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自重しない魔拳士さんは旅をする  作者: Liberty
第三章 国と勇者と魔王
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二十三話 訓練するんですよ?

「ふーむ、やっぱりユウナ達は私を探しに行ったのか」


 ウスラハが居ないことを良いことに、どっかりとソファに腰掛けるレイアが唸る。


「そうっスよ。テスタにいるって情報があったから彼女達を送り出したのに⋯⋯。

 というか本当になんでこっち来たんスか」


 同じく対面に座ったリグルがぶつくさと呟く。

 それを耳聡く聞き取ったレイアが、黒い笑みを浮かべながら弁解する。


「なんで、とはまた御挨拶だな。勿論、可愛い後輩に稽古をつけてやろうかと駆けつけてやったんだ」


「本音は?」


「地球で生温い生活に浸っていた同郷をこってり絞ってやろうかと」


「やっぱりそんなしょうもない理由じゃないスか! 全く⋯⋯」


「実際舐めてかかってきたんだ。いい薬になっただろう?」


 尤もである為、リグルとその他のメンバーは反論出来ず言葉に詰まる。


「で、でも! トップランカーだった私達がギルマス以外に苦戦するとは思えないんですけど⋯⋯」


 それでも果敢に口を開くのは、メンバーの支援担当、フィリアである。


「確かに手こずる相手なんぞ滅多にいないだろう。でもだからといって、実力も把握してない相手を最初から格下と侮るなんて初心者でもしないぞ?」


「うっ、それは⋯⋯」


「特にこの世界は地球と比べて遥かに多く危険が溢れているんだ。油断して愚かしい選択をするなよ?」


「そういうギルマスはこちらにきてどれくらいなんだ?」


 これまでずっと寡黙を保っていた、最年長のハストが質問を返す。


「1ヵ月半くらいだな!」


「大して経ってないじゃないスか! てっきり地球とここの時間軸がズレてて何年もいるのかと⋯⋯」


「そんなわけないだろ。私だって色々試したが、知らないことの方が多い」


「そんな状態で説教してたんスか⋯⋯。

 あれ? それじゃあなんであんなに戦い慣れしてたんスか?」


「ん? そんなものは元から持っていた技術に決まってるだろ」


「流石ギルマスっす!」


 すかさずレイアを褒めるのは、リグルと口調が被っているミアだ。

 何でもこなす新を敬っている女子大生だ。

 尤も、新の前では猫も被っているのだが。

 いつも新を立てているが、大学では常にリーダー的な存在であり、口調も普通なのだ。


「なんでも出来るとは思って思ってましたが、まさか格闘技にまで精通しているとは⋯⋯」


 フィリアの言葉にみんなが頷く。


「あぁ、そのことか。

 親が死んでユウナを護れる人が私しかいなくなったからな。必死で色々な技術を学んだよ」


「相変わらずギルマスは過保護っスね。

 どんなのやってたんスか?」


「そうだなぁ⋯⋯。柔道に合気道、空手、截拳道や古武道なんかもやってたな。一応それぞれ師範代までは修めたぞ」


「他にも幾つかやってたけど忘れた」と(のたま)うレイアに男性陣が頬をピクピクと痙攣させる。

 実際それだけの数をたった7年で全て修めているのだ。

 免許皆伝とまではいかなくとも、生半可な修練者では相手が務まらない程には極めてしまっている。

 加えて意図せずとも手に入れてしまった身体(最終兵器)

 同じトッププレイヤーとはいえ、萎縮してしまうのも無理はないだろう。

 尤も、女性陣はいまいち凄さが伝わっていないのか、「へー、すごいですね」と暢気なことを言っている。


「ところでその『私』ってのは、いつものロールプレイっスか?」


「ん? あぁそうだよ。この姿で『俺』って言うのも違和感あるだろ?

 それにせっかく本当のロールプレイが出来るんだ。なりきらなきゃ楽しさも減るってもんだ」


「そのわりに意地の悪い性格は治ってないみたいなんスけど⋯⋯」


「そんなことよりユウナ達はどうするんだ?」


「今誤魔化したっスよね。まあいいスけど。

 そりゃもう呼び戻すしかないっスよ。幸いギルドに登録はしたみたいなんで、ギルド経由で連絡は取れるっス」


「そうか、それならユウナ達が帰ってくるまでお前達は特訓だな。アイツらと試合をしてもらおう」


 その言葉に不満気な声が一斉にあがる。

 それを見たレイアは、ヤレヤレと首を振って苦言を呈する。


「何言ってるんだ。大体お前達の今の戦闘能力じゃオールラウンダーのカナタ1人にも敵わないだろ」


 図星なのか、唸り声を洩らすメンバー達。

 そう、カナタもレイアと同じような少し⋯⋯かなりぶっ飛んだ装備を手に入れているのだ。


「そ、それならカナタさんもこちらに来たばかりで戦闘慣れしてないですよね?」


 フィリアの言葉にレイアは「いや」と続ける。


「アイツは大人しそうな見た目とは裏腹に運動神経かなりいいんだぞ? スポーツもやっていたらしいしな」


「ま、マジっスか⋯⋯。そ、それでも流石に1対7じゃカナタさんでもキツいと思うんスけど」


「馬鹿め。あの装備があるカナタの方が強いに決まっているだろう。それに向こうにはユウナがいるんだぞ?

 トッププレイヤー手前と言っても、ユウナには剣道と居合術を習わせていたからなぁ。

 2対7じゃ勝負にもならないんじゃないか?」


 実際レイアの言う通りだ。

 経験者とそうでない者の差は顕著に現れる。

 こと戦いに関しては特に、だ。


 それを聞いてもなかなかやる気が出ず、ソファから立ち上がらないメンバー達を見て、レイアが一言付け足す。


「ちなみに負けたら訓練の量を倍にするぞ?」


 一斉に立ち上がった。

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