閑話4 意外とアッサリ
厳かな食事を終えると、一息着いたウスラハが口を開く。
「さて、本題に入る前にまずこの国の状勢を教えようか」
メンバー達は食事で緩んでいた顔を引き締める。
語られた内容はお世辞にもいいとは言えないものだった。
ここ、ネプト大陸にある国は全てロードスレイ王国と同盟国という立場だったのだが、ここのところはまるで隷属国かのような扱いを受けているらしい。
なんでも、代替わりした国王が突如国の方針を変えて独裁をしき、同時期に頭角を現したというSランク冒険者が国王の側仕えとして控えているというのだ。
ロードスレイ王国の指針に従わない国は、Sランク冒険者直々に出向かれて王の首がすげ替わったそうだ。
Sランクというのは伊達でなく、現在ネプト大陸にいるSランク冒険者は3人。
残る2人は協力を仰ごうにも、1人は自由奔放な性格で旅をしており、足取りが掴めない。
もう1人は既に引退した身だという。
そこで異世界の勇者に頼る他なかったとの事だ。
魔王云々以前にこの国の情勢をどうにかしないと、人間同士で殺し合いに発展してしまうかもしれないのだ。
どうにか今の現状を打破して欲しい、と懇願されてしまった。
髪の薄くなった頭をこちらへ下げているウスラハを見て、メンバー達の心は情へ傾いたようだ。
「⋯⋯私達に出来ることなら是非」
「ほ、本当か!? 恩に着る⋯⋯!」
「⋯⋯ただ1つ条件として、兄さん⋯⋯黒髪黒目のアラタという男性を探してくれませんか?」
「ふむ? まあそれくらいならお易い御用だ。別途で報酬も渡そう」
ユウナは同情しつつも本題は忘れていなかった。
今のユウナにとって兄のことは何よりも優先すべきことだ。
かといって闇雲に探すのではどれだけ時間がかかるかわからない。
それならライトアム王国に協力しつつ、国をあげて人探しをしてもらえれば見つけられる可能性も上がり、互いに益が出ると考えた。
お互いwin-winの関係を築けたところで、外回りをしていた私兵が飛び込んできた。
「何事かね? 今は大事な客人と話をしているのだが」
話を中断させられたウスラハは、少し苛立ちを見せて私兵に問いかける。
私兵は謝りつつも報告を続ける。
咎められたにも関わらず、続けるということは、何か緊急の事態が起こったのだろう。
「も、申し訳ございません! 急ぎ耳に入れてもらいたいことがありまして!」
ウスラハはメンバー達に話を続けさせていいかどうかを目で確認する。
肯定の意を受け取ったウスラハは先を促す。
「新王の台頭と同時期に勢力を拡大させていたディアーノ盗賊団が一夜にして壊滅したそうです!」
「なに? Sランク冒険者でも動いたのか?」
「そ、それが⋯⋯冒険者登録したての───レイアと名乗る少女が1人で片付けたそうです⋯⋯!」




