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日本異世界始末記  作者: 能登守
2028年
88/266

ドワーフ難民 後編

 大陸東部

 新京特別行政区

 大陸総督府


「原田市長から誰が行くのか問い合わせが来てますが」


 会議室にいた列席者一同は、秋山補佐官の言葉に一斉に杉村外務局長に顔を向ける。


「ち、ちょっと待ってください、魔神相手は外交なんですか?

 そういうのは自衛隊さんが偵察とか、討伐に行くもんじゃないですか?」

「別に魔神が我々に直接何かしたわけじゃない。

 討伐なんて物騒なこと言わないで下さい。

 偵察だって越境行為だから無理ですよ」


 普段から越境しまくってるくせにどの口が言ってるんだという視線が高橋陸将に突き刺さる。


「鉄道の線路も遠いしな。

 北部の拠点のデルモンドからもかなり離れてるか。

 北サハリンのヴェルフネウディンスク市の連中が出すんじゃないか?」

「後は王国が周辺貴族の要請で、近衛を派遣するくらいじゃないでしょうか?」


 北村副総督や青塚補佐官が好き勝手に言っている。

 ようするに総督府の面々は誰も関わる気は無いのだ。

 秋月総督もその考えには概ね同意していた。


「そもそもどうやってコンタクトをとるのか、一番の問題だよな。

 言葉は通じるのか?

 アポなしで行って受け入れて貰えるのか?

 生活習慣などで、誤解を招く恐れは無いか?

 変な病気持ってないか?

