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倉持氏はラッキースケベでいつも金欠  作者: ものかろす
日常編① 起
10/371

倉持はつながる(前編)

緑谷 営業二課 26歳 160 58

契約社員

うっかり

そこそこでかい



土曜日の朝

街には人がにぎわう。

電気街にも、朝から、たくさんの人が押し寄せている。

そのビルのてっぺんに一人の男が立っている。

倉持はじっと、ターゲットが姿を現すのを待つ。

赤井の話によると、緑谷は毎週土曜日には、この電気街に姿を現すとのことだ。


倉持「…来た」


緑谷が駅から出てくる。

倉持はビルを渡りながら、緑谷を追いかける。

ラッキースケベはこういう時役に立つ。

この体質には、結果を無理やりスケベに結びつけるという特徴がある。

即ち、多少危険なことになっても、スケベるだけで済むのだ。

例えビルから落ちたとしても、途中でどこかの部屋に入り、着替えに出くわすぐらいで済むのだ。

倉持はその特性を利用し、しばしば、このような危険な行動をすることがある。


倉持「あそこの本屋か…」


倉持も本屋へ入る。


倉持は恋愛経験が少ない。

それゆえ、ナンパなどできない。

そこで、偶然を装って、休日の緑谷とコンタクトする方法を思いついた。

題して「同時に本に触れてドキッと作戦である」。

倉持はやや古典的であった。


そうこうしているうちに、倉持は緑谷のすぐそばまで来ていた。

緑谷は本棚の前に立っている。

緑谷が上の本に手を伸ばす。


倉持(いまだ!)


二人の手が触れる。


倉持「あ」

緑谷「え?」

倉持「緑谷さん。 奇遇…だね?」

緑谷「え? え? 倉持さん? どうしてここに」

倉持「いやあ、欲しい本があってね」

緑谷(BL好きなんだ…)


BLコーナーであった。


と、その横を、ドジっ子書店員が、コスプレ用グッズを抱えながら通ろうとする。

店員は自分の足に足を引っかけて、バランスを崩してしまった。

その時、一番上に置いてあった手錠が、まるで命を得たかのように跳ね上がり、倉持の左手と緑谷の右手をつないでしまった。


倉持「な…」

緑谷(何事…)

店員「ごごご、ごめんなさい。 今すぐ外します」


店員がポケットをまさぐる。


店員「ありましたー」


その時、床を黒い物体がはい回る。


店員「ゴ…ゴキブリイイイイ」


店員は思わず手に持っていたカギを投げつけた。

黒い物体は、自分に迫る脅威を避けた。

カギは勢いよく床に当たり、その反動で、窓から外へ出てしまった。

窓から下を見ると、カギは広告会社の車の上に乗り、そのまま、走り去ってしまった。


倉持にとっては珍しい事ではない。

女性と手錠でつながれるのも、2度や3度ではない。

しかし、倉持のラッキースケベに巻き込まれた経験が少ない緑谷にとって、この事態は異常な事だった。


倉持「壊していいですか?」

店員「えええええ。 待ってください。 この手錠はプレミアがついていて… 10万円するんです」

倉持「…それは高いですね」

店員「ええっと、スペアを探してみます」

倉持「えーと、同一商品はないですか? こういうものは、鍵も型が一緒だと思うのですが…」

店員「あー。 うちにはないですが… どこかのお店にはあるかもしれません」

倉持「…じゃあ、回りましょうか… その間、スペアもさがしておいてください。 見つかったらこちらまで…」


倉持は店員に連絡先を渡す。


倉持「緑谷さん…ごめんなさい。 巻き込んでしまいましたね」

緑谷「いえ… 噂には聞いていましたので…でも、本当にこんなことあるんですね」

倉持「それじゃあ、探しに行きましょうか?」

緑谷「あ…はい」

緑谷(何…この積極性は… 職場と全然違う…)

緑谷(でも…倉持さん… 前から少し気になってたし…これはイイ機会かも)

緑谷「ええ…じゃあ、回りましょうか…」


ラッキースケベ体質はこのように使われることもある。

もっとも、倉持もここまで奇天烈な事象が起こるとは思っていない。

ただ、接近するきっかけに利用しようとしたぐらいである。


倉持(よもや…手錠か… なかなかハードなものが来たな…)


倉持の予感通り、その後3店舗ほど回ったところで、緑谷が身体をよじり始めた。


倉持「大丈夫ですか? 顔色がすぐれませんよ…」

緑谷「え…ええ、大丈夫です。 ダイジョウブですよ」

緑谷「う…」


倉持はおもむろに、手刀で右腕を砕こうとする。


緑谷「ちょっと、待ってくださいいいいい」

倉持「お手洗いに行きたいのですよね? なら、私の右腕を切り落として…」

緑谷「いやいや、そこまで…させるわけに… わあああああ」

緑谷「ううううう… ううう」


緑谷が下半身をねじる。


緑谷「うー… すみません…一緒に… お手洗い…入ってください…」


倉持は緑谷をお姫様抱っこすると、すり足を用いながら、近くの多目的トイレに入った。

緑谷をトイレの近くに添える。

しかし、ここで、問題が起こる。

多目的トイレは便座の右側が壁になっている。

そのため、倉持と緑谷は対面せざるを得なくなる。


緑谷「…見ないでくださいね」

倉持「ええ、眼も鼻も、耳もふさいでおきます」


緑谷は倉持の目の前で、スカートの中に手を入れる。

つながっている倉持の手が太ももに当たる。

敏感になっている緑谷はその感触だけで、様々なことを想像してしまう。

ショーツを膝までおろすと、便座に腰をかけて、少し腰を浮かせながら、ちょっとずつ用を足す。


緑谷(ううう… ああ… 私、男の人の前で何してるんだろ…… ああ倉持さん…改めてカッコいいなぁ… ってこれもおかしいか… 私どんだけ、混乱してるの…)


緑谷は俯瞰視点で倉持を見ている。

さらっとした髪、長いまつげ、筋の通った鼻。

物語の主人公のような整った顔立ちに緑谷の胸は高まった。

そして、ふといたずら心が芽生えてしまう。


緑谷(…この顔…この綺麗な顔をうずめさせたら…)


緑谷は喉にたまった水分をグッと飲み込む。

左手でスカートをゆっくりたくし上げると、ふあさと倉持の頭にかぶせた。


倉持「あれ? 暗くなりましたよ」


慌てて倉持が目を開けると、眼前には、緑谷のすらっとした足…その付け根、その奥には雫滴る渓谷が見えた。

倉持はスカートから、急いで顔を出す。


倉持「緑谷さん… どうしたんですか」

緑谷「え…あ…… ちょっと、暑くって…」


緑谷は今しがた自分がしたことを振り返り、急に羞恥心がこみ上げてきた。

自分にこのような変態性が眠っていたことに緑谷は驚きを隠せなかった。

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