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倉持氏はラッキースケベでいつも金欠  作者: ものかろす
日常編③
113/371

倉持と揺らめく花火

ー日曜日夕刻

控室で、一休みしている倉持の元を霞が訪れる。


霞「お疲れさま。 いい講演だったわよ?」

倉持「あれ?」

霞「どうしたの?」

倉持「なんか… 時間飛びましたか?」

霞「…何言ってるの? さっきまで、パネルディスカッションで、社会人としての目線から学習の重要性を存分に語ってくれてたじゃない?」

倉持「そうですか… 何か腑に落ちませんが… 分かりました」

霞「で、このあとも交流会があるけど、どうする? 男性はいないけど… というか、徹は今どっちでカウントすればいいの?」

倉持「一応男で… というか、この服装は霞もかんでたでしょ?」

霞「…下着は私と花さんチョイスよ」

倉持「どうりで… 私が一時縞パンを好んでいたことを知ってるのは霞ぐらいだからな」

霞「で、どうするの? 交流会」

倉持「…参加しましょうか、まあ、帰りがあるので長居はできませんが」

霞「そうこなくてはね」


倉持はその装いのまま、交流会に参加した。


倉持(雪解先生と東風先生は… あっちの方か、今は他の講演者と話をしているから、後にしよう)


倉持は女子高生に囲まれていた。

JK①「倉持先生。 先生はどうして今日はその格好なのですか?」

倉持「これしかなかったんですよ」

JK②「先生、その格好は趣味ですか?」

倉持「いいえ、成り行きですよ、 普段は男性用のスーツを着ています」

JK③「先生は男性もいけるくちですか?」

倉持「まあ、いけなくはないです」


キャーキャーと黄色い声が交流会の会場に響く。


雪解「皆さん。 そのように取り囲んでは、倉持さんが窮屈でしょう」

JK①「すみません… 配慮が足りませんでした。 倉持先生」


女子高生たちは倉持と距離を取り、雪解に道を開けた。

倉持「ご無沙汰しておりました。 雪解先生… 今は校長先生、ですかね」

雪解「ええ、おかげさまで。 良い講演だったわよ」

倉持「恐れ入ります」

雪解「…あの倉持くんがね。 まあ、昔から優秀だったけど、さらに鍛えられたようね」

倉持「いえ、まだまだですよ」

雪解「…ちなみに、その服装も向こうに行った影響?」

倉持「家にこれしかなかったのです」

雪解「…あいかわらず、不思議なことが起きてるのね」

倉持「ええ、びっくりですよ」

雪解「まあ、今日はゆっくり楽しんでね。 それでは…ごきげんよう」

倉持「ええ。 また」


倉持は雪解に一礼すると、ドリンクコーナーへ行きティーバッグを取り出す。

そこに教頭の東風がやってくる。


東風「挨拶が遅れてごめんなさいね。 いい講演とディスカッションだったわよ」

倉持「東風先生、お久しぶりです。 教頭先生になったんですね」

東風「おかげさまでね… どう? 元気してる」

倉持「ええ、生きてますよ」

東風「安心したわ」


倉持はゆっくりと紅茶を淹れる。

バッグを取り出し、軽くかき混ぜる。

後ろに人がいないことを確認し、その場でカップに口をつける。

一息ついてから、会釈しその場を後にする。


倉持「それでは、また」


倉持は東風から離れて、他の先生たちに挨拶をしに行く。


倉持(…あくまで今は部外者。 しかし、あれだな。 交流会だというのに不思議な配置だな。 校長教頭は講演者に挨拶をしにいくものの、他の教員は教員同士でかたまっていて最小限の挨拶で終わっている… まあ、そんなものか… それに対して、生徒たちはなかなか積極的だな…)


倉持は再び女子高生に取り囲まれていた。

倉持は生徒たちの質問に答えていく。

講演の内容について詳しく尋ねる生徒も多く、倉持は感心していた。


1時間程度の交流会は終わり、倉持は控室に戻って荷物をまとめて帰宅した。


実家につくと由紀たちも帰り支度を整えていた。


桜「お疲れ様です。 倉持さん」

由紀「おーす、お疲れさん」

倉持「ええ。 お待たせしました。 それでは帰りましょうか?」

由紀「だな」

桜「私たちは荷造り済んでるわよ」

真冬「徹も着替えてきなよ」

倉持「そうですね。 少々お待ちくださいね」


倉持は部屋に戻ると、フォーマルスーツを脱いで、軽い服に着替えた。

階段を降りるとふわりとスカートが翻る。


倉持「帰りましょう。 運転しますよ」

桜「大丈夫ですよ。 私たちは元気ですから」


一同は荷台にバッグやトランクケースを積んで、車に乗り込んだ。


倉持「それでは… 霞さんにもよろしくお伝えください」

花「分かったわ。 また、いつでも来てね」

千秋「そういえば、今日神社で祭りもしてるけど、良かったのか? いかなくて」

由紀「祭り? マジで? 行きたい行きたい」

真冬「いいなー。 あの祭りの花火は結構迫力あるんだよね」

倉持「ああ… そうですね。 ちょっと、寄りますか? じゃあ、運転しますよ」


倉持は助手席に移り、祭りの会場まで車を走らせた。


桜「でも、お仕事大丈夫ですか? 明日も普通にありますよね」

倉持「大丈夫ですよ。 お祭りも、そこまで遅くはならないと思いますので」

真冬「出店でご飯買って、花火見たら帰ろっか」

倉持「ええ。 駐車場もちょっと、離れたところにすれば渋滞に巻き込まれずに済むでしょうし」


駐車場から歩き、途中の出店で、たこ焼きや箸巻き、大判焼き、イカ焼きなどを買う。

倉持は一同を連れて、花火がよく見えるスポットへ行く。


倉持(そういえば… 金剛さんと見たのもこの場所だったな…)

由紀「おおー。 たーまやー」

真冬「かーぎやー」

桜「二人ともはしゃいで」

由紀「よっしゃあ。 この後はア○カンカップルに虫よけスプレーを散布する活動を始めるか」


由紀は森の中へ駆け出す。


真冬「止めなさいよ。 そんな残酷なこと。 トラウマになるわよ。 由紀は私がどうにかするから、二人は最後まで花火見なよ」


真冬も後を追う。


倉持「…」

桜「…」


桜(下手なの…)


倉持「私たちも… 帰りますか」


桜が倉持のスカートの裾を引っ張る。


桜「ごめん。 もうちょっとだけ… 見ていかない?」

倉持「…そう、ですね。 まあ、由紀さんも冗談だと思いますので、私たちは好意に甘えて、最後まで見ましょうか」


倉持と桜の虹彩が、次々と移り変わる。


倉持「綺麗ですね」

桜「ですね」

倉持「…すみません。 他に気の利いたこと言えなくて」

桜「別に気にしませんよ… こういのって、いつまで続けられるのかしら… また、一緒に見ることができますかね」

倉持「…」


花火が揺らぐ。


倉持「見たいですね」

桜「じゃあ、来年も再来年も見ましょう。 約束ですね」

倉持「…約束がいっぱいできました」

桜「それは、皆。 倉持さんといたいからですよ。 約束には、時間を超えても一緒にいたいという願いがこもってるんですよ」

倉持「…ありがとうございます」


花火が大きく揺らぐ。



森の向こうから、何やら叫び声が聞こえたので、倉持と桜は森の中へかけていった。

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