 他にも色々あるだろうが、越えないと行けない壁が多すぎ」


 皇国と接触した時は、なりふり構ってられない状況だった。

 転移直後で枯渇する資源や食料、国民を安心させる為に必要な情報、全てが不足していた。

 幸いに最初の大陸の住民は姿形は地球人とほぼ同一種だった。

 違いは魔力の有無くらいだ。

 そしてこちらから見れば一方的な話だが、時代遅れな価値観と制度を彼等は持っていた。

 地球人に取ってはすでに通った歴史の道である以上は理解の範疇内だった。

 そのような歴史的、文化的背景があるので絵を描く等をして、言語の壁も徐々に乗り越えていけた。

 今となっては前の転移者達が大陸に様々な痕跡を残した結果かもしれないと考えられている。

 秋山補佐官がまとめの言葉を口にする。


「結論としましては、誰かがなんらかの接触した結果を受けて、次の対応を考えよう、でよろしいでしょうか?」

「いざとなれば空自に空爆させれば一日で片付くだろう。

 他に何かある者はいるかな?」


 秋月総督が確認を取る。

 列席者は一様に


「「異議無~し」」


 と、唱和した。

 得意の問題の先送りである。


「ただ一点、気になることはある。

 異世界から生物を召喚する術が存在する。

 これまでは伝承だけや使える術師が見つからなかったが、初めてその足跡が確認できたわけだ。

 その闇司祭とやらの素性を洗い出せ」


 法則が見いだされば、『叡智の甲羅』と合わせて日本が召喚された仕組みが解き明かされるかも知れない。

 いまさら戻る気もないのだが……





 新京沖

 防衛フェリー『やまばと』


『やまばと』の貨物デッキでは、博多港から積載された第16後方支援連隊の車両が、所狭しと駐車されていた。

 大半は支援物資を積載した73式トラックや重機がメインだ。

 その中に73式大型トラックに牽引された野外入浴セット3式が有った。

 牽引された野外入浴セット3式の前に佇む隊員達がいた。

 彼は備品とは違うダンボールをその手に掲げていた。


「ついに陽の目が来る時が来たか」


 第16後方支援連隊創設以来、緒先輩方の試行錯誤の末に産み出された傑作は、演習では使用を許されなかった。

 しかし、本来の意味での使用を喜ぶことは国民に対して申し訳無くて出来ない。

 それでも今回のような任務でなら許されると、ダンボールから長年取り出されなかった暖簾が外気に触れる。

 埃を払い、ほつれが無いかを確認する。

 暖簾には『古渡の湯』と書かれていた。

 野外入浴セットは、伝統として各運用隊お手製の暖簾が掲げられる。

 この伝統は陸上自衛隊だけでなく、海上自衛隊、航空自衛隊でも行われる。

 第16師団の他の連隊が使用している野外入浴セットは、他の師団が使用していた装備のお下がりなので正式な運用隊は存在しない。

 彼等はマニュアルを片手に有事の時に初めて浴槽に湯を張る素人に過ぎない。

 そんな連中は野外入浴セットを展開するだけで手一杯で、暖簾や手作りの付属品の用意は出来ない。

 第16後方支援連隊の補給隊に所属する彼の隊は、野外入浴セット3式を展開し、適切な水量、温度に成通したプロフェッショナルと行っても過言ではない。

 勿論、用意した物は暖簾だけでは無い。

 風情を出す為に作った鹿威し。

 湯口に装着すると、その口からお湯を吐き出す『グリフォンの頭』。

 古渡市民が勝手に認定した古渡富士を湯槽の背景に出きる絵。

 お風呂に浮かべて子供が喜ぶ『河童隊員』。

 幾つか微妙なのもあるが補給隊に所属した手先が器用な隊員が造った自信作ばかりだ。


「明日の勝利は間違いないな」


 その隊員の確信は揺るぎ無い自信の現れであった。

 第16後方支援連隊の威信を示すのは今しかない。

 他の隊員が達は、


「あいつら早く寝ないかあ」


 と、うざがっていたが、難民キャンプの悪臭の前に心を入れ替える事になる。

