八話 罪な女(?)ですよ?
ちょこっと説明。
優奈ちゃんが兄に贈った箱は2年前ではなくもっと昔のものであり、当時の中身がオンラインゲームだったわけではないです。今回、たまたま見つけた時に入ってたものがゲームだっただけです。
ですのでゲームを贈った2年前なのに字が幼いというわけではないので、時系列の齟齬はありません。紛らわしくて申し訳ないです。
不埒な手が自らの肩に繋がっていることを確認したレイアは受付嬢に視線を戻す。
「⋯⋯感覚はあるのか。すまないな」
努めて冷静さを装い、謝罪を敢行する。
頷いてはいるので、怒っているわけではないのだろう。
その様子をモノ欲しげに見つめる変態エルフことリィル。
このままでは話が進まないと思ったのか、「ゴホン」と咳払いし、レイアが続きを促す。
それからの話を要約すると、魔物にもそれぞれランクで危険度が別れており基本はF〜SSSに分かれているのだが、稀に生まれる魔王種と呼ばれる存在は最高ランクの災厄級となり、災害扱いになるそうだ。
災厄級ともなるとSランクが強制召集され、国をあげての討伐が始まるとかなんとか。
そして魔物は体内に魔石というものを持っていて、強さに準じて大きさが変わり比例して魔力の保有量も上がるので、強い魔物の魔石であればあるほど値段も釣り上がっていくのだと。
ちなみにハイカ村で戦った竜は青鉱竜と言うらしく、ランクはAとそれなりに強いらしい。
魔物と冒険者のランク基準には差異があり、ランクAの魔物ともなると、Cランクの冒険者が大勢出張るか、Bランクがパーティを組まないと倒せないとのことだ。
ダンジョンというのも存在しているらしく、地面に長年埋まったままの魔石が変形してダンジョンコアとなり、自然からダンジョンを形成していくそうだ。
中はコアから溢れ出る魔力が変質し瘴気となり、多量の瘴気が固まり魔物を造形しているらしい。
外と同じ魔物でもダンジョン産の方が魔力を素にした瘴気から出来ている為、魔石が大きいのだという。
代わりに魔物は瘴気で形成されているので肉体は残らず魔石だけが残るらしい。
魔物の部位などを加工して装備に出来たりもするので、魔石で動かしている魔道具以外にはあまりダンジョンの需要はないようだ。
それでもダンジョンに入る冒険者は多くいるのだと。
曰く、古代魔道具が出た。
曰く、稀少な鉱石を手に入れた。
曰く、ダンジョン産の武器があった。
という眉唾物の噂が飛び交っているらしい。
実際にダンジョンで手に入れたという証拠がないのであくまで噂なのだが、それでも一攫千金を夢見てダンジョンに潜る冒険者が後を絶たないのだという。
等の説明を長々と聞いていたレイアは飽きてきたのか、早く登録手続きに入るよう催促する。
もう少し話したそうにしているお喋りな受付嬢から個人情報を記入する為の紙を渡される。
名前や性別、年齢などから技能や職業のことまで記入欄があった。
何故異世界人であるレイアが現地の文字を読めるのか?
それは書類が日本語で書かれていたからだ。
よくラノベなどにある、知らない字も日本語として理解出来るというわけでもない。
本当にそのまんま日本語で書かれているのだ。
そういえば今まで話している言語も全て日本語だな、とレイアは今更ながらに気付く。
思案に耽っていたレイアだが、今悩んでいても仕方がないと思考を打ち切り、書類に記入をしていく。
勿論日本語でだ。
レイアはまるで履歴書だな、と慣れた手つきで書いていくが、スキルの欄で手が止まる。
多すぎるスキルをどう書こうか⋯⋯。
スキルで悩んでいたレイアに受付嬢が声をかける。
「スキルの欄は未記入でも構いませんよ」
ナイスタイミングだ。
記入をしなくてもいいと聞いたレイアは、面倒という理由で未記入にした。
職業は特に隠すつもりもないので拳聖と記入して提出する。
受付嬢は拳聖という職業を見たことがないのか首を傾げるが、直ぐに興味を失ったのか元の表情に戻る。
隣の様子を窺うと、ちょうどリィルも書き終わったようだ。
チラッと盗み見すると、職業は魔術師、スキル欄には『硬化』と書かれていた。
明らかに魔術師が持つようなスキルではないことにレイアは驚くが、直ぐにリィルだから仕方ないと自分を納得させた。
受付嬢に暫く待つように言われ大人しく待つこと10分、何らかの作業が終わったのか受付嬢が戻ってくる。
手渡されたのは金属で出来た名刺程の大きさのカードだった。
どうやらこのカードは魔道具で生成されており、カードに自身の魔力を通すことで個人の情報を開示出来るようになっているらしい。
最初に通された魔力は記録され、以降は最初と同じ魔力が通されない限り記入されている情報は浮かばないようだ。
よく出来ているな、とひとしきり関心し終えたレイアは、最後に受付嬢へ質問をする。
「貴女の名前を伺ってもいいか?」
まるでナンパの常套句のようだが、本人は至って真剣である。
「失礼しました、最初に伝えるべきでしたね。私はミルアと申します。今後ともよろしくお願いしますね」
「あぁ、よろしく頼むぞ。
さっきはすまなかったな。今度何か奢ろう」
「ミルアさんですね!よろしくお願いします!」
三者三様の受け答えをすると、レイア達は宿を探しにギルドを出ていった。




