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A Special Day

作者: 雫

私は小説家を夢見る中学生。そう。お決まりの始まり、うん。小説を作ったりするのが好きだけど、基本はノートのせいか、あんまりパソコンが使いこなせてないんだよなぁ…。

どうにかこうにかで普通の40枚くらいのノート一冊、一小説くらいの短編(?)は書けるようになった。今回はパソコンで書くことに初挑戦!いや、ぶっちゃけお小遣いをけっこう使っちゃってノートを買うお金がない…。ってわけで。なんとか奮闘中…。


「おーい、姉貴、なにやってんの?姉ちゃんがパソコンで何か作ってるなんてめっずらしい」


あ。弟。私はくるっと後ろを向いて言った。


「姉ちゃんは小説家になるんだもんね。一歩ずつゆっくり歩いてるんですよー。そこでゲームして遊んでるあんたとは違うんだよーっだ」


まったく…私だってちっとも大人らしくないじゃないか、これじゃ。と分かりながら言う私って…。


「だって姉ちゃんがやる機械ってほとんど携帯だろ?携帯だと早く打ってんのにパソコンはまだ慣れてないんだもんな。ははは。ネットもまともに使えてないし」


うっ。確かにこいつの方がパソコンは詳しい。そしてキーボードが打つのが遅い、というのも残念ながら私の特徴の一つ。頭の中にたくさん言葉はでてくるのに…。あーじれったい!


「あんたはいいのっ。姉ちゃんは頑張って書いてるんですっ。向こう行ってなさいよ」


べ~っと舌を出して弟はドアを閉めて下に降りていった。


まったく。ムードもあったもんじゃない。これじゃ恋愛小説とか書いてらんないよ。それでもちょっとずつ書いてるんだけど、なかなか辿り着かないや。でもまぁ書くか。えっと…そうだ、今日は一番盛り上がりのシーンだ!ちょっとテンションが上がる。せっかくの良いシーンだから景色も綺麗なものが良いよね、うん。



『夕焼けによって輝いている海。水平線の先には何があるんだとう。だけどそんなこともすぐに頭から飛んでいった。だって今はあなたしか見えないから。

「〇〇君、実はずっと前から好きでした」

「ありがと……』


「知佳~ご飯よー。今日はおっ好み焼き、だよー!パパが待ってるから早く、ね♪」


また邪魔が入った。母さんの声が部屋をこだまする。せっかく書き始めたけど。って…これまた母さん、一役買ってるよ。くっ。2人の恋愛を止めてる…所詮小説の中だけど。せっかく、いいところなのに…。だけど、あれだな。私もこんな風に言われてみたいな。まぁ、小説だからね、例え無理なことだって願いは叶うのさ。


「分かった。今行くー」


うちの家族は何か変わってるらしいんだよね、多分。友達とかがうちに泊まりに来ると私に言うんだもん。「知佳の家族はみんな面白いね」って。確かに、それが私は好きだけど。


じゃ、行くか夜ご飯。パソコンの電源を仕方なく落とす。恋愛小説が書きたいけど…あとだな。すごい良いところだもん。早く仕上げちゃえ。


階段を下りていく。一階にリビングがあるためだ。あ、今日は母さん、テンション高いぞ。だって、お好み焼き大好きなんだもん。母さんの前でお好み焼きを堂々と作れる強者なんていないだろう。何たって母は鍋奉行ならぬ…鉄板奉行?でも何で今日のご飯がお好み焼きなんだろう。何かいつもと違った、この家での行事とかがあるときくらいしか食べないのに。


リビングに行くと、やはり母さんのテンションはMAX。いつもだって高いけど。今は歌を口ずさんでるよ。…ちょっと音がずれてるのは…言わないほうがいいよね。


「あ。知佳。あなたはそこに座っていなさいね。こら、晃、そのたこをつまみ食いしたらあかんやろ。なにやってんじゃい。お母さんが分かんないと思ってるんじゃないでしょうねっ。まだお好み焼きが完璧な〇の形になってないでしょ。〇にならないとソースが渦巻状にかけられないんだからっ」


弟はすぐに手を引っ込めた。うん、それが正解だ、弟よ。語尾が「っ」になるのはたぶん私、似ちゃったなぁ。しかも母さん言葉が荒いぞ今。でもなんで手伝いをしなくていいんだろう私は。いつもなら食事のときは手伝いなさいってすっごく言うのに。


