転生
以外にネタが早くまとまったので、どうぞご覧下さい。
そこは白一色の部屋だった。 さほど広くない部屋にスーツ姿の男は仰向けに寝ていた。 其処へ透明な球体が飛んでくる。 男の近く迄来ると、ポンッと音と共に女性が現れた。 白を基調にしたフリルたっぷりゴシック調の服を着る女性は、まだ少女と言っても良い顔立ちの可愛らしい姿だった。 女性が前に手を出すと空中に画面のような物が現れ、それを指で操作していく。 そして画面と男を見比べて頷いた。
「間違いないわね。 コホン、山田さーん起きて下さーーい」
「…………」
ピクリとも反応しない山田と呼ばれた男。 それを見てさっきより大きな声を出す女性。
「山田さーーん起ーーきーーてーー」
「うーんうるさい」
寝返りをうち向こう側を向く山田、女性のこめかみに青筋が走り微笑みながらそばに寄ると耳を掴み上げて怒鳴り散らした。
「ごぉぉぉらぁぁぁぁぁ!!! 起ぉぉぉぉぉきぃぃぃぃぃろぉぉぉぉぉ!!! ぼこくらわすぞ! ごらぁぁぁぁぁ!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
耳を押さえ慌てて起きる山田は、目の前にいる女性を見て後退り周りを見て混乱した。 起きた山田を見て女性は喜んだ。
「キャハ! 山田さんが起きた」
「な、な、何だあんた? それにここは?」
「私は天使です。 山田さん貴方は2時間ほど前に亡くなりました。 此処はその後の行先を決める場所の入口です」
「はぁ? どういう事だ? 詳しく教えろ」
山田は天使の肩を掴むと激しく前後に揺さぶった。
「いや、だから、や、山田、さ、ん落ち着いて」
「これが落ち着いて要られるか。 さっさと言え」
さらに激しく揺さぶる。 頭が揺れてうまく喋れない天使のこめかみに青筋が走り、プチッと音がした。 その瞬間山田の手を払いのけつつ少し屈むと右拳が顎を撃ち抜いた。
「昇○拳弱」
「ぐぅぼぉ!」
砕かれる顎、吹き飛ぶ歯、飛び散る血、その威力に体が浮き上がる。 其処へ左足を軸に腰を落とし1回転しながら掌を合わせて腰にあて少し力を溜め前へ突き出す天使。
「波○拳弱」
その両の掌から光る弾が飛び出し下に落ちかけた山田の腹にめり込む。
「ぶぅぶるろろろろろ!!!」
骨の粉砕、内臓破裂、山田は血反吐を吐き後ろへ吹き飛びながらその音を聞く。 そして数メートル後方の壁に激突し背骨、頭蓋骨、内臓などが粉砕、破裂してずだぼろになり下に落ちる。
「ぐぅぅぎゃゃゃゃゃああああああああ!!!」
「おらぁぁぁぁぁ! こっちの話を大人しく聞けボケェェェェェ!! 次暴れたら魂バラバラにして星の肥やしにするぞぉぉぉぉぉ!!!」
山田はぐちゃぐちゃの状態でも死なずに意識があり、地獄のような痛みが全身を支配していた。
「じゃあ山田さん、話しますから聞いて下さいね」
「ごんな、じ、じょうだいで………ばなじなんで聞けるかーてっあれ? 傷がない」
「あれくらいの威力じゃ魂はバラバラになりませんからー、直ぐ元に戻ります。 では良いですか?」
「は、はい!」
怯えて正座する山田、それを見て頷く天使。
「えーと、先ほど言ったように貴方は亡くなりました。 原因は背中をナイフでグサッです」
「そ、そんな一体誰が?」
「通りすがりの人です」
「え?」
「その人、いけないクスリで頭がパッパラピーになっちゃった人で取り敢えず目の前の貴方にグサッです」
「そんな理不尽な……」
項垂れて頭を床に着ける山田。
「でももっと大きな問題があって、貴方の寿命本当はまだ先なんです」
「はっ?」
「例の頭がパッパラピーの人の魂がバグッてたせいで貴方が犠牲になっちゃいました」
「バグ?」
