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倉持氏はラッキースケベでいつも金欠  作者: ものかろす
日常編③
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倉持と第二回商品会議(後編)

倉持が席を立ち、ゆらりゆらりと青野に近づく。

危険を察知した青野は灰田を振りほどき、胸を倉持の顔に押し当て、腕で倉持の首を締め上げる。

倉持の動きが収まった。


青野「ふー。 危なかったです」


倉持の意識が途切れる直前倉持はぽつりと呟いた。


倉持「サイドメニューに… フライスティック…」

桃井「フライスティック… それ採用!」


こうして会議は倉持のノックダウンによって幕を閉じた。


青野は倉持を担いで運んでいく、灰田も責任を感じて同行する。

電車に乗り込み、駅を降り、シェアハウスに行く途中、河川敷を歩いている時、灰田が口を開いた。

灰田「大丈夫か… ずっと一人で」

青野「大丈夫ですよ。 こう見えて私、力持ちなので、男性一人ぐらいなら担げます」

灰田「そうだな… そして、強いだろ?」

青野「何を言ってるんですか? 私はちょっと力持ちのゆるふわ天然女子ですよ」

灰田「自分で自分の事を天然という女性ろくなやつはいないと姉が言ってた」

青野「へー。 さすが…賢しいですね」

灰田「分かるさ… おっぱいの弾力、私を振りほどいた時の力、倉持さんを絞め落とした時のみのこなし… あんたただものじゃない」

青野「それで? だから? 私、バトル漫画のキャラじゃないですよ?」

灰田「私と戦え」

青野「絶対言うと思ったあああ」

灰田「ちょうど、おあつらえ向きの河川敷だ。 ここで、勝負…」

青野「はぁ… ちょっと、だけですよ」

灰田「そうこなくっちゃな」


青野と灰田は川のほとりに降りた。

青野は倉持を降ろし、灰田と対峙する。

灰田が構える。

青野(こういうタイプは、言っても通じないですからね… ここは一つ適当に付き合って、負けてあげましょうか… 早速来た… 馬鹿正直な右ストレート、正拳突きね。 速い、けど軽い…これは、ちょっと、ずらして頭で受ける。 そして、よろけるふり… 次に蹴り… 女の子の顔を蹴るなんて… 容赦ないわね… これは、ぎりぎりでよける。 けど、微妙に鼻をかすめさせて… はい、鼻血… 美少女の鼻血には嗜虐心をあおる効果と戦意を喪失させる効果がある… ほら、動揺してる… ここで畳みかける)

青野「うわーーーん。 灰田さん、ひどいですぅ… いきなり顔を蹴るなんてええええ。 イタイ…」


青野は泣き叫ぶ。


灰田「…三文芝居は止めなよ。 私は街のチンピラとは違うんだ。 全然食らってないだろ?」

青野「そんなぁ… ひどいですぅ。 本当に痛いんですよおお」

灰田「はいはい… そんなカマトトぶってると… とっちゃうぞ… 好きな人も」

青野「はぁ? 倉持さんは渡しませんよ」

灰田「やっぱりな… こんな単純な誘導に引っかかるなんて… よほど動揺していると見える」

青野「ううう… ふぅ… はーあ… 私、昔の自分がキライなんですよ… 強くて、卑怯で、冷酷で、賢くて、可愛い… そんな自分が好きじゃないんです」

灰田(自画自賛激しいな)

青野「戦うと… どうしても、昔の自分が出てきてしまう… それが、嫌なんですよ。 …けど、ぽっと出に居場所を奪われるのは… もっと嫌なんです」

灰田「面構えが変わったな… びりびりくるぜ」


青野の周辺の風が啼く。

灰田は一瞬後悔した。

とんでもない化け物を起こしてしまったことを。

だが、戦闘狂の性か、後悔以上の悦びが、灰田には沸き上がっていた。


灰田「行くぞ…」

青野「正々堂々… 馬鹿正直… 虫唾が走るわ」


徐々に間合いを詰めていく。

灰田が一歩踏み込んだ瞬間、青野は体重を後ろにかける。

灰田は全力の正拳突きを放つ。

青野はリーチの長い脚を使う。

倉持が間に入る。


倉持は左手で、灰田の腕を掴み、右腕で青野の足を受け止める。


灰田「な…」

青野「倉持さん」


しかし、2人の声は倉持に届かない。

倉持は無意識のうちに、2人の戦いを止めに入っていたのだ。


青野「意識が… ない」

灰田「そんな… 嘘だろ」


倉持はグラグラと揺れて、前に倒れた。

青野は支えに入るが、腰に力が入らず、そのまま、押し倒される形で地面に倒れてしまった。

余談であるが、倉持が押し倒す形になることは稀である。

基本的に多少無理をしてでも下に入るようにしている。

倉持は青野のブラウスの下から、顔を突っ込み、青野のお腹に入る。

同時におっぱいに片手が添えられる。


青野(あ… お腹… 最近ちょっと、ぷにってるかも…)


倉持の吐息がこそばゆい。


青野「ああああはははあ。 く、くすぐったいいいい」


その様子を見て、灰田は戦意を失った。


灰田「済まなかったな。 青野さん…」

青野「ははははは… ひー…ひー。 ふぅ… どいてぇ」


倉持は目覚めなかったので、灰田が無理やり引きはがした。

その後、灰田と青野は拳を交えた者同士、友情が芽生えていた。

無言で拳を交わした。


そして、シェアハウスまで、青野と灰田2人で運んだ。

シェアハウスにつくと、紅葉に事情を説明して、共有スペースのソファに倉持を置いた。


そのまま帰ろうとしたとき、由紀が灰田を呼び止めた。


由紀「灰田さんだっけ? もしかして、あんた… いける人?」


灰田が構える。


由紀「違う違う… こっちだよ」


由紀がBL本を出す。


灰田「…なるほど。 そういうことですか…」

由紀「あんたとは一度話をしてみたかったんだ」

灰田「私も趣味の合う人と話をするのは好きです」

青野「あのーー。 どういう話ですか?」

由紀灰田「一般人は黙ってて」


青野は黙って、倉持の横に座った。


由紀はテーブルに本を並べて灰田と話し始めた。

その話は深夜にまで及んだ。


帰り際、由紀と灰田はがっしりと握手を交わす。

性癖を交わした者同士友情が芽生えていた。

その握手は拳よりも固く結ばれていた。


青野(なんか… こっちとの方が強い友情芽生えてませんか… まあ、私は倉持さんに添い寝できたんでいいですけど… なんか釈然としない…)

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