表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本異世界始末記  作者: 能登守
2027年
58/266

オペレーション・ポセイドンアドベンチャー 後編

 アガフィア海上空


 アメリカ海兵隊に所属する第102戦闘攻撃飛行隊(VFA-102)「ダイアモンドバックス」 F/A-18F Block2戦闘攻撃機12機が、海上に浮かぶ都市エフドキヤに爆弾の照準を合わせる。


「本当に浮かんで都市なんだな」 


 ビル・クロスビー大尉が洋上に浮かぶエフドキヤに感嘆する。

 海亀人達の都市は幾つもの巨大亀の遺骸から甲羅を加工して地面を造り上げた。

 甲羅の大地を連結させて巨大な都市としている。

 甲羅の上に建築物を造り、内部にも住民達が居住する区画が存在する。

 都市の直線距離は最大で4kmに及び、確認できる大型甲羅区画は20に及び、中小の甲羅区画は百に及ぶ。

 住民は五十万に達する。


「大尉、『ロナルド・レーガン』から連絡。

 攻撃へのGOサインです」


 複座に座るジャック・ベーコン少尉が伝えてくる。


「了解、全機投下用意」


 第102戦闘攻撃飛行隊の後方には2個の海兵戦闘攻撃飛行隊、第27戦闘攻撃飛行隊(VFA-27)「ロイヤル・メイセス」、第115戦闘攻撃飛行隊「イーグルス」に続いている。

 F/A-18が合計で36機。

 原子力空母『ロナルド・レーガン』が発艦した飛行隊は、海亀人達の都市エフドキヤへのウェポンポッドから切り離されたMk 82 500lb爆弾6発、合計216発が投下される。

 大型甲羅区画一つに付き12発以上の爆弾が炸裂し、そびえ立つ塔や建物を吹き飛ばす爆発を起こす。

 海亀人達は建物の破片の落下に押し潰されていく。

 甲羅に頭や手足を入れて対応する者もいるが、甲羅ごと粉砕される。

 或いは生き埋めになって、身動きが取れなくなる。

 爆弾の投下された8区画は、浸水を起こし沈んでいく。






 イージス巡洋艦『カウペンス』


「航空部隊の空爆、効果大!!」


 航空隊の攻撃を確認していた『カウペンス』では、甲羅都市の被害を記録する為にドローンからの映像も受信していた。


「都市北部の甲羅から頭部とヒレが出ていきました」

「都市、微速ながら移動を開始」

「動くのかアレ?」


 艦長のポール・ヒューリー大佐が呆れている。

 映像では超大型海亀と数匹の大型海亀が牽引している様だ。

 超大型海亀の300m級は百済でも確認しているが、200m級の大型海亀は初めて確認されたタイプだ。

 半年も都市を観察して、地図まで造り上げたのが台無しになりそうだ。


「航空隊は全部投下した後か。

 逃がす訳にはいかない、こちらも仕掛けるぞ。

 トマホーク用意!!」


 ヒューリー艦長の号令のもと、CICではトマホーク発射の準備が整えられる。


「トマホーク射程内に入ります」

「超大型をエコー1に指定。

 大型をエコー2からエコー9に指定完了」

「VLS1番から10番を開放。

 トマホーク攻撃はじめ!!」


 艦が続けざまに発射されるトマホークの振動で揺れる。

 同様にイージス駆逐艦『マッキャンベル』、『マスティン』からもトマホークが発射される。

 これで都市の足が止めれればよかった。


「そろそろ海中も始まる頃だな」







 海上自衛隊

 そうりゅう型潜水艦『うんりゅう』


 海上での一方的な戦いが続いている頃、海中でもアガフィア亀甲艦隊と北サハリン第1潜水艦隊との戦いも始まろうとしていた。

 海上自衛隊の潜水艦『うんりゅう』は、北サハリン第1潜水艦隊のお目付け役として、同艦隊に同行していた。

 オスカー型原子力潜水艦『K-132イルクーツク』、『K-150トムスク』、『K-173クラスノヤルスク』、『K-186オムスク』

 アクラ型原子力潜水艦『K-263バルナウール』、『K-295サマーラ』、『K-322カシャロート』、『K-331マガダン』、『K-391ブラーツク』が深度400mで扇状に展開している。


