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日本異世界始末記  作者: 能登守
2028年
109/269

ラカンティア農場の戦い

 大陸南部上空

 航空自衛隊

 CH-47 チヌーク


 新京警視庁から派遣された宇野警視も頭を抱えていた。

 たまたま視察で訪れていた中島市で、緊急任務だと自衛隊の基地までパトカーで連行され、ヘリコプターの中に放り込まれたのだ。

 待っていたのは所轄の刑事四名と完全武装の銃器対策小隊だった。

 そして肝心の任務は亜人達との紛争地域で邦人の逮捕だという。


「悪夢だ」

「いい加減諦めて下さいよ警視。

 自衛隊の部隊も合流するんだから大丈夫ですよ」


 年長者であり、補佐役の山岸警部補が宥めているが、他の面々はうんざりしていた。

 そんなCH-47 チヌークを護衛するようにF-4戦闘機が2機飛行していた。


「さっさと爆撃して解決してくれればいいのに」

「警察官が言っちゃ駄目でしょ、それ」






 大陸南部

 ラカンティア子爵領

 ラカンティアファーム社農場

 警備指令室


 ラカンティアファーム株式会社は、ラカンティア子爵領で設立された現地法人である。

 その農場は地球から転移する際に輸入が途絶えた茸の一大生産拠点となっていた。

 大陸の日本領や華西民国や南部独立都市の茸の70%を生産し、同時に大陸独自の茸の生産、研究の施設も同地に建てられていた。

 商業的にも食料事情からも撤退は許されない。

 幸い総督府から、自衛隊と警察から武装部隊が派遣されたと連絡が合った。

 しかし、ラカンティア子爵領邦軍との連絡役であった隊員から報告が無線で届く。


『リザードマン側に動き有り、複数の上半身は馬、下半身が魚のモンスターを湖側から出してきました。

 モンスターの背後にリザードマンがいるので、使役しているものと思われます』


 新沼はすぐにモンスターのデータから正体を照会させる。


「出ましたケルピーです。

 魔獣の一種で、人を食い、水の魔法を使います」


 地球の伝承では、水霊・水魔の一種だがその容姿や能力から研究者によってケルピーと命名された。

 大陸では単純に水馬と呼ばれていた。

 映像ではケルピーの周囲に水の球が複数発生し、湖岸を警備していたラカンティア子爵領邦軍の兵士達にぶつけて、弾き飛ばしている。


『警戒線が破られました!!

 リザードマンの大軍が侵入します』

「無理をせずに農場に戻れ!!」


 ラカンティア子爵領邦軍は総崩れとなって逃げ惑っている。

 数百のリザードマンが農場に迫る。

 ケルピーも地上を移動できるらしく、湖の水で水球を作り宙に浮かせて接近してくる。

 一匹のリザードマンが白旗を振りながら農場の正門にやってくる。


「降伏の使者か?」

「話し合いの使者だ」


 宇喜多の戯れ言を一蹴し、新沼は警備指令室から正門に向かう。


「ここの警備主任の新沼だ。

 要求はなんだ?」

「我は湖沼伯爵領の戦士パウラヒ、わかっているだろうが皮を剥がれたり、殺された同胞の遺族に対しての金銭的補償。

 並びに犯人の引き渡しだ」

「補償に関しては、会社も応じる可能性はある。

 だが引き渡された犯人はどうなる?」

「同胞と同じ目に合って償ってもらう。

 最低でも全身の皮を剥ぐ!!」


 犯罪者の基本的人権も守らないといけない日本国としては認められない条件だった。


「犯罪者は我々の法に寄って裁かれる。

 引き渡しには応じられない」

「ならばこの農場は破壊する。

 そうすれば事件の元凶たる犯人を含む貴様等がこの地に残る理由は無くなるだろう。

 抵抗はするなよ?

 我等としても無駄な死者は出したくない」


 警備指令室には新沼が交渉している間に、ラカンティアファームの常務徳永が宇喜多達の前に現れていた。


「このままでは農場が蹂躙されてしまう。

 君らもそのまま捕まって、皮を剥がれるぞ?

