二十九話 変わらない風景ですよ?
場所は変わってウスラハ邸。
レイア達は今後についての話し合いを始めていた。
「それで、お前達はこれからどうするんだ?」
まずは、とソファに腰を落ち着けたレイアが勇者組に訊ねる。
「それがね、私達お兄ちゃんを探すのと交換条件に依頼を引き受けちゃったんだよね」
その問いにユウナが答える。
依頼された内容やこの国の情勢、魔族勢力のことなどを伝えると、レイアは思案を始める。
本音を言えばユウナ達はレイアの力も借りて、依頼をすぐに終わらせたいところであった。
しかし、こちらの都合でリーダーを振り回すわけにもいかない。その葛藤があり、付いてきてくれとは言い出せなかった。
そうすること暫く。
「よし。お前らに課題を与える」
唐突にレイアが声を発する。
呆けた顔をする面々。
「なに、難しい事じゃない。
ちょっとソロでダンジョンに潜ってきてもらうだけだ。簡単だろ?」
「い、いやちょっと待ってください。そうしたら依頼はどうするんスか? いくらすぐ見つかったとはいえ、流石に約束を反故にするのは───」
「落ち着け落ち着け。別に守らないとは言っていないだろ?」
その言葉に勇者達は首を傾げる。
「それじゃあ依頼はどうするんですか?」
フィリアが皆の心を代弁して質問をした。
その質問を待っていたとばかりに、にっこりと笑顔を浮かべるレイア。
勇者達は直感で悟る。また突飛なことを考えていると。
「お前らが修行している間に、私が1人でそのロードなんとかって国と魔族達を蹴散らしてこよう」
絶句する勇者達。
リィルは慣れてしまったのか、或いは諦めたのか、少し肩を揺らす程度で特に反応した様子はない。
勇者達の反応を見て満足気に頷くレイアに、リグルが食ってかかる。
「ちょ、本気っスか!? いくらギルマスが強いったって、相手は一国と一種族っスよ!?
流石に無茶っス!」
他の勇者達もウンウンと同意している。
それでもレイアは平然として、「自由に動かせないゲーム内でも一国程度どうにか出来たんだ。ここで出来ない道理がない」と宣う。
そこまで自信たっぷりに言われれば、レイアのことを知っている彼らは何も言い返せなくなる。
「まあ依頼に関しては私に任せておけ。
それよりお前達の修行するダンジョンについてだ。この数日の間で調べたんだがな、どうやらこの大陸には面白いダンジョンがあるようだ。それもお誂え向きに9つな。
お前達はそこに行って最下層まで踏破してきてもらうぞ。ただ少しばかりお前達は強すぎるからな、制限はつけさせてもらうぞ」
レイアの言うことは絶対である。
最早勇者達は諦めムードで話を聞いていた。
と、そこに待ったの声がかかる。
「レイア様、私はいったいどうすれば?」
最近めっきり影の薄くなったリィルである。
「リィルはまず基礎作りだな。ぶっちゃけた話、この中で断トツに弱いからな。軽めのダンジョンにでも潜って技を磨け。お前には動ける盾役になってもらうぞ。
それとどうせだ、後でユイさんにステータスでも見てもらえ」
レイアはちゃんとリィルのことも考えてあったのか、特に返事に詰まることはなかった。
それでリィルは納得し、先の戦闘を見たためか、弱いという言葉にも反論することはなかった。
「それじゃあ私はあのハゲの説得でもしてこよう。各々ダンジョンに潜る準備はしておけ。制限は直前で伝えよう」
そう言うなり、レイアは広間を出ていく。
残された面々は、相変わらずのレイアの傍若無人っぷりに苦笑しつつも、目には静かな闘志が宿っていた。