『うんりゅう』は、艦隊旗艦『イルクーツク』の後方300、深度500mの位置で停止する。

『うんりゅう』から距離1500mの地点にはアガフィア亀甲艦隊が展開している。

 向こうはこちらの位置が把握出来てないのか動きがバラバラだ。

 この数ヵ月は接近と離脱を繰り返し、敵の戦力の把握と主力を徐々にエフドキヤから引き離すことに成功していた。

 海上の戦いが始まったようたが、敵の戦力をここに釘付けにするのが北サハリン第1潜水艦隊の任務だ。


「敵艦隊に動き、浮上を開始しています」

「艦長、『イルクーツク』から10キロヘルツ超音波、水中電話の更新。

 全艦隊に向けての通信です」

「増幅しろ」


 艦長の小川二等海佐の命令で、超音波による『イルクーツク』からの命令が全艦に発令される。


『全艦攻撃を開始せよ』


「海上から連絡が届いたか

 タンクブロー、浮上並びに機関全速進路0-0-0、深度400。

 1番から6番、魚雷発射用ー意」


 旗艦である『イルクーツク』の動きに合わせて、北サハリン艦と『うんりゅう』が一斉に動き出す。

 一種の示威行動だ。

 このままアガフィア亀甲艦隊がこちらに反応しなければ、北サハリン第1潜水艦隊の魚雷がエフドキヤを突く形になるのだ。

 そして、その動きは海中各所で遊泳する重甲羅海兵の偵察隊に発見されてアガフィア亀甲艦隊の浮上が止まる。


「思ったより早かったな。

『イルク―ツク』の魚雷発射に合わせる。

 音響深度300にセット」

「1番から6番、魚雷発射用意よし」


 やがて最初の魚雷発射音をソーナーが捉える。


「1番、2番発射!!」


『うんりゅう』から533mm89式長魚雷が2発射される。

 北サハリン各艦からも533mm魚雷が2発ずつ発射される。

 このうち、オスカー型原子力潜水艦と『ブラーツク』、『カッシャロート』、『マガダン』等のアクラ1型は650mm魚雷を発射することが出来る。

 この7隻からも650mm魚雷が一発ずつ発射される。

 北サハリンの虎の子の大型魚雷だ。

 百済沖の戦いでは通常魚雷一発では倒しきれないと報告が上がっている。

 13発の魚雷が12の目標を追跡するが、進路上に立ち塞がった重甲羅海兵が甲羅を連ねて壁になって魚雷の2発の進路を塞いで爆発させる。

 また、十数匹の重甲羅海兵が決死の覚悟でハンマーや岩弾で殴り付けて魚雷4発を爆発させる。

 何れも重甲羅海兵達を爆発に巻き込み多大な損害を出したが、貴重な大型魚雷を迎撃されたことに北サハリン第1潜水艦隊を驚愕させた。

 重甲羅海兵達は待ち伏せる以外には、魚雷のスピードに着いていけず何も出来ない。

 7発の魚雷が重甲羅海兵の防衛線を突破する。

 アガフィア亀甲艦隊の中型海亀達は海底に着底して回避行動を取りながら接近してくる。

 魚雷が追跡するが巻き上げられた泥に撹乱されて5発が海底や岩盤に当たって爆発する。

 650mm魚雷で中型海亀が1匹絶命し、『うんりゅう』の89式魚雷で1匹が負傷して群れからはぐれていく。


「なおも10匹が無傷で前進!!」

「これは驚いた。

 敵も我々を研究してたのだろうな」


 エフドキヤには百済で対潜水艦戦を経験した中型海亀が帰還している。

 その経験がこの抵抗の強さだった。


「トリム下げ、タンク注水。

 3番、4番発射!!」


『うんりゅう』の次弾発射に続き、他の北サハリン艦も同様に魚雷を発射する。

 すでに重甲羅海兵の防衛線は崩壊している。

 海底の中型海亀の群れに13本の魚雷の雨が降り注ぐ。

 再び回避行動で6本が外れ、3匹が絶命し、4匹が負傷して群れからはぐれる。


「4匹が突破!!」

「そちらは北サハリンに任せる。

 後続の負傷した中型海亀を狙え。

 5番、6番発射!!」


 オスカー型の4隻が無傷の中型海亀を狙い撃ちにしている間に、『うんりゅう』が残りの中型亀を掃討していく。

 無傷だった中型海亀達も北サハリン第1潜水艦隊の魚雷攻撃を防ぐ手段はもう無い。

 後続に続いていた負傷した中型海亀も『うんりゅう』が掃討し、アガフィア亀甲艦隊は全滅の憂き目にあった。

 だが戦闘態勢は解かれていない。

 エフドキヤから4つの甲羅区画が潜行してきて、ヒレと頭を出してきたからだ。


「来ました。