 そこでここに武器庫の鍵がある。

 連中を蹴散らしてしてしまえば最低限日本の法で裁かれる程度だ。

 そのまま他の貴族領に逃げ込むのも手だな?」

「面白い乗ったぜ。

 逃走資金も用意しといてくれよ?」






 大陸南部

 ラカンティア子爵領

 ラカンティアファーム社農場

 装備品保管倉庫


 リザードマンより引渡しを求められている武装警備員宇喜多は、拘束を解かれた他の武装警備員五名を連れて装備品保管倉庫を訪れた。

 当然のことながら装備品保管倉庫を警備する武装警備員が、宇喜多達を見て拳銃を構える。


「邪魔だ、どけ!!」


 倉庫を警備する武装警備員達には、盗賊やモンスターはともかく、同じ日本人である宇喜多達を撃つ度胸は無い。

 たちまち拘束されて、拳銃を奪われていた。

 倉庫のカードキーや暗証番号を入力して解錠すると、思い思いに武器を手にとる。

 武器の装備が許可されたとはいえ、民間企業である大陸警備保障には保有数に制限はある。


「拳銃は二挺は持っていけ」


 保管されている拳銃、SAKURA M360Jを一人一人に手渡し、弾丸を込めていく。

 また、豊和M1500ライフルも持ち出す。


「さすがに予備は無いか?」

「俺達の分だけですね。

 弾は鞄に積めときますよ」


 耐刃防護服やヘルメットを被ればリザードマン達には見分けが付かない。


「新沼の野郎にも借りを返さんとな。

 前からあいつは気に食わなかったんだ」


 宇喜多と仲間達は下卑た笑いをしながら装備保管倉庫から退出する。


「保坂、速見、車を調達してこい。

 逃亡に使うんだから、ガソリン満タンの荷物摘めるやつな」


 すでに農場にはリザードマン達が多数侵入している。

 宇喜多達を見掛けると、威嚇してくるが遠慮なく発砲されて蜂の巣にされる。

 銃声に驚いたリザードマンの戦士パウラヒと大陸警備保障の警備主任新沼は同時に振り向く。


「交渉はここまでだな」

「残念だ」

「しかし、随分流暢に人間の言葉を話せるんだな?

