四十六話 予想外の帰還ですよ?
お待たせしました。
モチベーション自体は割と前からあったのですが、暫く書いていなかったせいか難産でした。
あとめちゃくちゃ書きたい題材を思い付いてしまったのもある。
何にせよ読んでくださる皆様には感謝を。
「ユウナちゃん少しは落ち着いたらどうっすか?」
早々に仕事を終わらせてのんびりしていたミアが、ソワソワと落ち着かないユウナに呆れた目を向ける。
「でも⋯⋯」
「ギルマスなら強いし大丈夫っすよ!」
ミアの励ましに首を振る。
「ううん、そうじゃなくてやり過ぎないかどうか⋯⋯」
「あぁ⋯⋯」
◇◆◇
他愛のない話から数時間後、ウスラハから提供された街外れの屋敷でそれぞれが寛いでいると、鋭敏な耳を備えたミアが何かの音を拾った。
サッと窓の前まで移動し、彼方に目を凝らす。
その様子に、他の面々も窓際に集まる。
「なんかこっちくるっすよ⋯⋯ってギルマス!?」
「あらあら、綺麗な子たちも一緒ね〜」
ユイの言葉の通り、レイアの他に2人ほど知らない人物が空を駆けてくる。
それも、メイドらしき衣装の女性にレイアが抱えられているので、カナタとアルトの表情が露骨に固まる。
2人ほど硬直しているが、そう時を待たずしてこちらへ降り立つだろう。
ミアを先頭に、レイアを出迎えるため街の門を抜けて平野へ向かう。
彼女らは凄まじい速度でこちらへ向かって駆け、ものの数十秒で2kmほどの距離を飛び越え降りてきた。
レイアが助かった、と声を掛けてメイドの腕から抜け出しこちらを向く。
「戻ったぞ。息災だったか?」
「もっちろんっすよ! 大して苦労もしなかったっす!
ギルマスこそどうだったっすか? 新顔が増えてるみたいっすけど。また誑かしたっすかね?」
ミアが浮かべる意地の悪い笑みに、苦笑しながら否定する。
「いいや、主犯が面白そうだったから連れてきた」
主犯という言葉に、あとから追い付き、後ろで事を見守っていたウスラハの部下たちが色めき立つ。
旅団のメンバーたちはレイアのむちゃくちゃな発言に慣れているのか、ため息を付いたりなどしている。
特にユウナなどは頭に手を当てて頭痛を堪えている様子だ。
「兄さん⋯⋯。主犯というのは宣戦布告の?」
「うむ。まだ本格的な戦争が起きる前だったからな。改心の機会を与える意味も込めて連れてきた。
事が始まったあとであればまた対応を変えていたがな」
妹からの問いに対して、笑顔でそう答える。
最後の一言に主犯の当人たちはヒヤリとしていたが。
「さて、色々と説明もしたいところだが。
其方たち、ウスラハ殿を呼んできてくれないか」
どうしたものかと狼狽えていたウスラハの部下たちに声をかけて、さっさと街へ入ろうとする。
しかし門兵たちも話を聞いていたのか、はいどうぞとはいかなかった。
「ちょ、ちょっと待ってください! ゲール様に確認が取れるまでここでお待ちください!」
「む、面倒だがやむを得んか」
流石のレイアにも良識はあるのか、歩みを止めた。
しばらくそのままだったレイアが、ふと旅団の方へと振り向く。
そのニヤリとした顔に、旅団の面々は嫌な予感を抱く。
「しかしただ待つのもなんだ、アレのお披露目と洒落こもうか」
危惧した通り良からぬことを考えていたらしきレイアが、異空間に手を突っ込む。
暫くゴソゴソと掻き回していた手が止まり、引き抜いて中のものを取り出し⋯⋯出して出して出した。
明らかに物理法則を超越して空中から出現したのは、ワゴンカーだった。
それもハイ〇ースである。
ファンタジーの世界に突如現れた現代の異物に、周囲で何事かと見守っていた現地人たちが驚愕の声をあげる。
そしてそれを見せられた当の本人たちは、目を丸くして驚いていた。
「えっ! クランハウス(?)じゃないっすか! 前に出せないって言ってなかったっすか?」
ミアの言う通り、数日前までは異空間内に存在することは知覚出来ても、取り出すことが出来なかった。
「そうだったんだがな、いつの間にか出せるようになっていた。
恐らく神器と同じで、レベルの上限突破が鍵になっていたんだと思う。
まだ取り出せない物もあるから検証はおいおいだな」
「神器? 初耳なんじゃが⋯⋯何か変わったのかのう?」
好々爺然とした笑顔で事を見守っていたハストだが、サラリと出された新情報について触れる。
「む? 言ってなかったか?
私のレベルが300を越えてから神器が真化したんだ。実質的な強化だな」
「進化? 意味合い的には真化?
というかまた兄さん強くなったの?」
「まあそういうことになる。300前後のレベルキャップや、最上位職についても検証したいからな。早くユウナたちにもレベルを上げてもらわねばな」
更に強化されたと聞き、思わずジト目になった妹より向けられる視線から顔を背けて話題の転換を図る。
「さて、それよりもクランハウスだ。これが使えるのは大きいぞ」
「明らかにオーバーテクノロジーだけどいいのかな⋯⋯」
「なぁに、構わんだろう。使えるものは使う、それが私のモットーだ」
実際ユウナの懸念も分からないではないのだ。
ただこれからやろうとしていることを考えると、クランハウスの影響は馬鹿にできない。
その話もしたいところだが、長くなるのでウスラハも交えた方がいいだろうと判断して、今はクランハウスをしまう。
と、そこでレイアがあることに気付く。
「ところでリグルはどうした? 姿が見えんが」
そう、集まったメンバーの中にリグルがいないのだ。
「えぇ、今更っすか? まだ戻ってきてないだけっす」
「なに? 私が最後だと思っていたが」
戦闘自体はあまり時間がかからなかったとはいえ、流石に国を跨ぐというのはレイアのスペックを持ってしてもそこそこの時間を要してしまったのだ。
だからこそレイア自身も最後に戻ってくることになると予想していたのだが、意外なことにまだリグルが帰ってきていないようだ。
「ヘマをしていなければいいが⋯⋯。
───いや、その心配はなさそうだ」
その言葉に、カナタを除く全員が首を傾げる。
流石のカナタはしっかりと気付いているようで、特に疑問に思った様子はない。
「ほれ、南東1km先辺りにリグルの気配がある。流石にアサシンだけあってかなり察知しにくいがな」
「いやいや! 1kmは無理っすよ!」
「そうじゃのう。それも相手がアサシンではちと厳しいかの」
軽々と言ってのけるレイアに、ミアとハストが抗議をする。
他の面々も同じ意見のようで、頷いている。
ただ中には感知できた者もいたようで、ユイなどは「あら、ほんとね」等と呟いていた。
「だがこれは⋯⋯くくく、面白いことになりそうだ」
続くレイアの言葉の意味は分からなかったが、どうせ碌でもないことだろうと聞き返すことはしなかった。
そしてそれはリグルの姿を見て氷解した。
暫くその場で待ち、リグルが見えてきたところで、一行がそれに気付く。
リグルの背後、紐で引き摺られるようにして布団が運ばれていたのだ。
睡魔に襲われながら書いたので、後で改稿するやもしれない。
あとマガジンで連載が始まった某作品に私が登場してます。一生自慢できます。




