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許可を下さった坂井ひいろ様、ありがとうございます。
かなり悪戦苦闘しましたが、どうぞお楽しみ下さい。
俺(安室)は高校二年生の始めにギガトン級のデブに告白された。その子のアダ名はモビルスーツ、俺は“ドム”と言っていた。
俺は万能感の塊だ。普通じゃない。アダ名は“強化人間”、決してニュータイプではない。なぜなら、人間関係が上手くいかないからだ。
両親は祖父の代から続く鉄工所を営み、俺に英才教育を科せた。柔道、水泳、サッカー、バスケ、卓球、学習塾。
あらゆる事をスポンジの様に吸収する俺は、心の片隅に普通というものに憧れがあった。何でも出来て当然と自分で周りのハードルを上げ、風当たりも強い。友達と呼べる人もいなかった。
長所と交われば悪友なし……確かにな。友達もいないけど。親が寄せ付けなかったのかと、疑うぐらいに。
俺は万能感と伴に息苦しさを感じていた。
園児、小学生、中学生時代に友人はいたが、自然と縁は切れていった。習い事、特にサッカークラブの人達は俺に良くしてくれた。しかし、淘汰してやった。いや、俺が淘汰されたのか。
居場所がない……。頭のどこかで分かっていたが、自分で自分の居場所を潰してきた。不器用な自分に腹が立つ。しかし、どうやったらいいか解らない。“周りの連中は雑魚”と自分に言い聞かせ、なんとか精神を繋ぎ止めていた。家が居場所? 思春期にはアウェイだ。
俺の隣の席はドムが座っている。授業中にシャーペンを握る白い手は正にクリームパン! ……飯テロだ。腹が減る。
俺はジッとクリームパン(手)見ていたら、視線を感じだ。ドムがこっちに気付いたようだ。
視線が合う。ドムの瞳は薄いグレーだ、初めて認識したからちょっと驚いた。カラコンの野暮ったい色じゃない、ナチュラルだ。
ドムはニコニコしている。俺はハッと我に返り、目を反らす。吸い込まれるように見入ってしまった。相手はデブなのに、ってことは痩せれば可愛い?
その日の授業が終わり、帰ろうとした時にドムが白い紙を落とした、ドムは慌ててそれを拾い、俺に渡してきた。
おっと、可愛いイケイケ女子から伝え渡しのラブレターかな? 俺のスペックの高さに気付いてしまった。
「ずっと前から好きです、安室君の事が」
「はっ!?」
まさかのドムから! まさかのドムから? まさかのドムから!? これはテロだ。
俺はラブレターを受けとるか、躊躇った。相手はデブ。でもドムの勇気は買ってやろう。雑魚共の視線が痛いが、俺はドムのハムみたいな手首を引っ張りながら、教室から出ていく。いてもたってもいられなくなった。
「ねえ、どこに行くの?」
「屋上だ」