倉持と由紀と下着
由紀「さて、恒例の下着当てゲームをするか」
倉持「桜さん。 イカ焼き美味しいですね」
桜「ですねー。 たいてい冷めると、味は落ちるんですが、これはまだ美味しいですね」
真冬「徹、さっきまで運転で食えなかっただろ、いっぱいあるから食べなよ」
倉持「ありがとうございます。 まだ、元気はあるので、いつでも運転交代しますよ」
真冬「いやいや。 寝ときなさいよ。 私たちは明日ゆっくりできるけど、徹はいつも通りの予定でしょ?」
倉持「でも、寝たらどうなるか分からないので…」
真冬「…そうね」
由紀(これが… イジメかっっ)
車は高速道路を進んでいく。
由紀は退屈し始めていた。
由紀は倉持の服の裾を掴み、構ってくれとねだる。
倉持「由紀さん考案のゲームはもれなくひどいので… ちょっとNGで」
由紀「…してくれなきゃ、お前の性癖全てを桜と会社の人間にバラす」
倉持「仕方ありません。 一戦だけですよ」
桜(倉持さん… 何を隠してるの… 私が知ってる限りでも、結構エッチなんだけど)
由紀「勝負は簡単、下着当てクイズだ。 交互に下着の色と形を言う。『赤のふんどし』とかな。 完全に当てたら勝ち。 同時に当たった場合は、じゃんけんで決める」
倉持「じゃあ、じゃんけんしましょうよ」
由紀「それは意味ないだろ。 勝敗は二の次、下着を聞き出すことがこのゲームの真骨頂だ」
倉持「いいかげん訴えられますよ。 私に」
由紀「いいだろ。 お前も興味あるだろ? 私の下着にさ」
倉持「まあ、正直8年前は」
由紀「出会ったばかりの頃じゃないか、興味なくすの早すぎんか」
倉持「いえ、それでも3時間ぐらいは関心ありましたよ」
由紀「私、なんかしたか?」
倉持「…お酒って、コワいですよね」
由紀「全然記憶ねぇ…」
ーあれは、8年前のこと
倉持は桜のシェアハウスを訪れることになった。
ー回想キャンセル
由紀は考え事を始めようとしている倉持を現実に引き戻した。
由紀「よし、それじゃあゲームを始めるか。 お茶は濁させないぜ」
倉持「…はいはい」
由紀「じゃあ、私が先行な。 桜の下着は、ピンクのフリル!」
桜「ちょっ。 こっちに銃口を向けないでください」
倉持「青のレース!!」
桜「倉持さんも乗らないでください」
倉持由紀「正解は?」
桜「言いません!」
由紀(さすが倉持。 この順応性の速さ、伊達じゃないな。 対象が桜になったとたんイキイキとしやがった。 このヘンタイめ)
倉持(なるほど… 確かに、由紀さんの下着を当てるとは言っていなかった。 桜さんの下着なら… 正直やぶさかではないっっ。 しかし、このゲームに参加することで桜さんにヘンタイと思われてしまうリスクはある… まさに諸刃の剣、だけど仕方ない。 戦わなければ生き残れないのだから)
真冬が左手で、ぴらりと桜のスカートをめくる。
桜「きゃっ。 ちょっと、真冬さん。 何をするんですかぁ」
真冬「ピンクのフリルよ。 由紀の正解ね」
由紀「よっしゃあ」
倉持「くっ…」
真冬と桜が視線を合わせる。
由紀「それじゃあ、次の問題。 私の下着を当ててみな。 一回で当てることができたら、このゲームから解放してやるよ」
倉持「もはや、ルールがめちゃくちゃなんですが…」
由紀「私がルールブックだ!」
倉持はたこ焼きを頬張り、もぐもぐと口を動かす。
倉持(下着… 確かに今日はラッキースケベがほとんど起きていない。 交流会で胸が当たったぐらいだ。 …かなり安く済んだのは助かった。 他の人の下着は見えていない。 無論桜さん、由紀さん… 霞の下着は分からない。 これは…もしかして女装の影響だろうか…女装によって、力が抑えられているというのか… これは検証の余地があるな)
