954 エーアイとユキナ様
今回ベラドンナ
「エーアイちゃん、今日は何作るの?」
「ゼリーでも作ろうかと。」
「その位なら私でも作れるわ♪」
今日はエーアイの部屋でお菓子作り。コチョウ様とエーアイは仲良くお菓子を作られている。
「お酒なんて入れるの?」
「入れたほうがご主人様は好みます。」
「ふーん……」
ユキナ様はエーアイが作るものをマネされる。並んで作業をしているのを見ると、姉妹の様にも見える。これは、コチョウ様とエーアイが並んだときも、同じように思いますが…
「ねぇ、ゼラチンで作るんじゃないの?」
「ゼラチン? あー、それはこっちにないので別の……まぁ、同じようなもので代用します。」
「ふぅーん……」
ユキナ様は、手際よくパッパッと作っていかれる。あそこまで上手に作られるなら、メイドになっても問題はなさそうですが……
「わー! おいしそう!」
「それは、良かったです。」
エーアイとユキナ様はニコニコとご主人様の前では絶対にされないような素敵な笑顔をお互いに向けあっている。ずっと、大人しくニコニコとしていればいいものを、何故ご主人様の前では2人そろって、ケンカをされるのでしょうか。
「ベラドンナちゃん、一緒に食べないの?」
「いえ、私は大丈夫です。」
完成されたゼリーをおいしそうにユキナ様は頬張られる。もちもちしたあの頬がとても可愛らしい。もちのように引っ張れば、伸びそうなもちもちのほっぺた。
「ねぇ、ベラドンナちゃんって、私と結婚した割にあんまり、何もしてくれないよね。」
「私と結婚することによって、ありとあらゆる事が……この館内であれば、何でもできますし、私の口座からお金が引き下ろされるので、実質、お金は無限にあるも同然ですので、この街でも買わない限りはまぁ、お金が無くなることはないでしょう。何か不満ですか?」
「そうじゃなくて……一緒に居てくれることは増えたけど、何かしてくれるわけじゃないでしょ?」
「ユキナ様の身の回りの事はしておりますが……」
「え!? ご、ごめんね? 全然わからなかったの……」
「これでも、ベラドンナは優秀なメイドですからね。」
「これでもって……エーアイ、あなた少し失礼になりましたね。」
「そうでしょうか? いつも通りだと思ってますよ。」
エーアイは、ニッコリと笑ってきたが、いつも不愛想なエーアイが笑いかけてくるのはやはり、いつまでたってもなれる気配がない。
「ラミアお嬢様の笑顔ならば、とても見慣れているのですが、あなたの笑顔はどうもなれないですね。」
「ダメだよ! ベラドンナちゃん!」
「何がでしょうか?」
「お友達にそんなヒドイこと言っちゃダメだよ!」
ユキナ様は時折、子供のような表現で話されるが……コチョウ様も割と、似たような喋り方ではあるが、ユキナ様の方がコチョウ様よりも、年下を相手にしているかのような喋り方ですよね。
そもそも、私の事をちゃん付けで呼んでるくらいですし……私の方が歳上のはずなんですかね。
「お友達……エーアイ、私とあなたは友達でしたか?」
「仲のいい、仕事仲間という点では、友達と言ってもいいかもしれませんが。」
「2人そろって、感じ悪ぅー、おまけにツンデレ!」
「「ツンデレというわけでは……」」
「ほーら、仲良し!」
ミレイお嬢様にからかわれているような気分になりますね。
「ニコニコと笑って!」
ユキナ様に笑えって言われると、やはり……コチョウ様に似ているのでユキナ様はミレイお嬢様にも似ているということでしょうか。
「ユキナ様はミレイお嬢様に似ておりますね。」
「えぇ!? エーアイちゃん!?」
「私、お子様じゃないよ!」
「知っておりますが……」
「比喩ですよ、比喩。エーアイはたとえ話をしたんですよ。」
「いえ、まぁ、お子様みたいなものだと思ってますが……」
「……エーアイちゃんヒドイ。」
ユキナ様はマジトーンでキレ気味に……子供扱いされるのが相当嫌だったみたいですね。
「ば、バカにしたわけでは……」
「……そーですよーだ。私はお子様ですよー。ユキナちゃんは19才ですよーだ。」
「19? 29だったのでは?」
エーアイ……薄々、館内の誰もが感づいていたとはいえ、誰も今まで聞かなかったことに平気で触れるあたりが、エーアイですね。
「え? そ、そうよ? ちょっと言い間違えしただけよ!」
「ですが、前々から思ってましたが、その見た目や言動からはとても29には見えません。健康診断の結果でも、29ではないと出てましたが?」
「そうじゃないもん!」
「正直に話さないといけませんよ? ご主人様の実年齢は18ですよ。」
「……私が19だって言う証拠がそれ? それじゃあ、証拠にならないわよ。」
「そうですね。」
エーアイは掘り下げるだけ、掘り下げて、さっさと手を引いていった…………明らかに、ユキナ様が嘘をつかれているところまで行っているにも関わらず?