それにしてもすごいんだうちの母さんは。こういうとき、お好み焼きを完璧な丸の形にすることに魂を注ぐ。で、父さんはなおさらすごい。普通のおた〇くソースなど、ありきたりのソースでそのお好み焼きの上に見事にマ〇オの顔の形を作ったりする。芸術作品、とも言う。


この二人は大学で知り合ったらしいが、それもお好み焼き屋で母さんが店の人にお好み焼きについて熱く語っていたのを父さんが聞き、一目ぼれ…という馴初めらしい。

…何か馴初めを書いていたら悲しくなった。どんな一家じゃここは。ま、いっか。なんでこんなことを考えてるんだろ。


「知佳~」


やばい…ぼおっとしてた。父さんも母さんも睨んでる。本当にこの二人でお好み焼き屋をやっていないのが不思議だ。それは二人のいつかの夢らしい。母さんが以前、とても重大なことのように話していた(…まぁ検討がつく範囲内ではあったけれど)。


「熱いうちに食べないと美味しくないでしょ」

ふと眼の前の皿を見ると、まん丸のお好み焼きの上にこげちゃ色のお日様と女の子がちょこんと座っている。


今日も父さんは張り切ってソースで作ったようだ。


お好み焼き、魂。うちの家の第一の決まり、だ。例え家に帰る時間が夜中直前で、大変な時間でも、お好み焼きを勝手にいじったときに比べれば易しいものだろう。2人にとってお好み焼きとは芸術作品なのだ。


さてそんなこんなで食事が終わった。またパソコンへ向かう。でもあまり思いつかなかったので寝ることにした。

次の日は学校。制服に着替え、身支度とかやって家を出る。


「いってきまぁす」


「いってらっしゃぁぁい」母はぶんぶん腕を振る。あっちゃ…恥ずかしいよこれ。小さく腕を振り、歩き出す。何でだか知らないけれど、昨日と同じくいつもよりやっぱりテンション高いや。


「おはよう~」あ。恵美だ。

「あ、恵美、おはよう」私は元気に返す。


「知佳じゃん。今日は何の日うずうずうずうず。3人そろって疑問、疑問ー♪(ある曲のリズム、で)」


「ちょ、それはだ〇ご三兄弟じゃん。なんか古いし、しかも3人じゃないし。今はここに2人しかいないって」


「うっかり寝過ごし朝が来て…」後ろから声がした。

「わっ。舞、いたんだ。おはよう」



「かたくなりました。ジャンジャン」



そしてピッと右手を頭へ持っていって敬礼のポーズ。悔しいくらいに息ぴったりで言うなぁこの2人。って…最後に敬礼してもしょうがないでしょ。


「おはようございます知佳さん。今日はだ〇ご三兄弟ヴァージョンを二人の提供によりお送りいたしました」

私は大きく息を吸った。「あのさ…今日は何の日?から始まってかたくなって終わるの?!しかも最後が放送局みたいじゃん」


「ヘイヘイ。そこの君、細かいことは気にしない気にしない。それじゃ知佳らしくないんだって」

知佳はいつも通りです、はい。変わらずですよ。っていうか突っ込んだだけだって。ふたりとも今日…何かあった?


「で、今日は何の日だったっけ?」

「知佳さんは覚えていらっしゃらない!ありゃあ困りましたね。ねぇ解説者の舞さん」

「ほんとですねー。知佳さんはどうして覚えていないんでしょうね。記憶に残っていらっしゃらないとは。まぁしょうがない、ですか。昨日、日曜日でそして正確には昨日のことでしたからねぇ」

「ですけど、知佳さん…本当に覚えていないんですか?これだから知佳さんは」

たぶん私は困らないな。うん。拙者自身で断言するゼって…なんか色んな人のノリが移ってる。何なんだ…。


「言っちゃいましょうか、恵美さん」

「そうですね。どうも知佳さんは覚えていないみたいですし」

この2人、解説者になりきってる。

で、何だろう一体?


「お誕生日おめでとうー知佳!!」

2人はまたも息が合っている。可愛らしい女の子の声って…そうか、私の誕生日かぁ。そういえば忘れていた。だから家族までも…。そして2人は何かを取り出した。

「開けていい?」

そう聞くと二人は大きくうなずいた。丁寧に包装紙をはずしていく。


「あ。きれいなノート!」


「知佳、小説を書いてるんでしょ?書きあがったら私たちにも見せてよねー」と舞。


こんな少し、嬉しかった日の話。


2008年9月に作り上げた作品。

高校の文化祭のときに発表した作品です。

どこかに保存しておきたくて今回記載。

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