倉持は続けてたこ焼きを頬張る。
倉持(まあ、それはそれとして、今は目の前の由紀さんの下着を当てなければいけない。 ああ、もうそわそわし始めてるし… 今日はノーヒント… ということは普段の様子から、特定するしかないな… あれ? そういえば由紀さんの下着を見たことって… 基本裸のイメージしかない… じゃあ、どんな下着を… 思い出せ… 思い出すんだ…)
ー8年前
由紀「これを私に? ていうか… お前だれだっけ?」
倉持「倉持です。 桜さんの学友です。 先日はお世話になりました」
倉持は由紀に袋を差し出す。
由紀「まあ、もらえるもんはもらうけど… ん? なんだこりゃ。 下着?」
倉持「ええ、下着です」
由紀「は…ははははは。 マジか! 出会って2回目の人間に下着渡すって… お前だいぶクレイジーだな。 ははは。 面白れぇ」
倉持「初対面で、全裸を押し付ける人に言われたくはないですが…」
由紀「全裸? なんのことか知らんけど。 まあ、ちょっと待ってろ。 せっかくだ」
そう言うと由紀はその場で、シャツとホットパンツを脱いで、全裸になった。
倉持「ちょっ。 いきなり脱がないでくださいよ。 恥じらいとか…」
由紀「気にすんな。 私は気にしない」
由紀は体の前で、ブラジャーのホックを止めて、くるりと回して肩ひもをかける。
ショーツを上げて、その豊満なヒップを包み込む。
黒のレースの下着であった。
由紀「すげー。 ぴったりだ。 桜からサイズ聞いたのか?」
倉持「いえ、見れば分かります」
さすがの由紀も引いた。
この時お互いの印象は奇遇にも『やべーやつ』であった。
倉持はたこ焼きを食べつくすと同時に、記憶の海から戻ってきた。
倉持「お待たせしました。 分かりました」
由紀「随分と考え込んだな… じゃあ、答えてもらおうか」
倉持「肌色のばんそうこう… ですね」
由紀「それがお前の答えか?」
倉持「ええ… 考えてみれば、由紀さん。 荷物何も持っていませんでした。 と、いうことは下着を持ってきていないと予想できます。 そこから導き出される答えは肌色のばんそうこう。 それしかないんですよ」
由紀「ファイナル… アンサー?」
倉持「ファイナルアンサーで」
由紀「…」
倉持「…」
由紀「…」
倉持「…」
由紀「正解!」
倉持「よしっっ!! って、良くないですよ。 それで、お祭りとか行ってたんですか?」
由紀「だって、下着一着しかないし… それは大事にしたいからな」
倉持「…」
由紀「さて、今度はこっちの番だな」
倉持「え… これで終わりって…」
由紀「あれは嘘だ」
倉持「ルールブック落丁しすぎですよ」
由紀「お前の下着はぁ。 黒のレースだぁ!」
倉持「くっ… 正解です。 けど、何で分かったんですか?」
由紀「いや、タンスの中に入れたの私らだし… 消去法で分かるさ。 それに…」
倉持「それに?」
由紀「お前、結構パンチラしてたぞ」
倉持「え… 嘘?」
由紀「慣れないものは履くもんじゃないな… お前はスカートでの振舞い方をまるで分かっちゃいねぇ」
桜「そうね。 結構めくれてたわよ。 気を付けないとね」
倉持「ええっ。 そ、そうなんですか。 由紀さんには言われたくないですが、桜さんに言われるのは納得です」
由紀「おい」
倉持「まあ、また練習します」
桜(するんだ練習)
倉持の女装への道のりは険しい。
この後じゃんけんをした結果、由紀が勝利した。