 問題は浴槽の高さとドワーフの短い足ということにはまだ気がついてなかった。

 泳ぎも得意で無いドワーフ達は、何人も浴槽内で溺れ掛けるはめになった。





 大陸中央部

 王都ソフィア


 ソフィア城の城外に建てられた宰相府において、ヴィクトール宰相は日本大使から寄せられた報告書に眉を潜めていた。

 王国内の事件なのに日本の大使館からの情報の方が早いのは問題がある。

 さらには王都でも発行されている日本人向けの日字新聞にすら負けている。

 おかげである程度は事態が把握出来たので、宰相の判断で出せる先触れを先遣隊として派遣した。

 次は王の栽下を仰いだ本格的な調査団も別に送らないと行けない。

 ドワーフ侯は、他の亜人貴族と同様に王都にも新京にも屋敷や留守居を置いていない。

 情報の迅速さの改善は必要だった。

 さしあたって魔神についての対処として、先遣隊や調査団の結果待ちだ。

 どんな結果が出るにせよ、戦力を集めて置かねばならない。


「近衛騎士団第九大隊隊長ヴォルコフ参上致しました」

「ご苦労だった。

 事情はある程度聞いていると思う。

 正式な勅令はまだだが、ドワーフ侯爵領における魔神討伐の任に当たってもらう。

 戦力的には貴公の大隊を中心に北鎮将軍として、北部諸侯を動員出きる権限が与えられる。

 今日はその内示を伝えたくて呼んだ。

 準備を始めといてくれ」

「承知致しました」


 ヴォルコフは功に逸るタイプの将ではなく、指揮下の将兵の損失や領民の犠牲を惜しむ慎重派だった。

 しかし、それは自分が身内と認めた将兵や領民に対してだけだ。

 近衛騎士団第九大隊が駐屯する砦に戻ると、騎士達を呼び出す。


「北部の貴族達に御触れを出すよう指示しろ。

 賞金はこちらで持つから、魔神の首一つにつき金貨千枚」


 どうせ魔神達を討ち取れないだろうから大盤振る舞いだ。

 金貨千枚あれば、王都でも庶民は千日は暮らせることが可能な金額だ。

 先に冒険者や傭兵を戦わせて手の内を観るのだ。

 宰相府が派遣した先遣隊は、日本から購入した組立式の望遠鏡を与えられている。

 その結果を受けて戦い方を考える方針だ。

 或いは傭兵や冒険者達が魔神を討ち取ってしまうかもしれない。

 それならそれで、勅令前に民を守る為の策を出したとして功績にはなる。

 賞金は必要経費として、宰相府に請求すればいい。

 伝令の騎士達は何れも文字が読み書き出来る文官並の能力の持ち主達だ。

 ドワーフ戦士団の強さは十分に認識している。

 そんな彼等が敗れさったのだ、一筋縄で行くわけがない。

 捨て駒のように失う訳にはいかなかった。






 大陸西部

 華西民国 第4植民都市斟尋


 新香港主席改め華西民国総統に就任した林修光は、建設中の斟尋市視察中に、福原市のドワーフ難民騒動と魔神召喚のニュースに触れていた。


「ドワーフというのはアレだろ?

 手先が器用で、頑健な体を持ち、鉱夫や職人にも向いた種族だろ?

 派遣労働者として雇いたいと言えば、日本の連中は乗るかな?」


 華西民国は以前ほどでは無いが、市民の定着により新植民都市の建設能力の不足を招いていた。

 またまだ日本には多数の同胞が残っていた。

 彼等の受け入れ先の建設は至上の命題だ。

 大陸の反対側だが鉄道を使えば一週間もあれば到着する。

 なかなかいいアイディアだと思えたので、秘書官を通じて打診することにした。

 魔神に関しては興味も無い。

 日本か、王国が片付けるだろうと考えていたからだ。

 むしろ最寄りの北サハリンのヴェルフネウディンスク市が対応してもいいくらいだった。

 こちらはこちらで西部地区で暗躍を続ける目障りな解放軍がいるのだ。

 他の地区の尻拭いをしてやる余裕は無い。

 そこまで考え、別の疑問が沸いてきた。


「なぜドワーフ達は、最寄りの貴族領やヴェルフネウディンスク市ではなく、遠路はるばる福原市を目指したんだ?

