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異世界ですから

 それは深夜の事だった。 仕事帰りか、重い足取りの男がいる。 業績悪化の為、2ヶ月休み無しで体が悲鳴をあげていた。 だがようやく休みの機会が訪れ男は安堵していた。


「ようやく休めるな。早く帰って風呂入って寝よう」


 そう呟くと男は気力を振り絞り歩く速度を速める。 やがて前方ににアパートが見えてくる。


「やれやれ、ここまで疲れるとボロアパートでも宮殿に見えるな」


 男は目線を上げたまま歩いていたため気づかなかった。 足元に夜よりも深い穴が開いていることに。



 そこは夜の森の中だった。 その木々の中、男は倒れている。 それまでの疲れも重なったせいか男は死んだように眠っていた。 数時間後、夜が明け森にも光が届き始める。 降り注ぐ木漏れ日に男は目を覚ました。


「んーなんだ、えらく眩しいな、ん……どこだここ?」


 キョロキョロと辺りを見回す男、見知らぬ森の中にいる事実に思考が停止する。 やがて男は我に返ると状況を確認し始める。


「……えーとまず最後の記憶がアパートの前までか、その後は……んー記憶が曖昧だが足元が抜けたような覚えがあるな……という事は穴に落ちてここにいるって事なのか?」


 男は目頭を押さえて深くため息をついた。


「穴に落ちて怪我ならわかるが森の中って……どっかの小説じゃあるまいし、……とにかくこのままじゃらちが明かないな、人の居る所に行かないと」


 そう呟くと男は落ちていたリュックを背負い、歩き出す。 方角も分からず歩いていると水の流れる音が聞こえてきた。


「この音は川か?」


 男は音のする方へ走り出す。 100mほど走ると目の前に川が見えた。 幅2m程の川に澄んだ水が流れている。 男は川岸に近寄ると水を両手に溜めて飲みだす。


「ぷはー生きかえる、……さて少し休むか」


 男はその場に腰を下ろし改めて自分の置かれている現状を考える。


「……仕事帰りに多分穴に落ちてここにいる、……まさか俗にいう異世界ってやつか? いや流石に安直か?  ……そうだ! 携帯はどうなんだ?」


 男はリュックの中を探して携帯を取り出す。


「……電源入らねー充電切れか?」


 携帯をリュックに戻し仰向けになる。


「仮に異世界だとしても空は青いんだな……小説みたくボンッキュボンの美人のネーチャンとか出ないかねー」


 男は深く息を吸い込みゆっくり吐き出した。


「……さて行くか、このまま川沿いに下れば村か街くらいあるだろ」


 男は立ち上がり川下に向かって歩いていく。 しばらく歩くとふと甘い匂いが漂ってきた。


「おっいい匂いがする。まるでリンゴみたいな匂いだな、近くに木があるのか? 起きてから何も食べてないし、よし行ってみるか」


 男は匂いを頼りに川から離れ森へと入って行く。 森に入り幾分もしないうちに匂いの元が目の前に見えた。 そこにはたくさんの赤い実をつけた木が1本生えていた。


「おお、見た目は正にリンゴだな、……見た目だけじゃない事を祈りたいな」


 男は実を1つ取り少しだけ齧ってみる。 すると口の中に豊かな香りと丁度よい甘さが満ちていく。


「うまっ、味も上等なリンゴだ。 腹減ってるからよけい美味いな」


 男は実を食べ終わるとリュックの中に実を入れ始めた。


「助かったー、これで取り敢えず飢え死には回避できそうだ」


 赤い実でリュックを一杯にすると男は再び川岸に戻り川下へ向かって歩いていく。 しばらくすると前方に橋が見えてきた。


「やった! 橋だ。 という事は道があるな」


 そう言いながら男は走り出す。 息を切らして辿り着くと幅3mほどの石橋だった。


「立派な橋だな……で、道は二手か」


 男は橋のへりに座り左右を眺める。 どちらを眺めても人影はなく村や街らしきものは見えなかった。


「どっちに行くか……それとも誰かが通るのを待った方が良いかな……まっ取り敢えず腹を満たして考えるか」


 男はリュックから赤い実を取り出し食べ始める。 2個食べ3個目を齧ったその時、男の視界が揺れ始めた。


「なっなんだ? 視界が……せっ世界がまわ……ってい……く…………」


 男は気を失いその場に倒れてしまった。



 草原の中大きな1本の道を歩く一団がある。 軽装の鎧を身に着け、腰に剣を帯びる黒髪の男、革の鎧を身に着ける獣人の少女、つば広の帽子を被りローブを羽織る老人、白を基調にし青のラインが入ったワンピースを着る杖を持った金髪の女性の4人である。