「はい、魂も長年転生を繰り返すと色々おかしくなっちゃうんです。 本当はそういったのは時間を掛けて浄化した後転生させるのですが、手違いで浄化が完了する前に転生したみたいなんです」
「それってそちらのミスって事?」
「ぶっちゃけそうです」
悪びれずニコッ笑う天使。 それを遠い目で見る山田。
「そこで主神様が特別措置を致します」
「とく……べつ……そち?」
山田の目に意識が戻る。
「はい、本来魂を休ませてからの転生なのですが、今回は事情が違いますのですぐに転生できます」
それを聞いた山田は突如立ち上がりガッツポーズをする。
「ヨッシャーーーーーーーーーー!!!! 転生キターーーーーーーーーー!!!!」
突然の行動に思わずひく天使。
「ノベルの読む度に俺にもこんな事ないかなあと思ってたんだ」
「ま、まあ喜んで頂けたなら……」
心なし山田から離れる天使。
「ではこれから主神様の所へ案内しますね。 ついて来て下さい」
すると天使がポンッ透明な玉に変わり壁の方へ飛んでいく。 すると壁に扉が現れた。
「さあ、山田さんこっちです」
「あっ、はい」
玉になった天使と共に長い廊下を進む山田。 そして山田はふと疑問に思った事を天使に聞いてみた。
「あのー天使さん、ちょっとお聞きしたいのですが」
「何ですか?」
「さっき私を打っ飛ばした技って……その……」
「あーあれですか、あれは昔研修で地上に降りた時、子供たちの間で流行ってたので覚えました」
「そういう事ですか……あははー……」
苦笑いをする山田だった。
そのまま暫く歩くと巨大な壁の前に着いた。 周りには通路や扉はなく行き止まりのようだった。 すると透明な玉だった天使がまた人になり壁の前で膝を折る。
「天使エルル、特別案件、寿命未達死亡者、山田一郎を連れて参りました」
すると、壁から巨大な獅子の顔が出てきて此方を睨む。 その迫力に腰が抜け尻もちをつく山田。 獅子の目が光り此方を照らし出す。
「うむ、間違いない様だ。 連絡は受けておる、通るが良い」
「はい、感謝致します」
獅子の顔は壁に引っ込むと壁が左右に開いた。 その奥から優しくも強い光が溢れてきた。
「では山田さん行きますよ。 ん、どうしたの?」
「すみません。 腰がぬけて立てないです」
「仕方ないですね」
そう言って天使は山田の襟を掴むと強引に引きずっていった。
「チャッチャと行きますよ。 主神様をお待たせするわけにはいかないので」
「ぐ、ぐえぇ苦しいぃ」
山田の声を無視して光る通路を進む天使。 暫く進むと巨大な部屋に着いた。
「着きましたよ」
言うと天使は山田から手を離した。 ようやく解放された山田は咳き込みながら周りを見る。 とてつもなく広い部屋、いや空間だった。 広すぎて端が見えないのだ。 呆然としていたら。
『やあ、よく来たね』
突然頭に声が響いた。 山田は驚き周りを見るが声の主らしき人物は見当たらない。 だが天使は膝をつき頭を下げていた。 慌てて山田も正座をして頭を下げた。 そのまま待っていると、数メートル先から先程の声が耳に響く。
「顔を上げなさい」
山田は恐る恐る顔を上げる。 そこには人で言うなら2、30位の男性が立っていた。 穏やかな表情に白いローブを纏っている。
「初めまして、私がこの世界の主神を努めている、!#$%&=~だ」
「え⁉」
「ああ済まない、今の人には聞き取れなかったね。 まあ分かりやすく神様でいいよ」
「はあ……」
「それと、エルルもご苦労様」
「あああ、なんと勿体無い御言葉、見に余る光栄でございます」
全身からハートを出す天使、それをあきれ顔で見る山田だった。
「さて、山田君、エルルから話は聞いていると思うが今回は済まなかったね」
