた。


由紀「それじゃあ、ペースを上げようかな… 次、宇美」

宇美「えーと… 私は… これを…」


宇美はネクタイを手渡した。

まるで父の日の贈り物である。


倉持「ネクタイ… ありがとうございます」

倉持(これは実用的でいいですね)

宇美「はい… あの、裏…」

倉持「裏?」


裏にはアニメキャラのプリントがされていた。


由紀「よかったな。 つけて行けよ。 じゃあ、三奈ちゃん」

三奈「あ、はい。 あの私は… これを」


三奈はハンカチを差し出した。


倉持「ありがとうございます」

倉持(これは… 刺繍?)

三奈「あ… あまりしっかり見ないで、その… 下手だから…」

倉持(これは、崩しているけど… ス? キ?)


倉持は赤面した。

このようなプラトニックなアプローチに存外弱かった。


白銀(この娘、やっぱり侮れない…)

霞(刺繍とは… やるな。 しかも慣れないのに頑張ったというのは、高ポイント…)

ジョディ(オー ジャパニーズキュートガール… 奥ゆかしいですね)


由紀「ぐはああああ。 空気が甘すぎる…  中和してくれ灰田さん」

灰田「オッケー姉さん」

倉持「いつの間に、そんな関係に?」

由紀「この間すっかり意気投合してなー。 本を交換する時にスールの契りを交わしたのさ」

倉持「名作を汚さないでください」

由紀「うるさい。 さあ、灰田さんいけー」

灰田「どうぞ!」


『おしりマウスパッド』


由紀「やったぜ。 さっすが灰田さん! 分かってるぅ」

灰田「おっぱいと迷ったんだがな… こないだ、倉持さんが買っていた本を分析したところ、おっぱいよりもお尻の描写に定評のある作者が多かったんだ。 そこから導き出される結論… お前はおっぱいよりもお尻派だぁ!」


どっちも派である。


皆自分のお尻を触る。

青野(ガーン… お、おっぱいよりもお尻だなんて…)

三奈(お尻だって… 負けてはいないハズ…)

金剛(お尻なら… 私もまだまだいけるハズ)


由紀「よし、軌道修正できたな」

倉持「どういう風に持っていきたいんですか?」

由紀「次は筑紫さん」

筑紫「私ですか? 私は普通に、アロマスプレーです… と、愛液の香りを…」

倉持「と!?」

筑紫「あの… 私はアロマだけにしようと思ったのですが… それだけだと、インパクトが弱いと思って…」


緑谷(筑紫ちゃんが… こんなエキセントリックなことをするなんて…)

白銀(意外だ…)

倉持(もしかして… こないだ雑だったの怒ってる…?)


倉持「…ど、どっちも… いい… 匂いです…」

倉持は存外愛液の香りを気に入ってしまった。


由紀「これは思わぬ伏兵だな。それじゃあ、ちょっと、まじめ枠で金剛さんと黒田さんどうぞ」

金剛「なんか… あれだな? こんな感じになるなんて…」

黒田「ですね。 逆に私たちの方が浮いちゃうかも…」


『タープ・テント』


金剛「もちはこびしやすいものにしたんだ。 黒田と共同ということで」

黒田「この間外で寝袋だったでしょ? これがあれば大丈夫よね」

倉持「実用的でありがたいです。 さっそくキャンプに行きたいと思います」


由紀「さすが大人。 それじゃあ、次は… 緑谷さん」

緑谷「は、はい。 私からは、これです!」


『紺色のネクタイピン』


倉持「あれ? 普通だ…」

緑谷「ひどい… 私を何だと」

倉持「てっきり… BL系かと…」


赤井(BL読むんだ…)

真冬(徹… 自爆してるぞ)

花(育て方… 間違えたかしら…)



次々と共有されていく倉持の生態…否、性態…

倉持への贈り物はまだまだ続く。

桜 『ドール』

宇美『紺色のネクタイ(裏にアニメプリント)』

三奈『刺しゅう入りの紺色のハンカチ』

灰田『おしりマウスパッド』

筑紫『アロマスプレーと愛液の香り』

金剛・黒田『タープ・テント』

緑谷『紺色のネクタイピン』

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