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パラレルな現実と幻想  作者: ミツカン
日常変異の次元
2/3

4月 噂

あの声の言う通り、確かに俺はどこにでもいる普通の高校生だ。

けど、高2になった直ぐのあの日から、俺の身にはおかしな現象が起こるようになった。




一学期が始まって約一週間経った頃。

新しいクラスに早くも溶け込む奴が居る。

そんな俺も、どちらかと言えば真ん中に入れる位にはコミュ力はある方だと自負してる。


4月10日



いつもギリギリに登校してる矢朔にとって、この日は珍しく少し早めに登校した。

理由は特になく、強いていてば早く起きれたというだけである。


2-b


矢朔は自分の教室のドアに手を掛けた。

クラスの半数以上は既に来ており、あちこちで何かしら話をしてるようだ。

矢朔の席は扉からほぼ目の前にあり、直ぐに腰掛けようとした。

前の席の男が矢朔に気づいたのか、こちらを振り向いた。


「おー矢朔、おはよー」

「うぃ、はよー」


前の席にいる小柄で短めの黒髪の男、荒垣智也(あらがき ともや)はゆったりと挨拶してきた。

温厚な性格の彼は、2年になって矢朔と席が近い理由で話を良くする相手だった。

「矢朔、今日提出の課題やってきた?」

智也はこちらの席に身を乗り出してそう問いだした。

何となく察する。

「まだやれてなかったのか……」

「まあね、という訳でお願い!ちょっと見せて欲しい!」

両手を目の前でパチンと重ね、頭を下げる仕草。

いわゆるお願い!ポーズを取る智也。

別に良いけどよ……そう言って矢朔は鞄からノートを取り出す。

屈む際にチラッと隣に目をやる。

隣の席は”未だに“カラだった。

「隣の奴、まだ来ないな」

ノートを渡す際、つい思った事を呟く。

矢朔自身昔からの悪い癖だと理解し、それでもつい出てしまう。

「まあ例の人物なんだろうし、拝める機会は無いだろ」

ノートを受け取った智也はサンキューと言うと、自分の机に向き合いノートを広げた。

「例の人物………ね」

矢朔は去年から聞くある噂についてボーッと考え出した。



―矢朔視点―


この学校には一つの謎がある。

……三年間一度も出席せずに卒業する奴が必ず一人居る………

その噂の人物こそ、隣の席の奴だろう。

去年は別クラスだったからさほど気にしなかったが、今年は隣って事で気になってしょうがない。

まあ気になると言ったって、毎日来てるかなー?と確認する位だが。


………なんか恋する乙女みたいだ。そうじゃない、そうじゃないぞ。

気になるからってだけで別に動くつもりは無い。

そんな面倒な事に首を突っ込みたくないだけだ。


そんな事を考えてるとチャイムが教室に鳴り響いた。

その途中、ドアが音を立てて動き出す。


「おーし始まるぞー席につけー」


担任の五十嵐哲(いがらしてつ)が入ってくる。

ザワザワした教室が徐々に静まり、今日1日が始まる………





「よし、じゃあ今日はここまでだ!」


気付けばもう授業は終わり、帰る頃だった。

今日も1日疲れたもんだ……頭がヒリヒリする。

快適な睡眠学習中に本の角で邪魔する不届き者は許されないな。


「あ、宮島ーちょっと話があるからこっち来てくれ」


五十嵐先生がこちらを向いて手招きしている。

その手には勉強《睡眠》の邪魔した憎き保険の教科書を握ってた。


(寝てる事の説教でもされるか?やれやれ)


起こされる際にはクラス内で笑いが出る辺りそこまで先生も気にしていないと思っていた。

いや、気にするのは俺自身の態度か。


「何だよ矢朔、テッチャン哲先生に怒られるのか?」

「かもな」


クラスメイトからのからかいに軽く受け流すと、鞄を持って哲先生の所へ行く。

気になってコッソリ見るクラスメイトの視線が痛い。


「いやーすまんな宮島、今日ってこの後用事あるか?」

「帰宅部の俺に聞いてるんですよね?特には無いです」

「ならちょっと頼み事があるんだ、詳しい事は職員室でな、な!」


背中を2度ほど叩かれる。結構強めで、押されてる並に体が前に行ってしまった。

矢朔は顔をしかめつつこの後の事を考えた。


頼まれ事とは予想外だったが、俺が選ばれたのは授業態度のせい何だろうなと納得させた。

正直面倒だと言い張って辞退したい。

でも用事が無いと言った以上言い訳が浮かばない。

うーん………仕方ない、まず話だけでも聞いてみよう。


「その頼み事って何ですか?」


聞いてくれる事がよほど嬉しかったのか、哲先生は満面の笑みを浮かべてた。

それを見た数人の女子達から、ちょっと照れながらフフッと笑っている。

人気だな……この人。


「ここじゃちょっと話しにくい、ついて来てくれ」


そう言うと哲先生はドアを開けて教室から出ていった。

俺は先生の後を追いかけるように教室を後にした。

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