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自重しない魔拳士さんは旅をする  作者: Liberty
第二章 テスタ村の冒険者
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番外編

 とある居酒屋の個室──そこで10人の男女が酒を酌み交わしていた。


「第3回ギルド対抗戦優勝を祝して⋯⋯」


「「「かんぱーい!!」」」


 カツンッ!っと子気味のいい音が鳴る。

 集まっている男女の年齢は10代から50代までとバラバラだ。

 しかし、彼らの間に溝はない。

 2年と短い間だが、他の誰よりも信頼出来る関係を築き上げた仲間達なのだ。

 若干1名未成年がおり、手にはアルコールのないジュースを持っているが、一様に楽しんでいるので問題ないだろう。


 彼らは先の言葉通り、あるMMORPG内のギルド対抗戦に於いて、優勝したギルドのメンバー達である。

 一見平凡そうな見た目(顔面偏差値はかなり高い)の彼らだが、最大100人まで加入出来る仕様の中で、僅か10人という小規模にも関わらず、優勝するという偉業を成し遂げた猛者達なのだ。

 尤も、あくまでゲーム内の話なので、実際の彼らは見た目通りただの社会人なのだが。




「いやぁ、それにしてもまた(あらた)さん参加しませんでしたね。いつもの如くレベ上げっスか?」


 飲み食いが一段落ついた頃、口を開いたのは、髪を金に染めたチャラ男───リグルこと礼堂陸(れいどうりく)である。


「ん? あぁ、まぁな」


 陸の隣に座っていた、新と呼ばれた男がジョッキを傾けながら応える。

 そう、正確には10人でなく、9人で優勝したのだ。

 公式の大会とはいえ、貰える賞品はゲーム内の通貨やアイテム。

 それなら、と新は直接は戦闘に参加せず、レベル上げをしながらの応援や、ちょっとした指示を飛ばすだけだった。

 メンバー達も勝てるから、と咎めないのだ。

 しかし、酒も入れば愚痴も出始める。

 新の逆隣から声がかかる。


「んだよ、ギルマスも参加してくれりゃあもっと楽出来んのによ」


 既に酔っ払っているのか、新に愚痴るのは黒髪を後ろで無造作に縛った長身の女性だ。

 彼女の名前は哀川透流(あいかわとおる)。男のような名前だが、れっきとした女だ。尤も性格は喧嘩早く、男勝りなのだが。

 それはアルトというゲーム内のキャラクターを使っていても変わらない。


「ははは、すまんな。まぁいざとなったら参加するからさ。お前らなら全然余裕だろ?」


「チッ。いっそ苦戦してやろうか⋯⋯」


 透流は不貞腐れたように酒を呷る。


「あらあら〜、透流ちゃんは新くんと一緒にやりたいのよね〜」


「ん? そうなのか?」


「あ? んなわけねぇだろ!」


 そんなやり取りに茶々を入れたのは、みんなのお姉さんこと糸編由衣(いとあみゆい)である。

 ゲーム内でユイとして通っている彼女は、三十路と女性陣の中では最年長である為、よくみんなの相談にのっている。

 基本的に穏やかでのほほんとしているが、若干だが言動にサドっ気が見え隠れしており、新は少し苦手としている。


「あらあら〜、透流ちゃんは素直じゃないわね〜」


「うるせぇ!」


 透流の頬が少し赤いのは酔っているだけではないのだろう。

 そうやってガヤガヤと親睦を深めながら夜が更けていく。


 そしてその中から新という存在が消えたのは、それからちょうど1年後のことだった。

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