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勧善懲悪?

ご無沙汰しております。

どうぞご覧下さい。

 夕暮れ、西日が射し込む教室。 人の影はない、それ処か永く使われた形跡がなかった。 うっすら埃が溜まった教室に足音が近付いて来る、徐々に大きくなる足音、そして教室の前で止まった。 一時の間があり扉がガラガラと音を立て開いた。


「聞いてた以上に汚い所ね、……差出人は……まだね」


 教室に入って来たのは女生徒だった。 少し赤みの掛かった髪をポニーテールで纏め、少し目尻の上がった目は強い光の様な物を宿していた。


 その手には紙切れが握られており、そこには……。

“お前の秘密を知っている。 世間に知られたく無いなら、明日の放課後、旧校舎奥の教室に来い”


 それは脅迫文だった。 彼女の秘密とは何なのか? 脅迫者は何者か? 何れここにやって来るだろう。


 十分程経った時、足音が近付いて来る。 やがて扉がゆっくりと数㎝開いて誰かが覗き込んでいた。 女生徒が居るのを確認すると、更に扉を開けて入って来た。


「あら、誰かと思えばB君でしたの。 こんな脅迫文を私の机に入れたのは」

「……や、やあ……A子さん。 は、話すのは初めてだね」

「ええ、そうね」


 入って来た男子生徒はクラスで一番影の薄い生徒のBだった。 片やクラスの中心、いや学年の中心と言っていい女生徒A子に脅迫文まで送って何の用があるのか。


「そ・れ・で、私の秘密って何かしら?」


 A子は手に持った脅迫文をヒラヒラとなびかせる。 


「……ぼ、僕は見たんだ。 二日前の夜、君が世間で噂の滅殺ガールに変身している所を」


 Bがおずおずと話した内容にA子の眉が一瞬動いた。 対してBは下から見上げる様な姿勢で口元をいやらしく歪ませていた。


「そう……それでその話が本当だとして、証拠はあるの?」


 A子が問い詰めるとBはズボンのポケットからスマホを取り出した。 そしておもむろに操作し出すと画面をA子に突き付けた。


 そこには、不思議な服装の女性らしき人物が映っており、その人物が突如光るとそこにはA子が立っていると言う内容の動画だった。 


「……そう…………それで、私にどうしろと?」

「へへ……ぼ、僕の言う事を聞くんだ。 絶対服従だぞ」

「……まあこわい、私を脅迫するのね」

「そうだ、君は僕の物だ、ひひっ。 えっと先ずは……ふっ服だ、服を脱ぐんだ」


 あからさまな要求を聞いたA子は思わず溜め息を吐いた。 対してBはスマホのカメラをA子に向けて脱衣する所から撮影しようとしていた。


「どっどうした、はっ早くしろ」

「そんなに見たいの? 私のからだ」


 体を撫でる様に両手を動かすA子に、鼻息を荒くして喉を鳴らすB。 そんなBを見てフッと笑い胸元からペンダントの様な物を取り出したA子。 そしてそれをボタンの様に押して呟いた。


“ドレスチェンジ滅殺”


 その言葉の瞬間ペンダントから赤い光が輝きA子を包んだ。


「なっなっ何だ?」


 BはA子のした事に狼狽えて何も出来ずに立ち尽くした。 一方A子を包んだ赤い光りの中は、シルエット状態のA子が学生離れしたプロポーションを見せその体に赤い布状の物が服を着せるかの様に纏わり付いていた。


“悪を滅する赤き焔”

“悪人滅殺、滅殺レッドここに見参”


 A子の言葉と共に光りは消え、そこに居たのはA子で在ってA子でない、変身を遂げた滅殺レッドが立っていた。 何処ぞの美少女戦士に似た赤を基調にした格好の滅殺レッドを見て我に返ったBは、嬉々としてカメラで撮り始めた。


「すっすげ! 凄すぎる!」

「あの時B君が見たのはこの姿よね」

「ああ、そうだ。 ……でも何で今変身したんだ? ぼっ僕は脱げって言ったのに」

「そうね、でもその前に……」


 滅殺レッドが手を上にすると、手のひらから光る玉が出てきてそれが一瞬の内に拡がった。 瞬く間に教室より大きくなると、逆に一瞬で小さくなり消えてしまった。 そして光りの玉が消えた後には教室に誰も居なくなっていた。



「うわっ!」


 突然光りの玉が拡がった為Bは咄嗟に目を閉じた。 数秒たち恐る恐る目を開けると、何も変わって等ないように思えたが、よくよく見ると自分と滅殺レッド以外は薄いフィルターのが掛かっている様だった。


「な、何だ? どうなってるんだ?」

「ようこそ、私の滅殺空間へ」

「滅殺空間?」

「そう、ここは私が創った空間。 私達滅殺ガールが悪人を滅殺する時に用いる空間よ。 外部の干渉を完全に遮断した場所、外から入る事はおろか見る事も聞く事も出来ない場所。 わざわざこの空間に君を招待した理由は分かる? B君」

「えっ⁉ えっと……」


 突然話を振られて戸惑いながら考えるB、少し考えて自信ありげに答えるB。


「分かった、僕以外に見られるのを防ぐ為だ」

「どういう意味かしら?」

「あのまま教室で脱いだりしてたら、見廻りの教師に見つかる可能性があるし、他の生徒が偶然来る事もあるしね、正解だろ?」


 いわゆるどや顔で答えるB、その顔を見て呆れて首を振る滅殺レッド。 そして右手をBに向ける。


「正解は、これよ」


 言うやいなや右手から焔が吹き出し一直線に伸びて、Bのスマホを持っていた右手ごと貫いた。


「えっ⁉ ……あ、あ、あぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 全く想像して居なかった出来事にBの反応が一瞬遅れた、そして後から来る激痛に叫び声をあげた。


「中々良い声ね、品は無いけど」


 滅殺レッドが右手を握ると焔が散り剣が表れた。 細身の剣だが絢爛な装飾が施されている。 そして2m程の刀身がBのスマホと手を貫き壁にまで突き刺さっている。


「どう? 私の愛剣スルトの味は?」

「痛い痛い痛い、やめてやめてやめて」


 Bは泣きながら喚いている。 そんなBを見て微笑み唇をなめる滅殺レッド。


「まだまだ、お楽しみはこれからよ」


 言って右手を握り込むと刀身に焔が迸り、Bの右手とスマホが焔に包まれた。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!」


 焔がBの右手とスマホを焼き付くす。 スマホは跡形もなく焼け落ち、右手は炭と化していく。 余りの痛みと熱さで仰け反ったB、すると炭化した右手が手首から千切れてしまう。


「僕の手がぁぁぁぁぁぁ!!!」

「あら、ちぎれちゃったわね」


 と、軽く言いながら刀身を壁から引き抜いた滅殺レッド、すると2m程あった刀身が60cm位に短くなった。 それを軽々扱いながら、Bに言い放つ。


「さあ、もっと泣き喚いて私を感じさせて」

「ひぃぃぃぃぃぃ!!!」



 この日を境にBの姿を見たものはいない。 警察等の捜索も手掛かりすら見付からず、無駄に終わった。



 そして今日も人知れず、悪を滅する為滅殺ガールはひた走る。



本当はズダボロにしてとどめの場面まで書くつもりだったのですが、考えてて鬱陶しいかなと思い簡単にしました。 あの後は皆様の自由な想像にお任せします。

ここまで読んで頂き有難うございました。

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