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日本異世界始末記  作者: 能登守
2031年
171/266

密輸業者摘発

 大陸東部

 セグルス男爵領


 日本の西陣市に近いこの地の夜半。

 青地のアサルトスーツに黒のボディアーマー、顔を隠すバラクラバ、バイザー付きのACHヘルメットに身を包んだ一団が、闇に潜んである施設を包囲していた。

 とある日本企業が、男爵領の借金の肩代わりに譲り渡した砦の一つだ。

 男達は物陰に身を潜めて、接近するが、大陸人の見張りの巡回に動きを止め、息を潜める。


「マル被発見。

 見張りの四人と思われます。

 何れも大陸人」


 隊員のヘルメットに装着されたウェアラブルカメラから送信された映像に警察庁特殊強襲連隊、SAR( Special Assault Regiment)連隊長高里三郎太警視長は、マイクロバスを改造した指揮車両で、総督府直通の無線で許可を取る。


「よろしいのですね?

 日本人がマル被にいても射殺しても構わないと」

『抵抗したならだ。

 いや、武器を持っていたなら射殺もやむ無し、許可する』

「了解、速やかに砦を制圧します」


 公安上がりの新総督は肝が座っててやりやすいと、高里警視長は、隊員達に突入命令を下す。

 砦内部には、日本本国に密輸される予定のモンスターや大陸特有の動植物が捕獲されている。

 通報があり、公安調査庁の内定の結果の出動だった。

 SARの隊員達は刀剣を腰に下げた大陸人達をインテグラルタイプサプレッサーを装備した短機関銃H&K MP5SD3で、次々と射殺し、砦に接近する。

 銃声を完全に消すのは無理だが、獣達の鳴き声で騒々しい砦内部では、気が付くことは出来ない。

 さらには砦の四方から投げ込まれたM84スタングレネードが、銃声等聞き取る余裕を中の人間に無くさせていた。

 突入とともにまだ立っていて、武器を携帯していた人間を日本人、他地球人、大陸人、亜人問わずに公平に射殺していく。

 砦内部にはモンスターを入れた檻やコンテナが混在しており、うっかり破壊しないように慎重に前進、射撃をして行く。


「警視庁だ。

 大人しく逮捕されたい者は、武器を捨てて、頭に手を当てて、地に伏せろ」


 隊員の一人が叫ぶが、砦の中にいた者は残らず耳がやられて、視界も定まっておらず、銃弾を身に受ける者が相次いだ。

 中には小銃や拳銃で反撃してくる者もいるが、装備、連度、火力、人数の差が圧倒的だ。

 SARの隊員は砦の内部に30名を突入させ、150名もの隊員が包囲している。

 内部での抵抗は無理で、外部に逃れることも不可能だ。

 隊員達も最初は反撃してくる者は会社から派遣された武装警備員かと思い、手心を加えようと考えていた。

 髪型や言動、武器の持ち方がどうみても企業に仕えるそれではなく、カタギでは無いと判断し、容赦しなかった。

 それでも一人の被疑者が砦に置かれた幾つもの檻の一つの扉を開き、頭から食われた。


「本部、一匹解放された。

 今から退治する」


 檻の奥から出てきた巨大なトカゲ モオ・クナは、口から食べたばかりの足を咥えて突進してきて、伏せていた被疑者達を踏み潰しながらSARの隊員達に突進してくる。

 ハワイの怪物伝承から命名された個体だが、巨大な牙を持ち、噛まれれば毒性のある体液を吐いたりする。

 隊員達は、後退しながら銃弾を浴びせるが、モオ・クナは素早い動きで壁や天井に張り付きながら突進という器用な真似をして距離を積めてくる。


「どうやって、捕まえたんだあれ?」

「グレネード!!」


 再びM84スタングレネードが投擲される。

 爬虫類は強い光を好まない種もいる。

 怯んだモオ・クナに銃弾が集中するが、鱗が堅く致命傷を与えられていない。

 対物ライフル KSVK(コヴロフ製の大口径狙撃銃)を構えた隊員が砦に入ってきて、モオ・クナの体に穴を開けて仕留めていく。


「本部へ、砦を制圧完了」

『本部了解。

 捜査官を送る、油断はするな』


 捜査官を率いる宇野警視は、死人の多い現場にため息を吐いた。


「もう少しなんとかならんかったのですか?」

「モンスターを解放されたら厄介だったからな。

 早期制圧、それ以外は些事だ。

 だいたい我々を動員した時点んで諦めろ」


 確かに砦内部のモンスターが一斉に暴れたら手が付けられない。

 だが

 総督府も最初は機動隊を派遣しようと考えていたが、新京警視庁の第1機動隊並びに第2機動隊は全員がSARの隊員だったことを思い出して諦めた。

 そのことを説明された佐々木総督は


「え?

