二十四話 強くなったんですよ?
「ふむ。だいぶマシになったんじゃないか?」
レイアが入れ違いになった旨をテスタに伝えてから3週間。
勇者達はみっちりと扱かれていた。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯。当たり前っスよ⋯⋯。
俺なんかレベルが上がったス」
「ぜぇ⋯⋯え? 本当だ⋯⋯! スキルレベルも上がってる!」
そう、ゲームと同じで経験を積めば積むだけ技術が伴って上がっていくのだ。
「まさかギルマス、これを狙ってたのか?」
ハストの問いに、「うむ」と神妙な顔で頷くレイア。
いつもなら「流石っす!」とどこからか聞こえるのだが、残念ながら今回ばかりはミアも、レイアを立てる程の元気はないようだ。
「実はな、この前私とお前達で試合をしただろう?
あの後にステータスを見たらレベルが上がっていてな。
どうやらこの世界では実戦でなくともレベルは上がるようだから、お前達にはレベルアップも兼ねて基礎の訓練ばかりをやらせていたのだ」
「それはわかりましたけど、ギルマスってレベル300でカンストしてませんでしたっけ?」
フィリアの言う通り、ゲーム内では基本的にレベルマックスは299、カンストした際にその職業で受注出来るようになる特殊な職業依頼をこなすとレベルの上限が300になり、クリアした職業系列の最上位職に就くことができる。
レイアがその例で、元は拳術士という下位職だった。
そこから派生して中位職の拳闘士、上位職の拳鬼と続き、拳技職専用特殊クエストをクリアして最上位の拳聖となる。
下位職が0〜99、中位職が100〜199、上位職が200〜299、最上位職が300といったシステムだ。
ちなみにレイアのサブ職業である魔術師は下位職だ。
とまあ、このようにゲーム内での最大レベルは300だった筈なのだが、何故か今のレイアは301レベルになっている。
本人はゲームじゃなくなったから上限もなくなった。と納得しているが、それならそもそもこのステータスはなんなのだ、と問い質したい。
尤も、異世界にきてどこか浮ついている勇者達に、そんなことを考える余裕はないのだが。
「そのはずなんだがな⋯⋯。まあ折角上げられるようになったんだ。上げておくに越したことはないだろう」
ご覧の通りである。
「は〜⋯⋯、流石レベリング狂っスね⋯⋯。
これ以上強くならないで下さいよ。いつまで経っても追いつけないじゃないっスか」
「吐かせ。この短期間でかなり動きが洗練されているぞ。元から闇に紛れる才能があったんじゃないか?」
「⋯⋯そんな才能嬉しくないっス。
そんなことよりユウナちゃん達はまだ到着しないんスか?」
「ユウナ達ならさっき着いたそうだぞ」
「え?」
噂をすればなんとやら、訓練所の扉が開き、何かがレイアの懐へ飛び込んだ。