「いえ、そ、その」
神様に謝られて山田は恐縮する。 主神は手をかざし画面を出すと指で操作しだす。
「詫びと言っては何だけど、転生先は幸せな一生を送れるような所を選ぶつもりだよ。 それと……」
「あっあの、お願いが……」
「何だい? 遠慮せずに言ってごらん」
「転生先は異世界になりませんか?」
主神は少し以外そうな顔をした。 横にいる天使も驚いている。
「異世界……こことは違う次元の世界という事かい?」
「は、はい」
「彼方の神に了解を得られれば出来なくは無いけど……良いのかい? 私の管轄外になるから安全は保障できないよ?」
「はい! 構いません」
山田は目を逸らさずに答えた。 その目を見た主神は頷いた。
「分かった。では彼方の神に頼んでみよう。 それでこんな世界が良いとかあるのかい?」
「はい、出来れば魔法とかあるファンタジーな世界が良いのですが」
「ふむ、魔法か……よし調べてみよう」
主神は両手を広げると巨大な画面が現れた。 その画面の中を文字が高速で下から上へ流れて行く。 かなりの数が流れたその時、ピタッと止まり一つも文字が光っていた。
「うん、この世界なら君の希望に合いそうだ。 生き物も似た感じだし、ここの神は私の知り合いだから頼みやすいだろう」
「有難う御座います。」
山田は深々と頭を下げた。
「では連絡をとってみよう」
主神が光っていた文字を触ると画面が変わり呼び出し音が鳴る。 しばらくすると画面に一人の女性が映った。 その姿を見た主神は一瞬驚き呆れていた。
「誰かと思えば!#$%&=~かえ。 久しいの、一千年振りくらいかの?」
「久しぶりだね@;:$%。 でもどうして裸何だい? 服は?」
主神が呆れた理由……画面に映った女神は裸だったのだ。
「ほほ、湯あみのあとじゃ。 気にするな。 で、何ぞようかえ?」
「全く……相変わらずだね。 まあ良い用件を言うよ」
主神は今回の件を相手の女神に話した。
「と言うこと何だけど、どうかな? 受け入れてくれるかい」
「そうじゃの先ずはその男の情報を送れ、受ける受けないはそれからじゃ」
「分かった今送るよ」
主神は手から光る玉を出し女神の映る画面に入れた。 玉は女神の下に届き女神は山田の情報を確認する。
「んー、まあ良いじゃろ」
「ありがとう、助かるよ」
「たが、此方の頼みも聞いて貰うぞえ」
「仕方ないね、何だい?」
「なに簡単な事よ、今度酒に付き合え。 嫌とは言うまいの?」
「やれやれ、またかい。 分かった付き合うよ」
「よし決まりじゃ、では早速道を繋げ」
「分かった、では山田君心の準備は良いかい?」
「はい、お願いいたします」
主神は頷くと彼方の世界との道を開く。 山田の足下に複雑な紋様の魔方陣が現れた。
「そのまま少し待ってくれ、彼方の許可がいるからね。 何でも他の世界の住人が無理矢理繋げる事があるらしいけど、とても危険な行為だね。 お互いの世界の壁を破壊しかねないし、それに道を通る者も安全は保障されないからね」
山田が頷いていると、魔方陣の外側に更に魔方陣が現れた。
「道が繋がったね、じゃあ山田君彼方に行っても頑張りなさい」
「はい、ありがとうございました」
山田は深々と頭を下げた。 魔方陣から光りが溢れ、山田を呑み込む、やがて光りが弱まり消えると山田も魔方陣も消え去っていた。
「大丈夫でしょうか? 異世界に行って……」
「なに、自ら決めて行ったんだ。 どうなっても後悔はしないだろう」
天使は山田がいた場所を見て言った。 ふと天使が気づき主神に問う。
「主神様、因みに此方では何処に転生予定だったのですか?」
「ん、ああ優しい飼い主の下で暮らすハムスターに転生の予定だったんだ」