 他のリザードマンは会話が成り立たなかったのに」

「十年以上前には皇都や領都に留学してたからな。

 おかげで交渉やら偵察に借り出される。

 しかし、だからこそお前達地球人の恐ろしさも理解している。

 あの巨大で綺羅びやかな皇都を瓦礫と灰に変えたのだからな」


 新沼は避けたかった武力による鎮圧を行うしかない。

 最も可能だとはとても思えなかった。

 この時点で新沼は、警備に当たっていた部下が身の危険を感じて発砲せざるを得なかったのだろうと考えていた。

 だから接近していた大陸警備保障の警戒車として改造された小型バス、日野ポンチョから出てきた武装警備員が自分に向けて発砲してくるとは思わなかった。

 耐刃防護服を着ていたが、左太股と右上腕部、腹部の被弾して倒れた。

 パウラヒがその腕力で抱えていた分厚い鉄の盾で身を護り、その陰に新沼を引きずり込んで守る。


「仲間割れか?」

「あ、あいつらが要求されてた……、犯人だ。

 逃げる気だ……」

「わかった、喋るな」


 パウラヒは背後に合図を送ると、控えていたリザードマンが骨笛を吹き鳴らす。

 笛の音を聞いたリザードマン達は持ち場を放棄し、音源を囲むように動きだした。

 すなわち宇喜多達が乗った日野ポンチョを包囲するように動き出したのだ。

 銃弾の射程には及ばぬが、建物の蔭を利用して接近し、投槍を繰り出して装甲化された日野ポンチョの車体にすら穴を開けてくる。

 車内の武装警備員達が銃弾で、リザードマン達を数匹仕留めるが数が多い。

 農場に運び困れたケルピーによる水球もぶつけられて、車体が激しく揺れる。


「蜥蜴野郎が、いい気になるな」


 民間の警備会社だから手榴弾の保有は許されない。

 しかし、ダイナマイトは所有出来る。

 本国と違い、大陸での開拓事業でふんだんに使われている。

 非公式にだが、対モンスター用にもだ。

 宇喜多は窓からダイナマイトを投擲し、ケルピーやリザードマン数匹を爆発に巻き込む。

 他の部下達も各々にダイナマイトをばら蒔き、包囲網が、ボロボロになる。

 宇喜多に同調していない武装警備員や敗走してきたラカンティア子爵領邦軍の兵士達も随所で戦いを始めている。


「ま、まずい止めないと」


 無秩序に始まった戦いに新沼はパウラヒに抱えられながら戦況を伺う。

 味方に呼び掛けたいが、負傷のために声がでない。


「け、警備司令室に連れて行ってくれ」

「我は別にこのまま戦さを続けてもかまわんのだがな」

「犠牲が増えれば自衛隊が来るぞ」

「ふむ、さずかにそいつは敵わんな」


 リザードマンのパウラヒも地球人の軍隊と本格的に戦うのは、種族の存亡に関わる。

 さて、とうの自衛隊の派遣部隊だが実のところラカンティアファーム社農場の外壁に到着していた。

 輸送ヘリであるCH-47 チヌークで直接乗り込んでは、リザードマン達を刺激するのではと領都郊外に着陸し、徒歩で移動したのだ。

 同行している警察部隊も一緒だ。


「我々が到着しているってことは連絡済みなんですよね?

 なにやらもう始まっているようですが」


 陸上自衛隊第9先遣隊第三小隊隊長水村一等陸尉は、新京警視庁のラカンティア亜人殺害事件捜査本部本部長なる肩書きを付けた宇野警視に問い質す。


「私は中島市でいきなりヘリコプターに放り込まれて、ようやく事態を把握できたところだ。

 てっきり連絡はそちらでしてくれてると思ってたよ」


 農場からは奇怪な叫び声や銃声がこだましている。

 山岸警部補が警備司令室やラカンティアファーム社の社屋に携帯電話で連絡を取っているが、誰も出ないようだ。

 ゲートからは農場でギリギリまで働いていた地元民が逃げ出してくる。

 向こうもある程度日本語がわかるので


「タスケテー!!」

「アッチ、タタカッテル!!」


 と、駆け寄ってくる。


「仕方がない。

 事態の終息の為に突入する。

 水村一尉、いいですね?」

「え?

 ここ民間施設ですよね?

 勝手に入ったらまずく無いですか」


 貴族の屋敷に押し入るなら兎も角、日本企業の施設に押し入るなど、後で何を言われるかわかったものでは無い。

 自衛隊と警察は性格の異なる組織だと浮き彫りになる。


「ここまで来といて今さら何を言ってるんですか?