「リーダー早く、街行く、おなかすいた」


 少女が男を急かして先を歩く。


「そう急かすなよ、ルル。 ゴマ爺もいるんだこれ以上ペースは上げれない」


 少女を諭すように男は言う。 それを聞いたルルと呼ばれた少女は後ろを振り向いて口を尖らせ3人を待つ。


「ルルちゃんや、すまんの。 これ以上早いと儂の膝がもたんのじゃ」


 老人は膝を擦りつつあやまる。 それに対して少女は文句を言う。


「おなかすいた、早く歩け! じじい!」

「ダメよルルちゃん、老人は労らないと、明日とも知れぬ命なんだから」


 少女をたしなめる女性に老人が反論する。


「明日とも知れぬ命は余計じゃ」

「あら、ごめんあそばせ」


 女性は軽く微笑みながら謝罪する。 それを見ていた男は2度手を鳴らす。


「ほらほら皆、口喧嘩は街に着いてからにしてくれ」


 その言葉に3人とも大人しく歩き出す。 しばらく歩いていると、前方からの匂いにルルの鼻が反応する。


「リーダー、アプルの匂い、前からする」


 ルルは振り向きながら男に告げる。 それを聞いた男は首をかしげ後ろの2人を見る。


「この辺りにアプルの木なんてあったか?」


 そう聞かれ2人は首を振る。


「聞いたことないぞ」

「私もないですね、 行商人かしら? でも収穫の時期はまだ先ですよねぇ?」

「うむ、アプルの収穫は山羊の月に入ってからじゃ。 まだ10日ほど先じゃな」


 女性の言葉に老人が答えリーダーの男も頷く。


「収穫前のアプルはまだ食えないからな。 ……どれ調べてみるか、ルル! どれくらい先かわかるか?」


 少女は距離を測るためより深く匂いを嗅ぐ。


「この先、橋の辺り」


 少女の言葉に男は頷く。


「そんなに離れてないな、 じゃあルル先行して見て来てくれるか?」


「うん、行ってくる」


 そう答えると少女は四つん這いになり足に力を込める。 そして一気に飛び出した。


「ルルちゃーん! 気を付けてねー、危ないと感じたらすぐ逃げるのよー」


 駆けて行く少女に女性が声をかける。 


「よし、俺たちも早く行こう」


 男は言うと歩き出す。 2人もその後に続く。 しばらく歩いていると、少女が戻ってきた。 戻った少女に男は尋ねる。


「ルル、何かあったのか?」

「橋の所、男倒れてた。 アプルの匂いたくさん」

「まあ大変! ルーク急ぎましょう」


 女性に促されて男は頷く。 男は老人に言う。


「緊急だ! 先に行くぞ、ゴマ爺! 後からルルと一緒に追いついて来てくれ」

「やれやれ、しょうがないのぉ」


 老人が頷くと男と女性は橋に向かって走り出した。


「さて、ルルちゃんやわし等も行こうかの」

「うん」


 先行した男と女性は橋へと辿り着き倒れている男を見つけた。


「いた! ラーラ急いで診てやってくれ」

「はい」


 女性は倒れている男のそばに寄ると手首や首の脈を診る。 次に口元へ手を当てて呼吸を確認した。 そして後ろに振り向き首を振る。


「駄目です、すでに亡くなっています」


 女性が沈痛な面持ちで話す。 それを聞いた男は深い溜息を吐いた。


「駄目だったか……で死因はわかるか?」

「少し待って下さい」


 女性は死んだ男の体やその周辺を調べだした。


「はっきりと断定はできませんが、恐らくアプルによる中毒だと思います」


 女性は男の口からアプルの欠片を取り出し、周りに落ちていた芯を示した。 そうしている間に後の2人も追いついてきた。


