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自重しない魔拳士さんは旅をする  作者: Liberty
第二章 テスタ村の冒険者
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十話 打ち切りフラグは壊すものですよ?

 再び門の前に着くと、昨日とは違う男が門番をしていた。

 長めの金髪を後ろに束ねている男だ。

 顔は悪くないのだが、レイア達に飛んでくる視線には邪な感情が薄らと見て取れた。

 (女性は視線に敏感だと言うが⋯⋯なるほど、確かに視線に込められた感情がなんとなくだがわかる)と、レイアは改めて自分が女になったのだと実感していた。


 視線が気持ち悪いのだが、如何せん何もされていないので訴えることも出来ない。

 厭な視線を我慢しながら昨日の身分証云々の話を説明していく。

 説明をし終えた時に、一層目つきが愉悦に歪んだのが一瞬だけ見て取れた。

 一悶着ありそうだ、とレイアが身構えようとしたところで、昨日の門番の男が詰所から出てきた。

 その瞬間金髪の男からの視線が霧散した。

 金髪が敬礼しているところを見るとどうやら昨日のこの男は見た目にそぐわず、それなりの役職に付いているらしい。


「ん?嬢ちゃん達じゃないか。身分証を作ってきたのか?」


 相変わらずな口調を隠そうともせずに男が訊いてくる。

 まあ無精髭の生えた冴えないオッサンなので粗野な感じが一番似合っているのだが。


「ああ、そうだ。これでいいか?」


「おう、大丈夫だ。──ほれ。預かってた銀貨だ」


 そう言って銀貨を渡してくるので、チラリと金髪の男を横目で窺ってから受け取る。

 一瞬見えた瞳は未だに厭な光を携えていたが、実際に何かされたわけでもないので文句を言うわけにもいかない。

 無視を極め込んで街の外へ向かう。

 リィルも不穏な気配を感じてはいたようだが、それが何なのかはわかっていないようだった。


(あの金髪⋯⋯なかなかの手練だな。一応気を付けていた方がいいか⋯⋯?)


 そう、リィルは確かに変な性癖を持っているが、その戦闘能力は決して低くないのだ。

 そんなリィルに感情を悟らせないような気配の隠し方をしていた男はなかなかの手練なのだろう。

 しかしだ。レイアはまだ身体の扱いに慣れているわけではないが、流石の化け物スペックである。

 微弱にしか洩れていない感情でも読み取れたようだ。


───パッシブスキル『気配察知』を取得しました。


 唐突に頭の中に響いてきた声に思わず足を止める。

 リィルが何事かと振り返ってくるが、レイアは何も応えない。

 否、応える余裕がなかった。


 レイアは今の台詞を聞いた──見たことがあった。

 それはかつて最も時間を割いたゲームで、この肉体を構築した場所で、だ。

 懐かしい記憶に思いを馳せる。

 何度も見たログと一字一句同じ──正確には『気配察知』などというスキルは存在すらしていなかったのだが──台詞が頭に流れ込んできたのだ。

 レイアに取り繕う余裕を失わせる程の衝撃を与えるには十分なモノだった。少なくとも金髪のことなど頭から綺麗さっぱり消え去る程度には。




 数分経って漸く思考を落ち着けることが出来たレイアは、リィルに何でもないという風に手を振ってから休憩をとる為、手頃な岩に腰をかける。

 休むレイアの手元には半透明のウィンドウが浮かんでいる。



『気配察知』

"自身を中心とした円の中にあるもの全ての動きや感情を読み取る。円の大きさは熟練度に比例する"



 新しく手に入れたスキルの説明は見て、レイアは唸る。

 やはりゲームの中では存在しなかったスキルであり、熟練度というのもゲームにはなく、恐らくだが経験を積めば積むほど効果が上がるのだろう。

 タイミングからして、先ほどのやり取りがトリガーになっているのだと考える。

 どうやらこの世界にはまだ見ぬスキルが溢れているらしい。それも自身の努力で強くなるときた。

 ゲーマー気質なレイアの顔に自然と笑みが浮かぶ。


 誰がスキルを与えているのか。あの響いてきた声は誰なのか。何故この世界にきたのか。


 そんなことはもうどうでもよかった。


 ただ純粋にこの世界を楽しむ。

 レイアは改めて決意を固めた。

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