 モンスターに襲われてる邦人施設の救援なんだから問題無いでしょう?」

「総督府からはリザードマンを人として扱えと」

「じゃあ、賊です、賊。

 邦人を襲う脅威を排除する為に乗り込むんです。

 それならいいでしょう!!」


 宇野警視は段々自分に求められた役割がわかってきた。

 自衛隊を含めて、めんどくさい政治事情に屁理屈を捏ねくりまわす為だ。


「我々が先に行きますよ。

 その方がやりやすいでしょう」


 山岸警部補が捜査官と銃器対策部隊がゲートを潜っていく。


「じゃあ、我々も行きますか」


 自衛隊も後に続く。

 だがすぐに足を止めることになる。


「あぁ、どうなってますか?」

「どうなってるんですかね、あれは?」


 農場では武装警備員がリザードマンに発砲し、リザードマンが武装警備員に斬り付けている。

 そこは理解できる。

 だが一方でリザードマンが武装警備員を守り、武装警備員がリザードマンと共に戦っている。

 また、武装警備員が武装警備員に発砲している。


「我々は誰を制圧、逮捕すればいいんですかね?」


 山岸警部補の言葉に水村一尉は反応に困る。


「1発デカイ音をかましてやろう。

 特殊閃光弾を使え」


 宇野警視が言い出した特殊閃光弾は、銃器対策部隊が装備しているM84 スタングレネード(特殊音響閃光弾)のことである。

 今回は隊員一人に付き、1個を持ってきている。


「目標は?」

「日本人同士で銃撃戦をしているあそこだ。

 双方に1発ずつ投げ込め!!」


 それは負傷した新沼警備主任を守る為に発砲している武装警備員とパウラヒ達リザードマンの共同戦線と装甲化された日野ポンチョから攻撃を続ける宇喜多達の陣営だった。

 他にも銃撃戦を行われているが、日頃の怨恨に火が付いた結果であり、小規模なものだ。

 銃器対策部隊の隊員が特殊閃光弾を双方に投擲すると、激しい轟音と光が武装警備員やリザードマンを襲う。

 それ以外の争いもその轟音に驚き、完全武装の警察や自衛隊が到着したのを悟り、矛を納めていく。


「制圧しろ!!」


 銃器対策部隊と自衛隊隊員達が武装警備員達を制圧していく。

 リザードマン達は自衛隊の姿が見えた時点で、退いていく。

 深追いは禁じられていた。

 しかし、リザードマンと違い、ケルピーは退かずに攻撃を続けてくる。


「あれは排除しろ」


 水村一尉は、近くのケルピーをAk--74小銃で射殺する。

 小隊の隊員達も分散しながらケルピーを始末していく。

 警察の銃器対策部隊は人間の確保を優先していく。



 パウラヒはスタングレネードが爆発した瞬間に気を失いひっくり返っていた。

 銃器対策部隊の隊員が銃を向けるが、まだ意識のあった新沼警備主任が止める。


「だめだ……、そいつは交渉役だ」


 宇喜多は銃撃戦の最中に警察や自衛隊が農場に入ってきたのに気が付いていた。

 警察の隊員が何かを投擲する構えを見せた時に日野ポンチョから飛び出して難を逃れていた。

 その後は全力疾走で、現場から逃げ出していた。

 このまま留まっていても逮捕されるのがオチだからだ。

 しかし、その逃走経路はリザードマン達の撤退路と重なっていた。

 リザードマンの投げ槍やケルピーの水球のマトになっていく。

 後方から追い掛けてきた山岸警部補達の捜査官達が追い付き、リザードマンやケルピー達に銃器対策部隊でも使用が確認されている。

 ベレッタ90-Twoを発砲して追い散らす。

 宇喜多の身柄を確保したがすでに死体となっていた。


「はあ、こいつが主犯の宇喜多か。

 連中に引き渡してやれば良かった」


 任務的には遺体でも回収しないといけない。


 最終的には武装警備員は七人の死者を出していた。

 肝心の虐殺犯の死者は宇喜多だけで、残りは逮捕された。

 そして、リザードマン達は







 大陸東部

 新京特別行政区

 大陸総督府


「リザードマン達の首魁セルン湖沼伯爵が日本国に対し、一方的無条件降伏を通告してきました。

 湖沼伯の首で種族を赦して欲しいと」

「虐殺したのこっち側なのに体裁が悪すぎるだろう・・・」


 大陸総督府では、秋月総督をはじめとする職員達が忙しく動き回っていた。


「午前中までに来年から始まる杜都市の植民に対する書類を片付けなければなりません」


 秋山補佐官の言葉に秋月総督はうんざりした顔をする。

 現在植民が行われている杜都市は、仙台市民を中心とする植民都市だ。


「来年になればひと息つけるんだがなあ……」

「いよいよ民間の武装警備員に派遣を求める段階です。

 大陸警備保障には他社より多目の供出を求める予定です」


 懲罰と他社と交流させることによる業務改善を求める為である。


「ラカンティアファームは委託した大陸警備保障が勝手にやったことと言い張っています。