 機動隊員より、特殊強襲部隊隊員の方が数が多いの?」


 と、困惑していたという。


 宇野警視も同感だし、彼等がそういう任務の部隊だとわかっていても、警察組織の人間として死体を量産する作業に関わるのに苦言を呈したかっただけだ。

 任務自体を否定する気はない。


「それにしても臭うな」


 以前に担当したリザードマンの虐殺事件も酷かったが、今回の砦内部もモンスター達の獣臭さに辟易する。


「高里連隊長、このモンスター達はどうするんです?」

「グリフォンや地竜、亜人は引き取り手がいるが、ほとんどは殺処分だな」

「供養塔くらいは立ててやりたいですな」

「上に申請だけはしておくよ」


 モンスターに同情しても射殺された人間には宇野警視は、完全に割りきりに切り替えていた。

 捜査官達が砦内部に残された書類から捕獲されたモンスターの数を報告しにきて、眉を潜めていた。


「連隊長、どうやら出荷されたのがいるようです」

「ああ、海の方にも網は張り巡らせてるよ」






 大陸北方海域

 海上保安庁

 巡視船『しゅんこう』


 第13管区に所属する海上保安庁巡視船『しゅんこう』は、一隻の密輸船を追跡していた。

 那古野の港から緊急出動した為にかなりの距離を稼がれていたが、25ノット以上の速力で目視できる距離まで近づいていた。


「向こうも速度を上げたぞ。

 気づかれたな」


 船長の林崎二等海上保安監は、転移後に就役した大型巡視船を任せられるだけあって、判断は早い。


「ヘリはいつでも出せるな?

 特警隊を出動させろ」


 今の各管区の巡視船には常時2名の特別警備隊員が乗船している。

 転移前は警備実施等強化巡視船(特警船)にのみ乗船し、兼務要員として、平時は他の乗員と同様に船舶運航・海難救助等に従事していたが、現在は専任要員として乗船している。

 この辺りは海保も試行錯誤の段階だが、人数だけは確保している。

 特別警備隊隊員達は、海上保安庁地上施設の警備要員も兼ねており、2800名もの隊員を抱えている。

 海保は他にも特殊警備隊 SSTを400名擁している。


「進行方向に味方の船は無いか?」


 日本本国への航路は、移民や資源輸送船団の航路でもあり、海上自衛隊や海保、或いは高麗民国国家警備隊海上部隊警備艦や北サハリン海軍の軍艦が航行していたりする。


「いました。

 海上自衛隊、護衛艦『いなづま』が、本船の北120キロ先を航行しています」


 レーダーの標示を見て、林崎船長は首をかしげる。


「単艦で航行か?

 何をしているんだ、こんなところで」

「おそらくですが、先週、西方大陸から帰還した護衛艦『によど』が、本国護衛艦に復帰したので、こちらにまわされてきたのでは?」


 大陸では第5護衛艦隊創立の準備が進められていたので、ありそうな話だと思えた。


「ああ、そんなニュースが流れてなあ?

 まあ、都合がいい。

『いなづま』に協力要請。

 密輸船の頭を抑えてくれ、と。

 密輸船が回避しようとしたら距離を詰めて、ヘリコプターで特警を送り込む。

 同時に停船命令を発信、応じない場合の砲撃用意」


『しゅんこう』の飛行甲板では、大型輸送ヘリコプター スーパーピューマ225が発進し、70口径40mm単装機関砲×1基が密輸船を射程距離内に捉えようとしていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 警視庁が管轄外で動くのが謎です、警視庁の管轄は東京都のみです。
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