 確かに豊かさでは圧倒的に日本側に向かうのはわかるが、逃走ルートとしては不自然すぎるな」


 武装警察公安部に調べさせるかと指示を出していた。 




 大陸北部

 ドワーフ侯爵領


 魔神が糸で巣を張る塔にドワーフの戦士達が近づいていく。

 塔は侯爵家の櫓だった場所だ。

 侯爵家戦士団に所属していた彼等は、この塔の奪還を目論んでいた。

 魔神の総数は不明で姿、能力は個体により異なり、人型の生き物が他の生物の特徴や姿を取り込んだ生物と考えられていた。

 この塔に陣取る魔神は蜘蛛の系統に属する様で、接近するドワーフを塔からバンジージャンプのように飛び降り、2人のドワーフを両手で掴み、糸の反動で巣に戻っていった。

 その下半身は完全に蜘蛛の胴体だ。

 だが少なくとも腰布を穿くくらいの知性は有るようだ。



「気づかれてたか、構えろ!!」


 身構えるドワーフの戦士達だが、再び降りてきて着地した魔神に1人が撲殺され、もう1人も脚の爪で斬り殺された。

 斧を振り回したドワーフの戦士二人の攻撃を腕から生した爪で受け止め払い除け、まとめて斬り殺す。

 さらにもう1人は、そのまま壁に叩きつけて殺害した。

 最後の1人は、糸を首に巻き付けられて絞殺された。




 その様子を王国軍近衛騎士団第9大隊先遣隊の近衛騎士が観察していた。


「蜘蛛の魔神か。

 巣に囚われたドワーフは餌かな?」


 塔にドワーフ達を攻め込むように焚き付けたのは、彼等だった。

 目的は魔神達の戦い方の分析だ。


「体内から武器を出してたぞ?」

「素手でドワーフを投げ飛ばして殺すなど、どれだけ怪力なのだ」

「あの爪、ドワーフの武器を受け止めるくらいの強度があったな」


 日本や華西から購入した望遠鏡や双眼鏡でから目を離して対応を語り合う。

 双眼鏡はともかく、望遠鏡は王国にも存在する。

 占星術や天文学は皇国でも行われていたからだ。

 日本の天文学者や占星術師が、自分達のこれまでの記録の大半が役に立たなくなったと、教えを乞いに来るほどだ。

 しかし、王国の望遠鏡は建物に付随する建築物であり、日本の望遠鏡のように組み立てて持ち運び出来る代物ではなかった。

 勿論、これらは日本の技術流出防止法に違反するものだが、移民してきた日本人が闇市に流した物だ。


 それでも数キロ離れた先から戦闘を観察できたのは大きい。

 ここも魔神に占拠された一角だ。

 他の魔神に襲われないうちに撤収の準備を始める。

 だが彼等はまだ、魔神の能力を過小評価していた。


「おい、その糸はなんだ?」


 近衛兵の肩に糸が掛かっていた。

 近衛騎士が即座に剣で斬ろうとするが、全く歯が立たない。

 双眼鏡を覗き警戒にあたっていた近衛騎士の目に糸を伸ばして蜘蛛の魔神がこちらに翔んでくるのが映った。

 糸により、何キロも離れたこの地は蜘蛛の魔神の索敵範囲だったのだ。

 蜘蛛の魔神の着地点から近衛騎士や近衛兵達が飛び退く。

 近衛騎士が剣で、近衛兵が槍で攻撃を仕掛けるがあっさりと蹴散らされていく。

 近衛の鎧は通常の物より高価で立派な物だったが、ドワーフ達が使っていたものも遜色は無い一級品だった。

 ドワーフ達よりマシだったのは盾の存在だった。

 勿論、盾も魔神の爪の前にはあっさりと切り裂かれるのだが、鎧と違い肌に触れていない分致命傷を先伸ばしに出来た。

 だがそれも二太刀も斬りつけられたら意味がなかった。


「チャージ!!」


 近衛騎士隊長が叫ぶと、騎竜デイノニクスに乗った近衛騎士2人が騎槍を構えて突撃した。

 他の近衛騎士達は短銃を発砲して、蜘蛛の魔神の動きを封じる。

 2本の槍に貫かれた魔神は、同時に刺された衝撃とデイノニクスの鞭のようにしなる尻尾の攻撃を受けてはね飛ばされる。


「畳み掛けろ!!」


 近衛騎士隊長は迂闊に近付く愚は犯さずに、盾に仕込んだ拳銃を発砲する。

 他の近衛騎士達もそれに倣い、魔神は身体に多数の穴を開けたがまだ生きている。

 近衛兵達は近衛騎士隊長の一族が新京の大学留学で学んだ火炎瓶を投げつけた。

 陶器の壺に油を入れて、火を付けた布をいれた代物だが、効果は絶大だった。

 いにしえの日本の闘士達の武器だったらしく、魔法を使わずに火炎を相手に浴びせれる利点がある。

 さすがに魔神も生物らしく、身体が炎に包まれると崖を転がるように落ちて動かなくなった。

 崖と言っても魔神の落ちた場所は槍が届く場所だ。

 近衛騎士隊長は、焼死体となった魔神の死亡を槍で突き刺して確認して胸を撫で下ろす。

 魔神は人間の手で殺せる生き物だと判明したのは大きい。

 しかし、被害が甚大であった。

 魔神1匹倒すのにフル装備のドワーフ戦士8人、近衛騎士4名、近衛兵士7名が命を落とした。

 負傷者も両手の指で数えれないほどいる。


「遺体と負傷者と機材を馬車に運べ。

 奴の死体は……」


 遺体と重傷者は横に寝かせなければならないので、魔神の死体の置き場がない。

 馬車は2台しかない。

 馬に死体を括り付けるかと考えていると、声をかけられた。


「その死体は我々が預かろう」


 咄嗟に短銃を声の方向に向ける。

 背後の森の闇の中から、迷彩服を着た男達が複数現れた。

 全員が小銃を手にしている。


「自衛隊か。

 高みの見物とはいい御身分だな。

 第9近衛騎士団で小隊を預かるクラークだ」

「第17偵察中隊の里島一等陸尉だ。

 そちらもドワーフ達に同じことをしていたろ?

 まあ、いい。

 その魔神の死体をこちらで引き受けよう。

 代金は負傷者の移送と治療だ。

 いっちゃなんだが、魔神の医学的調査は我々の方が遥かに上だろ?