「なるほど」
「さて、この件も終わったしエルルも通常の業務に戻りなさい」
「はい、御前失礼致します」
山田はまどろみの中にいた。 やがて意識の方が勝ってくると山田は目を覚ました。 先ほどのやり取りが一瞬夢に思えた、しかし目の前に広がる景色を見て確信した。 自分は異世界に来たのだと。
(んー……目の前にジャングルが広がってる。 すげー、しかも木や草が全部でかいわ)
山田は周りの木々のスケールの大きさに驚いていた。 ビルのような大きさの木が立ち草なども自分と同じくらいの大きさだった。 山田は取り敢えず誰かいないかと周りを散策する事にする。 立ち上がろうとしてふと気づく、目線の低さ、そして足で立ち上がれない事に。
「ん、どうなって……………………なんじゃこらぁぁぁぁぁーーーー」
小さな手足、全身を覆う毛、出っ張った鼻、そこにいたのはネズミだった。
「な、何がどうなって? か、鏡……ってんなもんあるかーーーー」
森の中にネズミの甲高い声が響く。 山田ネズミは我を忘れて走っていた。 この状況で落ち着けと言うのが無理だった。 走り、走り、走って出っ張りに足を取られコケた。 コケた先は水たまりだった。 水に落ちたおかげか少し落ち着いた山田ネズミはその水面に映る自分を見ていた。
「ネズミか? これは? 何でネズミ? ……はっそうだ、神様。 神様、神様、どうか答えて下さーい」
「なんじゃ? うるさいのう ん、おお其方は先の異世界人か、何ぞようかえ?」
聞こえる声は間違いなく神の部屋で聞いた女神の声だった。 山田ネズミは慌ててこの状況を尋ねた。
「神様、山田です。 転生したらネズミになっていました。 なぜでしょうか?」
「なぜ? なぜとはどう言う意味じゃ?」
「意味って言われても……前は人間だったのに……」
「なるほど、そういう意味かえ、全く人とは愚かじゃのう」
「え……」
「転生でどの生き物になるかは基本無作為に決まっとろうが」
「はっ? 無作為」
「当然じゃろう。 考えてもみよ、人と人以外はどちらが多い? それとも其方の世界は人が多いのかえ?」
「えっと確か……今は76億人くらいいたはずです」
「中々多いの、では人以外全てはどれくらいいたのじゃ?」
「それは分かりません……人以外全てだと人より多いと思います」
「そういう事じゃ、諦めよ」
「で、でも彼方では……お詫びで幸せな所にと」
「彼方は彼方、此方は此方じゃ。 第一此方はお主に詫びる事なぞないわ、逆に受け入れた事に感謝しろ」
「…………」
「もうよいか? ではさらばじゃ」
女神の声は途切れた。 山田ネズミは呆然とその場に佇んでいた。 そのまま何分立っただろう、山田ネズミは全身の毛が逆立つのを感じた。
「なっ何だ? この感覚、ま、まさか殺気?」
慌てて周りを見回すと草むらの中からゆっくりと蛇に似た生き物が現れた。 その蛇は山田ネズミを睨み襲う機会を窺っていた。 山田ネズミは咄嗟に威嚇を始める。 誰に教わってもいないネズミとしての本能だった。
(やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする)
山田ネズミの全身に死への恐怖が走る。 筋肉が強張る、いつ襲ってくるか分からない、その事で精神が削られる。 しかし山田ネズミは気力を振り絞る。
「転生初日で死んでたまるか! こうなったら維持でも生き残る!!」
山田ネズミはさらに威嚇し声を上げる。 その勢いに蛇が一瞬呑まれ体が怯む、その一瞬を山田ネズミは見逃さなかった。
「なめるな! このクソ蛇がーー! 窮鼠、蛇を咬むじゃーーーー!!」
