二十話 もうすぐですよ?
「勇者の内? 勇者というのは複数人いるのか?
いやそれよりも入れ違いとはどういうことだ?」
折角勇者の為にここまで来たのに、肝心の勇者がいないとなると本末転倒だ。
「いやそれがな、勇者達を召喚したら9人も出てきたんだ。
これは好都合、ライトアムの矛になって貰おうと願い出たら、交換条件として人探しを頼まれたんだ。
それくらいなら、と条件を呑んだ矢先に探し人が見つかったらしくてな。
口約束とて一度結んだ契約。反故には出来ないと7人に残ってもらって、後の2人は探し人に会いに出向いちまったのさ」
それはなんともまぁ⋯⋯。
予想通りだとすると異世界人というのは日本人で間違いないのだろうが⋯⋯、争いのない日本から来た直後で外に出てまともに戦えるのだろうか?
「おっと」
「なんだい? 急に身体を反らして」
「いや何か飛んできたような気がして」
「? そうかい」
「それよりその勇者ってのは異世界から来たんだろう? 何故この世界に探し人がいるんだ?」
「さあね。なんでも、元の世界で親族が行方不明になってたらしくてね。
ダメ元での人探しだったんだろうけど、そこへ探し人の特徴に重なる人が耳に入ったんだろうね。すっ飛んで行っちまったよ」
「そうか⋯⋯。見つかるといいな」
しかし見つかる可能性は低いだろうな。とレイアは思う。
可能性もなにも、その探し人は自身のことなのだが、レイアは気付いていない。
とりあえず残った7人と顔合わせをしようとのことで、翌日また来て欲しいと言われた。
断る理由もない。了承してロビーへ戻る。当然、リィル同伴の許可は取った。
レイアが2階から降りてくると、ロビーにいた冒険者達の視線が一斉に向く。
怪訝に思いながらも、気にすることなくリィルの方へ歩む。
「明日顔合わせをするそうだ。今日は宿で休もうか。
ところで、何故私はこんなに注目を浴びているんだ?」
「まだうら若いレイア様に、ギルドマスターが直々にお会いになられたからかと」
「ふむ? そういうものなのか」
首を傾げながらも、安宿に入っていく。
貧乏性はBランクになっても治らないようだ。
安宿でもベッドさえ整っていればいい。レイアはまだ見ぬ勇者達へ思いを馳せながら眠った。




