第11話・魔族の弱点
クリスマスと言う事で、多めに投稿を・・
タイトルに在るとおり、『冬』を舞台とした話ですし。
ゴツゴツした岩場に、ぽっかりと開いた巨大な穴。
ふつう、穴と言うのは中まで光が届きにくい関係で深くなるにつれ、その暗さは増していく。
だがこの穴は違った。
底へ視線を向けていくにつれ、その眩いばかりの光に目がくらみそうになる。
「ここは『焔の』がワシの岩を溶かして作った、地獄へとつながる穴じゃ。」
「地獄へ・・・・」
穴の底に広がる炎の海に、バルドの顔が明々と照らされる。
穴のそこかしこから立ち上る炎により、一部の岩肌が白熱化して溶岩のようになってるのが遠く、ここからでも見える。
それらが主に、光を発しているようだ。
おじいさんの言う『地獄へつながる』は、ただの誇張の説明だ。
だがそこに広がる光景は、まさに『地獄への入り口』と言って差し支えないモノだった。
横にいる『岩使い』のおじいさん曰く、この中に目指す『邪竜』が住まっているらしい。
「邪竜は今は、別の場所にでも行っているんですか?」
『岩使い』に質問をするバルド。
現時点で見えている穴の中には、炎以外に動くものは何も見えなかった。
何よりこの業火の中に生物などが居るなど、にわかには信じがたいことである。
「いや、アレは焔の化身。 火の中へ自らの身を隠す事ができるのじゃ。」
「・・・・。」
ゴクリと生唾を飲み込み、再び業火に染まる穴の中へと、視線を向けるバルド。
彼は『岩使い』という名からも分かるとおり、石に関係する精霊様。
穴の中は炎に包まれてはいるが、四方を岩場に囲まれたすり鉢のような形をしている。
その彼が言うのだから、この中に『邪竜』が居ると言うのは、まず間違いないのだろう。
この、岩をも溶かす焔の海の中に・・・
「なんじゃ、震えておるのか??」
「む、武者震いです!」
おじいさんが掛けてきた言葉に、ハッと我に返るバルド。
そうだ、こんなところで立ちすくんでいる時間は無い。
自分には、使命があるのだ。
「大体でいいです、邪竜の居場所を教えてくれませんか?」
「・・・心は決まっているようじゃな。」
バルドの決意を聞いた『岩使い』は、微笑みを浮かべながら、穴のほうへ視線を向ける。
邪竜は、その能力で焔の中に身を隠している。
そのせいで、詳しい場所は彼にも、把握する事はかなわない。
「少年よ、君はどのようにしてあの、邪竜を倒す?」
「え・・それは・・・・」
決意は伝わった。
だがそれだけでは、アレを倒すなど土台無理な話だ。
バルドに、その心積もりを確認するも兼ねて、質問をする『岩使い』
しかし彼は『邪竜を倒すための策』など、何も講じてはいない。
冬の女王様から『尻尾を切れば倒れる』とは聞いたものの、それはあくまで、バランスを崩して倒れるに過ぎない。
本当の意味で『倒す』ことは、それでは出来ないのだ。
「女王様に、尾を切れば倒れるとは聞きましたが、その先は分かりません。 でも邪竜を倒せなければ、村が困るんです! 誰もやらないなら、俺がやらないと・・・」
バルドは拳に力をこめ、決意を新たにする。
傍目にそれを、満足げな表情を浮かべながら見やる『岩使い』
どうやら意思確認は、無意味に終ったようだ。
怖くても、心のどこかで『ダメだ』と分かっていても、それに立ち向かおうとする勇気。
もう、もったいぶるのは、やめる事にする。
彼になら、アレを教えても問題はなさそうだ。
本来、人間などに教えてはならない『秘密』を・・・
「我々『魔族』は総じて、その力の『根源』をその中に秘めている。 大いなる力は結晶化し、生命の拠り所に、それは集まるのじゃ。」
「ど、どういう事ですか?」
突然に話を切り出した『岩使い』に、目を丸くさせるバルド。
俺は今、『邪竜を倒す』話をしていた。
そのタイミングで切り出される、『精霊の力の根源』の話。
ここまで考えて、ハッとした表情を彼へ向けるバルド。
もしや彼は『魔族』つまり・・『精霊』の弱点を教えてくれているのだろうか!?
先ほど聞いた話によれば、俺が倒さなければならない邪竜もまた、目の前のおじいさん同様に『魔族』であると聞いた。
だとすればそれは、つまり・・・・・
「その通りじゃ少年よ、『焔使い』も我々と同じ魔族。 アレもワシらと同じように、生命の拠り所に結晶を持っている。 それを貫かれ結晶が砕けてしまえば、、空気中にその存在は霧散してしまう。」
「そ、その『生命の拠り所』の場所というのは、どこなんですか!??」
まさか邪竜に、そんな退治法があったとは驚きだ。
これはとても、貴重な情報である。
それは、邪竜だけではなく、精霊たち全体における『弱点』なのだから。
これまで彼らが話してくれなかったのも、うなづける話だ。
悪い人間が精霊に手を出すと言う事も、ありえなくは無いのだから。
「心の臓じゃ、そこが『生命宿る』場所。 そこに我ら魔族の結晶化した力の源がある。 もちろん、ワシにもな。」
「・・・・。」
バルドに対し、胸をドンと叩いてみせる『岩使い』
そこには自信のほかに、彼の何かしらの思惑が垣間見えたような気がした。
だがそれは、俺に推し量る事は出来なかった・・・
童話を書いてるつもりが、すっかり冒険活劇に・・・
しかも、重い話多いし、説明長いし、構成でポカをしているし・・・
時間が有れば、そのうち全編にわたって、リテイクするかもしれません。




