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自重しない魔拳士さんは旅をする  作者: Liberty
第三章 国と勇者と魔王
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十七話 邂逅の時は近いですよ?

「それじゃあ世話になったな」


「本当に行っちゃうんですか⋯⋯?」


 レイアの言葉に猫耳の少女──ミルアが悲しそうな顔をする。

 その顔を見ていると、とても罪悪感に襲われるが、ここまできて「やっぱりやめた」などと宣えば白い目で見られることは必至だろう。

 感情を押し殺して別れを告げる。


「そんな顔をするな。もう二度と会えなくなるというわけじゃないんだ」


「そう⋯⋯ですよね。絶対また会いに来てくださいね?」


 その一言で納得はしたのか、不満気な顔だがもう止める気はないようだ。

 勿論、と頷いたレイアは、リィルを伴いギルドを後にする。

 後ろ髪を引くものがないと言えば嘘になるが、別の街へ目的が出来てしまったのだ。

 レイアは数日前の出来事を思い出す───。



◇◆◇



「何もされてないか?」


「はい、大丈夫です」


 レイアは拘束を解きながらリィルに訊ねる。

 どうやらこの手枷が魔道具だったようで、対象の魔法を封じるというもののようだった。

 魔術師であるリィルにとってこれほど有効なものはないだろう。


 リィルを解放し終えたレイアは、他の捕まっている女性達へ近付いていく。

 4人いる女性達は皆意識を失っているが、今の状況だと好都合と言えるだろう。

 レイアの暴れた跡はかなりショッキングすぎる。本人の服も血塗れだ。

 流石にこんな様相を精神的に参っている彼女達には見せられない。


 起こさぬようなるべく衝撃を殺して枷を破壊する。

 元々魔法が不得手なレイアには何の問題もない枷だ。

 次々と女性達を解放していく。

 幸い誰も起きることはなかったので、静かに肩に担いで洞窟を抜け出す。

 少女2人が女性達を担いで街に歩いてくる様はなかなかに壮観だったそうな。


 4人を病院へ預けた後、レイア達は報告の為にギルドへ向かった。

 ギルド内は何かあったのか、いつもより騒然としていたが、今は報告が先だ。

 受付にギルマスを呼ぶように言うと、すぐに執務室へ通された。


 ギルマスへ助けた女性達と盗賊団の状況を説明し、最後に頭目が金髪の門番だったことを伝えると、


「そうか⋯⋯。あいつが」


「知り合いだったのか?」


「あぁ。あいつも元Aランク冒険者でな。怪我で引退した後に門番に就職していたんだ」


 どうやら昔の知り合いだったらしい。

 怪我のせいでだいぶ荒れてしまっていたようだ。

 まあ、同情の余地など一欠片ほどもないのだが。


「思ったよりやる奴でな。逃がしてしまった。

 あの怪我ではあまり遠くへ行けないと思ったのだがな⋯⋯、外にも仲間がいたのやも知れん」


 あの後にマリスが逃げ出した方へ向かったのだが、出口で血痕が途切れていたのだ。

 死体がなかったので上手く逃げ仰せたか、魔物の餌にでもなったのだろう。

 どちらにせよもう二度と表舞台に姿を現すことはない筈だ。


「そうか⋯⋯。マリスについては俺が調べておこう。

 ところでお前さん、勇者とやらに興味はないか?」


「勇者? 何故だ?」


「実はな、近頃ライトアム王国というところで秘密裏に勇者を召喚するらしいんだ。

 それがどうやら異世界から連れてくるらしくてな、過去に異世界からきた勇者というのは、皆争いのない世界から来たと言う。

 勇者の能力を持っているとはいえ、戦闘経験もない一般人をいきなり戦わせるわけにはいかないだろ?

 そこで指導役が必要になってくる。

 本来なら王国の騎士団長かSランク冒険者、それに近いAランク冒険者に頼むんだがな⋯⋯。

 生憎騎士団長は怪我で入院中、冒険者は当てはまる者がいなくてな。

 そこでお前さんだ。

 お前さんのランク自体は低いが、実力はSに匹敵すると見ている。それにある程度の教養があるからな。指南役としてはピッタリだろう。

 どうだ? 報酬金は出るし、王国とパイプも出来て悪い話じゃないと思うんだが」


 うーん、とレイアは考え込む。

 確かに悪い話ではない。むしろ美味しい話だ。

 しかし、指導役と言っても何をすればいいかわからないし、なによりもリィルがいる。

 流石に置いていくわけにもいかない。

 それとは別に1つ気になったことを訊いた。


「過去の勇者について? 俺も詳しいことはよく知らねえが⋯⋯、見た目に統一感はなかった割に故郷はみんな一緒だったらしいぜ。なんでもニホン?とかいう国から来たんだとよ」


 これは予想通り日本人確定だろう。

 もしかしたら元の世界についてわかることがあるかもしれない。

 見た目がバラバラというのが気になったが、それは実際会った時に確かめればいいだろう。

 既にレイアの心には、断るという選択肢はなくなっていた。


「それはいつからだ? 引き受けようじゃないか。ただし、リィルも同伴でだ」

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