今宵、ダンスを共に。
貸切のダンスホールに、あなたと、私。
今夜は月が輝いてるわ。
あの月の光の下で、踊りましょう。
手を取り、お辞儀。
ふふ。
今からダンスが、始まるの。
音楽のない、広いホールで、月明かりを浴びて。
あなたと共に、ダンスを踊る。
自由に、気ままに、お互いを思いやって。
そっと添えられた手が、とても温かい。
ぎゅっと握られた手が、とてもうれしい。
時折、頬を合わせて、お互いの熱を確かめて。
あなたのリードに、私が少しよろめくと。
そっと腰に手を当てじっと目を見つめる。
見つめあう二人の距離は近く。
ふわりと微笑んだあなたの唇が。
私の唇に、そっとキスを落とした。
音楽のない静かなホールに、二人きり。
ここに、あなたが、いるから。
ここに、私も、いるの。
ずいぶん、この日を待ったのよ。
あなたの面影が、遠くなってしまったのよ。
でも、今日、思い出せたから。
くるくる回る、二人の影が。
月の光を浴びて、ホールに伸びる。
月の明かりがどんどん明るくなってゆく。
夜の闇が、月の光で照らされてゆく。
闇が、消えてゆく。
光が。
光が。
とても、とてもいい夢だった。
久しぶりに、あなたに会えた。
あなたのぬくもりが、まだ私の頬に残ってるもの。
目覚めたときに、私、手を握っていたもの。
私、とても幸せな夢を見たわ。
今日一日、甘い気持ちで過ごせる。
過ごせるけれど。
布団から出る前に、少しだけ。
涙が止まるまで。
夢の余韻を、味わいたい。
泣きながら起きた朝は。
切なく甘い、一日になる。
うれしい気持ちと、懐かしい気持ち。
悲しい気持ちと、幸せな気持ち。
胸がいっぱいになった、目覚め。
私、まだ。
あなたを覚えてる。
あなたを。
愛してる。