 また、同社は栽培していた茸に多大な損害があり、試算させたところ大陸で流通している茸の生産量が8%に及び、茸の高騰が避けられない状況です」

「おかげで本国並びに財界からラカンティアファームを不問にせよ、との圧力が来てるよ。

 食料生産は我が国の最優先事項だが、会社首脳陣の辞表は最低限必要と言ってやったら、辞表が1ダース届いたよ。

 事業自体の邪魔にならなければそれでいいらしい」


「会社の立て直しの為にも高給取りは邪魔だと判断したのでしょう」

「生産の邪魔にならない範囲で、税務署や保健所、衛生局、労働基準監督署等の職員を定期的に派遣しろ。

 常に我々が監視してるぞとのメッセンジャーだ」

「子爵家も今回の件で補償を求めてきています。

 領邦軍に死傷者が出てますからね。

 ラカンティアファームへの負債を減額させる方向で話は進んでますが、子爵家側は目に見える現金的な補償を望んでいたようです」


 総督府としては、勝手にそっちでやってくれというところだった。

 執務室の内線が鳴り、秋山補佐官が受話器を取る。


「秋山です。

 ああ、来られましたか、失礼の無いように関係各所に通達を流して下さい」


 秋山補佐官の通話に秋月総督が内容を察して、溜め息を吐く。

 本日来客予定のセルン湖沼伯爵が送迎に用意させたCH-47チヌークで到着したのだ。

 セルン湖沼伯爵からは、今回の事件が紛争化したことにより、無条件降伏を申し出てくれていたのだが、総督府としては悪いのはこちらなので互いに水に長そうということで話がついていた。

 南部亜人連合の設立の為にも今回はこちらに来て頂き、接待をすることになっていた。



 ヘリポートに着陸したCH-47チヌークから迎えに行かせた杉村外務局長と護衛の陸上自衛隊第9先遣隊第三小隊隊長水村一等陸尉と新京警視庁の宇野警視に先導されてセルン湖沼伯が降りてくる。

 随員のリザードマン達も降りてくるが、セルン湖沼伯の歩みはゆっくりだ。


「宿泊施設は……、大丈夫だよな?」

「突貫で造らせました。

 この分野に詳しい大陸の学者御済み付きで、かつて皇都にあった屋敷と遜色ないと」


 秋月総督の不安も無理はない。

 セルン湖沼伯は杖を付いて歩いているものの二本の足で歩いている。

 問題はその身長が三メートルを超えていることだ。

 尻尾だけでも二メートル近くあり、人間用の建物では行動に不自由が生じる。

 高さにしろ横幅にしろ、必要な空間が大きくなるのはケンタウルスで経験済みだが、今回は更に大きい。

 爬虫類や両生類は、自分で体温を作り出せない。

 哺乳類は自分で体温を作り、夜や寒いときでも体温を作り出すことが出来まる。

 別の言い方をすれば、哺乳類は体温を作るために食事をしている。

 爬虫類や両生類は、自分で体温を作り出さない仕組みの体で生きている。

 太陽の暖かさを当てにして体温を上げる動物であり、

 外気温によって体温が変化する。

 一概には言えないのだが、爬虫類は餌の豊富な地域で歳月を重ねると体が巨体化する傾向がある。

 ほ乳類が食料を体温に代えて消費しているのに対し、熱量に変換できない爬虫類は、体を巨大化させるのに使われる。

 リザードマン達もその特徴を持ち、最長老であるセルン湖沼伯の体も大きかった。

 セルン湖沼伯はこちらの慣習に従ってくれており、秋月総督と握手を交わす。


「この度は御足労をお掛けして申し訳ありませんでした。

 残った犯人は懲罰部隊に送り、『前線』で使い潰す予定です。

 結果が出れば報告させて頂きますが、今回は未来についての話し合いが実りあるものになれば幸いです」

「総督閣下のご厚意により、遺族も補償を受け取れる戸とになりました。

 我らが種族も、日本とともに繁栄の道を探れるよい機会。

 また久しく遠ざかっていた遠方への旅路を楽しませて頂きます」


 両者は共に随員を引き連れながら会談場に向かう。

 リザードマン達はすでに南部亜人連合への加盟は決まっている。

 ようやく四種族目だ。

 また、今回の事件の発端となった武装警備員の生き残り4人は西方大陸アガリアレプトに送られた。

 同地では重犯罪を犯した者達を徴用して組織された第二更正師団に所属させられる。

 恐らく生きては帰れないだろう。


「年内にスコータイ市でサミットが行われる予定です。

 南部亜人連合やエルフ大公国、シュモク伯邦国、螺貝伯邦国からもゲストとして参加します。

 国際観艦式も行われるますが、湖沼伯閣下も御招待したいと考えていますが、御予定は問題無いでしょうか?」

「この老体も平時には暇をもて余してましてな。

 よろしければ御招待に預かりましょう」


 会談は終始、和やかな雰囲気であった。




 会談が終わり、秋月総督は新京警視庁に対して増加する日本人犯罪者に対する一層の取り締まり強化を命じるのだった。



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