 同じ病院に負傷者も入れるから、退院次第、調査結果を持たせよう」


 自衛隊の里島一尉の言う通り、魔神の生物的特徴を調べる能力は王国は日本に劣っていた。

 また、治療施設や癒しの奇跡が起こせる司祭がいる神殿はここから遠いのも事実だ。

 魔神との戦いの戦訓を得るのが先遣隊の任務なので、これは達成したと言っても良い。

 大隊長に指示を仰ぎたいところだが、そんな時間もなさそうだった。


「私も着いていくことが条件だ。

 どこに運ばれる?

 出来れば新京の領事館に連絡を取らせてもらいたいな」

「新京の自衛隊病院だ。

 同行の条件を呑もう。

 連絡は……、司令部に問い合わせよう」


 話し合いが終わったのを確認して、後方にいた隊員がどこかに連絡を始める。

 他の隊員たちも近衛騎士や近衛兵を医療キットで応急処置を施す。

 里島一尉は、崖から引き揚げられた魔神の死体を検分する。


「かなり焼けちまってるな。

 解剖とか意味あるのかこれ?」


 かくも激しく魔神の体を損傷させなければ倒せないという事だ。


「まあ、倒せることがわかっただけ上等か」


 銃弾を全身に浴びせれば十分に倒せる。

 問題は驚異的な身体能力だろう。

 数キロの距離をものの数秒で移動したり、頑丈な近衛騎士の鎧や盾を自前の爪で切り裂いていた。

 他の場所での観測の結果、魔神は何れも違う姿形をしていた。

 その検証に夥しい冒険者や傭兵、ドワーフの戦士達が犠牲になったが討伐の成功は今回が初めてだった。



 やがて、陸上自衛隊第16飛行隊に所属するCH-47J チヌーク 大型輸送ヘリが飛来し、着陸して馬車ごと負傷者や生存者を乗せ始める。

 撤収作業としては、馬車よりも騎竜デイノニクス2匹を乗せる方が苦労した。

 あまり馬と至近距離にすると、双方が興奮しだすからだ


「隊長何かがこちらに接近しています」


 もう1匹の魔神に見つかったようだ。

 スコープ越しに、周囲を索敵していた隊員が伝えてくる。

 まだかなりの距離だ土煙をあげているので、早めに発見できた。

 撤収作業はほとんど終わっているが、このままでは追い付かれそうなペースだった。


「指向性散弾を設置しろ」


 自衛隊が使用するFordonsmina 13、通称FFV 013

 は、指向性の対車両地雷である。

 自衛隊では、無線式で運用されている。

 箱状のケースに収めされている複数の金属球が、起爆と同時に前方方向へ飛散される。



 CH-47J チヌークが飛び上がると同時に魔神がこちらに辿り着いた。


「点火!!」


 号令とともにFFV 013が三個、爆発して無数の鉄球が目標を襲う。

 爆煙の中から魔神が姿を現す。

 さすがに負傷はしているのが、紫の血を流している。

 服装や胸部の形状から雌だと想定される。

 勿論、股布や胸部に巻かれた布はボロボロだ。


「あれでまだ生きてるよ。

 豹みたいだな、大した頑丈さだ。

 撃て!!」


 浮上するCH-47J チヌーク の前方のキャビンドアから12.7mm重機関銃M2が、非常脱出ドアから5.56mm機関銃MINIMIが発砲される。

 目標の魔神に無数の銃弾が着弾するが、貫通はされていない。

 それでも目はそうはいかなかったようだ。

 眼球に着弾した銃弾は、頭部を突き抜けて貫通した。


「やったか!?」


 しかし、魔神は頭部を貫通されたにも関わらずに岩場に身を隠した。

 CH-47J チヌークが上昇したので、回収は出来ないが岩場で倒れ伏す魔神の姿が確認できた。


「仕留めることは出来たな」


 1匹の倒すのにあれだけの火力を投入するのは、今後を考えると骨が折れそうだった。

 CH-47J チヌークは、一路新京の駐屯地まで飛行することになる。


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