「どうじゃった、倒れておった男は?」


 老人がリーダーの男に尋ねた。 男は後ろを振り向き首を振った。 


「そうか、気の毒にのう……まさかとは思うが死因はアプルの毒か?」

「ああ、ラーラの診立てではそうみたいだ」

「今時アプルの毒で命を落とす者がいるとは……どこの出身じゃ?」

「分からない、見たこともない服を着ているんだ」


 そう言われて老人は死んだ男の服を確認する。 


「確かに、こんな服は初めて見るの。 材質も普通の布ではないようじゃな」


 老人が服を触り材質の違いに驚いていると、横から物の落ちる音が連続で聞こえてきた。


「「「!!」」」


 驚いて3人が振り向くと少女がリュックを引っくり返し、そこから大量のアプルの実が転がり落ちてきた。


「おー、アプル、いっぱい」

「ルル、お前なぁ……」

「ルルちゃん、他人のカバンを勝手に開けちゃダメよ」

「それにしてもこのアプルの数、この近くに木があるようじゃの……ん、どうしたんじゃ? ルルちゃんや」


 少女はリュックをまじまじと見つめ、匂いを嗅いだりしていた。


「革じゃない、カバン」


 そう言うと少女はリュックを差し出してくる。 それを受け取った老人は材質に驚いていた。


「確かに革ではないの、布の様じゃがとても丈夫にできておるようじゃ。……このギザギザ部分はすごいのぉ、この出っ張りを動かすとカバンを開け閉めできる構造がすごいわい」


 老人はリュックを引っ張りながら色々構造を調べる。 それを見ていたリーダー男が困り顔で言う。


「ゴマ爺、それは後にしてくれ。 先にこの遺体の埋葬をしないと」

「おおっ、すまんのついな」


 老人は苦笑いをしながら謝る。 そして森の外れに埋葬する事にし、遺体を運ぶ男2人。 そして女性が魔法で埋葬のための穴を掘る。


「母なる大地よ、わが声を聞きそのお力をお貸しください」


 言葉を唱え杖の石突を地面に下ろす。 すると地面が盛り上がり、左右に分かれて人の入る程の穴ができた。 そこに男の遺体とリュックに入っていたアプルの実を納めた。 そして女性が穴を閉じようと土を動かした時、少女が何かを投げ入れた。 リーダーの男が少女に尋ねる。


「ルル、今何を入れたんだ?」

「わかんない、カバンに入ってた」

「入っていたという事はこの男の持ち物じゃろうし気にする必要はあるまい」

「んーまあ良いか、じゃあラーラ祈りを頼む」

「はい」


 女性は目を閉じると死者への祈りの言葉を呟く。 他の3人も目を閉じる。


「偉大なる四大と二極の精霊よ、この哀れなる魂に導きを、始まりの地にて安らぎを得られん事を」


 言葉を唱えると女性は指で3回空を切り祈りを終わる。


「はい、終わりました」

「ああ、ありがとうラーラ、さて予定外に時間を使ってしまったし、街へ急ぐか」

「おなかすいた」

「うむ、わしもこのカバンをよく調べたいしの」

「そうですね、行きましょうか」


 そして4人は街へと歩き出した。 



 完







 最後までご覧いただき有難う御座います。 小学生レベルの文章かと思いますが、ご了承下さい。 あと念のために、こんな文章に感想を送る方はいらっしゃらないと思いますが、万が一送っていただいても返信はいたしません。 何分時間がありませんので、ご勘弁下さい。 色々と拙い文章で申し訳ありませんが、これにて失礼を。

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