二十一話 それは必然ですよ?
あくる日の朝。
王国に残っていた勇者達は、ギルドに併設されている訓練所に呼び出されていた。
彼らは、自分達が残されていったことに不満を持っていない。
むしろ、気にしないで会いに行ってこい。と背中を押したくらいだ。
しかしそれとこれとは別である。
圧倒的な力を持っている彼らからしたら、格下から戦闘に関しての云々を教わるなど不毛だと思っているのだろう。
特にリグルやアルトなどの態度は顕著であった。
「こんな朝からなんなんスか、これ」
「見た感じ戦闘訓練だろ? なんでアタシ達より弱いやつから教わらなきゃいけないんだ?」
「聞いた話だと、指導してくれる人Bランクの冒険者らしいっすよ。
なんでも、SランクもAランクも今は出張ってて忙しいとかなんとか」
「はぁ? Bランクだぁ? そんなやつに教わることなんかあんのか?」
「まぁまぁ、実践を積んだ人の教鞭は大事なのよ〜?」
と、まあ少し図に乗っているのだ。
アルトなどはなまじ喧嘩で多少は戦闘行為というものを齧っていたので余計にだった。
訓練中に叩きのめしてやろうとでも思っているのかもしれない。
「お? 来たかな?」
その時、ミアが訓練所に近付いてくる気配を感知した。
予想通りドアが開き、フードを深く被った少女が入ってくる。
呆けた顔をしている彼らは、微かに見える少女の口元が弧を描いていることに気付いていなかった。
「おいまさか、君が指導役の冒険者かね?」
最年長のハストがみんなの気持ちを代弁して口を開く。
少女の返答は「もちろん」だった。
途端にアルトとリグルが騒ぎ出す。
目の前にいるのは幾何もいかぬ少女なのだ。
そんな少女に戦闘能力が劣るとは思えない。
2人が文句を言うのも仕方の無いことなのかもしれない。
そんな彼らに、少女はただ一言。
「まずはどの程度か確かめてやる。全員一斉にかかってこい」




