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自重しない魔拳士さんは旅をする  作者: Liberty
第二章 テスタ村の冒険者
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閑話3 見た目に似合わず至れり尽くせりな件

「───馬鹿な! 宮廷魔道士筆頭殿の魔力ですら測れる逸品だぞ!」


 思わずウスラハはそう叫ぶが、水晶球を割った張本人であるユイは少し驚いただけで気にした素振りはない。

 それどころか「あらあら〜、割れちゃったわ」などと言ってのける始末だ。

 現実を直視出来ないのか、残り少ない髪を掻き毟るウスラハを尻目に、ユイは控えている騎士に質問を投げかける。


「なんで割れちゃったのかしら〜?」


「は、はっ! 恐らく魔力量が多すぎて魔道具で測れる限界値を超えてしまい、多大な負荷がかかったのかと」


「つまり〜、私はその宮廷ナントカっていう人より魔力が多いの?」


「そ、その通りであります」


 この王国内で最強と謳われている者より強い存在(あくまで魔力量の話だが)が目の前にいるのだ、騎士達が怯えているのも無理はないだろう。

 アルト、ユイ以外のメンバーは魔力量を測る術がなくなり、手持ち無沙汰になってしまった。


「⋯⋯ステータス」


 ボソッと小さな声でテンプレキーワードを口にするのは、少々のオタク気質だったユニタである。

 よく読んでいたラノベでは、ステータスやオープンなどといったキーワードがよくトリガーとなっていた事を思い出したのだ。

 果たして、予想通り目の前に広がった画面に目を輝かせる。

 それを見たメンバー達も次々「ステータス」と口にしていく。


 何処かSFチックなウィンドウに目を奪われていると、ウスラハが再起したようで何をしているのかと訊ねてくる。

 どうやら彼───彼らにはウィンドウは見えていないようだ。

 試しにステータスと言わせてみるも、誰一人としてウィンドウを出せた者はいなかった。

 やはりゲーム内のキャラクター限定なのだろうか。


 そうなるとこの世界では魔力以外を測る術がないという事だ。

 しかも、最も魔力の低いアルトですら、あくまで平均的というだけで、極端に魔力が少ないというわけではないのだ。

 能力や身体についてを正直に話したところで、人外認定されるか一蹴されるかのどちらかだろう。

 それまでの思考を、アイコンタクトで瞬時に相談し終えたユウナ達は、適当にはぐらかすことに決めた。


 ウスラハ達は納得していないようだったが、これ以上は何も聞き出せないと理解したのだろう、幸いにもそれ以上追及してくることはなかった。決して人外域にいるユイに怯えていたわけではないと信じたい。

 個々の能力が有耶無耶になったところで、ウスラハが話題を変える。


「其方達には今日のところはこの屋敷で休んでもらって、明日詳細を話したいのだが⋯⋯、如何かな?」


 互いに顔を見合わせるメンバー達。

 特に異論はないようで、素直に従うことにする。

 促されるままに部屋を出て、ウスラハの背に着いていく。

 歩きながらこの場所の説明をされた。

 どうやらこの屋敷はウスラハ個人の邸宅のようで、部屋はそこそこ空いているようだ。

 普通は城なんじゃないかと思ったのだが、万が一召喚された者が暴れて王に何かあった場合を危惧していた、と聞いて皆一様に納得するのだった。


 案内された部屋は男女で分かれており、それぞれに一部屋づつ与えられた。

 なかなかに小綺麗な部屋にはベル型の魔道具が置いてあり、それを鳴らすとメイドを呼ぶことが出来るようだ。

 特に男性陣は、メイドを見てかなり興奮していた。

 それを醒めた目で見ている女性陣という構図だ。

 その夜は異世界に来たという一大事があったにも関わらず、皆ぐっすりと眠っていた。

 なんとも豪胆なことである。



 翌朝、メイドに起こされた彼らは、ウスラハが待っているという食堂へ向かう。

 着いた先には、見たこともない豪勢な料理が縦長な机に並べられていた。

 唾を飲み込む音が複数聞こえたのも仕方がないことだろう。

 上座には当然ウスラハが座っており、メイドや護衛らしき騎士達は直立不動で壁際にいる。

 並べられた椅子は9つ。

 日本人としては慣れない感覚に、早くも憂鬱になるメンバー達だった。

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