 大型海亀200m級4匹!!」


 百済で確認された超大型海亀ほどでは無いが、タイフーン型原子力潜水艦より巨大な潜水生物に全艦が、各々の位置から魚雷の発射用意を行う。

 魚雷が発射されるが大型海亀達は、1匹を盾にするように一直線に並んでこちらに向かってくる。

 先頭の1匹に魚雷が集中して命中し、肉片も無くすほどの爆発を海中に起こさせた。

 その爆発の中を後続の大型海亀達が突破する。

 さすが2匹目の大型海亀にも魚雷が命中しており、爆発の衝撃波を連続で浴びて海底に沈んでいく。

 だが3匹目、4匹目の口から口から高圧水流を吐き出した。

 木造船を一撃で粉砕する高圧水流が『トムスク』、『サマーラ』に直撃する。

 9,100tのアクラ級、19,400tの巨体のオスカー級が押し寄せる海流に押し流されたのが、『うんりゅう』からも観測された。


「艦長、両艦から浸水音」

「まさか!!」

「いや、大丈夫のようです。

 両艦とも健在。

 されど『イルクーツク』から浮上命令が出てます」


『トムスク』は就役から31年、『サマーラ』は33年も経っている老朽艦だ。

 半年も航行し続けて、不具合が出てもおかしくはなかった。

 北サハリンにはたとえ老朽艦だろうと、再生産が不可能な虎の子を失うわけにはいかない。

 無理させずに浮上させたのはその為だ。

 また、両艦では強引に流された際に、艦内で負傷者が発生していた。

 まだ戦力は十分にあるので、無理をさせる必要はまったくなかった。


「魚雷装填完了!!」

「注水開始!!」


『うんりゅう』は高圧水流を吐き出す頭部が向かない背後に艦を着ける。


「1番、2番発射!!」


 最後尾にいた大型海亀に2発の魚雷を命中させる。

 まだ生きている。

 背後の『うんりゅう』を狙う為に体を回頭させる動きを見せていた。


「3番、4番撃て!!」


『うんりゅう』以外からも魚雷が放たれ、残存の2匹の大型海亀を殲滅した。


 だが『クラスノヤルスク』も高圧水流の攻撃を受けて、浸水と負傷者を出して浮上命令が出されていた。

 小破3隻、負傷者12名を出して、海中の戦いは終わった。


「残った魚雷をエフドキヤに叩き込むぞ。

 艦回頭、180度」




 海上都市エフドキヤ


 推進力を失い、多数の甲羅区画が破壊、炎上という状況に晒されていた。

 海亀人達は各甲羅内部に海水を注水し、半潜状態にしてミサイルや魚雷攻撃を緩和しつつ、炎上する都市を消火していた。


「まさかここまでやられるとはな。

 万年の栄光も深海に沈んだか」


 海亀人の長老達は最も大きな甲羅区画に集まっていた。

 3代前の海皇アペシュが3千年前に亡くなった時に形見として返還された甲羅だ。

 仮に王亀と呼ばれている。


「ここと『叡智の甲羅』はまだ無傷のようですな」

「残った戦力は?」

「亀甲艦隊は全滅。

 重甲羅海兵隊も残存戦力をエフドキヤに集めてました。

 外からの援軍も望めないでしょう」

「明らかに攻撃は絞られてるな。

 連中はこの都市の詳細を知っているということか。

 ここが意図的に残されたということは、乗り込んで来るぞ」




 海上自衛隊

 おおすみ型輸送艦『くにさき』


 護衛艦『しまかぜ』、『あまぎり』に護られ、『くにさき』は他の甲羅区画から切り離された巨大な甲羅区画に向かっていた。


「第二潜水艦隊と連合潜水艦隊はアドフィア海から離脱したよ。

 シュヴァルノヴナ海の方が手薄だったからな」


 中川海将補はウェルドックの長沼一佐に話掛けていた。

 ウェルドックには4両とAAVC7A1 RAM/RS(指揮車型)の1両、国産水陸両用車試作1号、2号が停泊していた。

 それらの水陸両用車に特別警備隊員が乗り込んでいく。


「我々の目標は『叡智の甲羅』だけでいいんですね?」

「『王亀』は『ボノム・リシャール』の海兵隊に任せればいいさ」


『叡智の甲羅』には海亀人達が1万年収集した研究結果や資料が納められている。

 海棲亜人の生息圏や種類などが網羅出来るらしい。

 日本が欲しがっている転移の謎も納められているかは神のみぞ知るところだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