雄たけびと共に山田ネズミは突進する左右に飛びながら蛇の狙いを定めさせない。 蛇が迷っているその隙に、山田ネズミの決死の一撃が蛇の喉元に決まる。 大声を上げて暴れる蛇、だが山田ネズミは決して放さない。 放せば負け、負けて食われる、本能でそれが分かっていた。 蛇も暴れた、暴れて暴れて近くの岩にぶつかった。 その時山田ネズミは蛇と岩に挟まれて口を放してしまった。
(やばい、食われる)
山田ネズミはそう思って体制を整えようとした。 が蛇は喉元をけがして戦意を無くし急いでその場から逃げ出していた。 その姿を見た山田ネズミは全身から力が抜けその場に伏した。
「た、助かった。 へへ」
その山田ネズミの周りから似たようなネズミがたくさん出てきた。 そして山田ネズミを取り囲む。 山田ネズミが戸惑っていると。
「お前、すげえぇぇぇぇ!」
「あの蛇を追っ払うなんてすごーい!」
「すてき、すてき」
口々に山田ネズミを褒め称えた。 その歓声に山田ネズミは気おされ更に先ほどの命のやり取りの疲労から気を失った。
「お、おい。 しっかりしろ」
「大丈夫?」
「大変だ、急いで巣穴に運ぼう」
ネズミたちは口々に山田ネズミを気遣い傷つけぬようにそっと運んでいく。 やがて巣穴に辿り着き山田ネズミを奥へと運びそっと寝かせた。
山田ネズミは空腹に目を覚ます。 が目を覚ましたそこは、洞窟の様だった。 壁の一部が淡く光照明の役目を果たしている。 戸惑っていると。
「あっ目を覚ましたのね。 体大丈夫?」
そこへメスのネズミが入ってきた。 山田ネズミより少し小振りのネズミだった。 ネズミの本能なのか、山田ネズミにはとても可愛く見えた。 見惚れていると。
「どうしたの? 呆けっとして?」
「いや、すみません。 あのここは?」
「ここは、私たち山ネズミの巣よ。 貴方この辺りじゃ見ないわね、他所から来たの?」
「えっと……まあ他所って言えばそうですね」
「その辺りは追々聞かせてね。 さあ、お腹空いてるでしょ。 こっちよ」
メスネズミはそう言って山田ネズミを誘う。 空腹だった山田ネズミは大人しくついて行く事にした。 ついて行くと木の実が大量に貯蔵してある場所に出た。 メスネズミが前足を器用に使い渡してきた。
「どうぞ、遠慮せず食べて」
「ありがとう……頂きます」
山田ネズミは恐る恐る一口食べると空腹が刺激されたか夢中になって食べた。
「よっぽどお腹が空いていたのね、その状態であの蛇を追い払うなんて貴方すごいのね」
「いや……む、むが、夢中でよく、覚えて、ないや」
ようやく空腹を満たし一息ついた山田ネズミは、改めてメスネズミに礼を言う。
「ありがとう、助かったよ」
「お礼を言うのは私たちの方よ。 あの蛇は私たちの天敵で今まで多くの仲間が餌食になっていたの。 それを貴方はたった一匹で追い返したのよ」
メスネズミは嬉々として話す。 山田ネズミは生き残る為にやった事だったが、こうして自分の起こした結果に喜ぶ相手がいる事に不思議と心が満ちていた。
(さっきまでネズミでどうしようかって悩んでたけど、何かどうでも良くなってきたな)
「ねえ聞いてる?」
「えっ……ごめん考え事してた」
「もうっ、まあ良いわ。 じゃあこっちに来て巣の長に会わせるわ」
「長?」
「ええ、貴方の事を聞いてお礼を言いたいそうよ」
メスネズミは先に歩き出す。 その後ろ姿の見ながら山田ネズミは思った。
(どんな生き物でも関係ない。 要はどう生きるかだ。 なら精一杯生きてやるさ)
山田ネズミはそう決意しメスネズミの後をついて行った。
完
最初は蛇にパクッといかれる予定だったのですが、生き残ったのでこれからは仲間と強く生きて行く事でしょう。 拙い文をここまで読んで頂き有難う御座いました。