「証拠ならちゃんと私の部屋にありますけどね。」
「ちょっと! ベラドンナちゃんそれどういうことよ!」
「どういうことと言われましても……」
「……」
「話す気になられましたか?」
ここぞとばかりにエーアイが、ドヤ顔でユキナ様に近寄っていく。どうやら、エーアイは今日のうちにユキナ様の秘密と嘘を全て暴くつもりらしい。
「話さないもん……」
「拷問に掛けられますよ? ベラドンナに。」
「は? 私はそんなことはしませんので大丈夫です。」
「ふ、二人掛かりだなんて、せこいわ!」
「ユキナ様が素直に話されれば、少なくとも、私は何もしませんよ? ベラドンナは知りませんが。」
「私がまるでユキナ様の事を嫌ってるかのような言いぐさやめてくれません?」
「違うのですか?」
「違います。」
エーアイと話してる間に、ユキナ様はこっそりと部屋から逃げ出そうとしていたが、エーアイがナイフを投げつけて、ユキナ様を怖がらせた。
「あと少しで、当たってたじゃない!」
「当てようとしたので、今のは失敗です。」
「やっぱり、私の事嫌いだったのね! 私、折角エーアイちゃんとも友達になれたと思っていたのに。」
涙目でエーアイを睨みつけているが、エーアイは何とも思わないのかさらにバシバシ投げて、ユキナ様をドアから遠ざける。鬼畜ですね……
「もう知らない! リョウに言いつけてやるんだから!」
「……」
出れると思いますか? とでも言ってるかのようにエーアイは、ユキナ様の足元に次々とナイフを投げつけていく……
「うぅ……ど、どうして、年齢詐称でこんなことされないといけないのよ!」
「他にも、嘘をつかれているかもしれませんからね。」
「つ、ついてないもん!」
「ついていなくても、秘密を隠されているかもしれません。」
「誰にだって言いたくないことの一つや二つあるに決まってるでしょ! このバカ! アホ! マヌケ!」
「……」
エーアイを涙目で睨んでいるユキナ様。私は席に座って二人の事を見ているだけですが、ユキナ様にはどういう風に映っているんでしょうか。
「べ、ベラドンナちゃんも助けてよ! あんなに速い攻撃されたら死んじゃうよ!」
「まさか、死なれたら、私も自害しますよ。」
「ど、どうしてよ……」
「ご主人様の姉を殺したとあれば、いくら温厚なご主人様といえども私を許してはくださらないでしょう。」
「そりゃそうよ、だって、リョウは私が一番大事に決まってるもの!」
「……」
ユキナ様の一番大事という言葉にエーアイは苛立ちでも覚えたのか、ユキナ様に当たるかどうか寸前の所を投げ始めた。
「や、やめてよ! 年齢詐称は謝るから! お、お金はないけど…」
「では聞きますが、ユキナ様が19才だとするならば、10年の誤差が生まれますが、これはどう説明されますか?」
「し、知らないわよ!」
「……では、その体については?」
「体? 大きい胸でしょ? でも、ベラドンナちゃんよりも小さい……」
「胸ではなくその体……はっきりと言いますと、あなたをここに手引きした人は誰かと聞いています。」
「し、知らないわよ!」
「……全て知らないですか。なら、やはり……拷問にかけるしか」
エーアイは物騒なことを言って、私の方を見てくる。
「……私に言っても無駄ですよ? 私はどちらの味方もしません。ご主人様の味方です。」
「じゃ、じゃあ、私の味方よね! 私、リョウの実の姉よ? それに、あなたのお嫁さんでしょ! リョウに……リョウに言うわよ! ベラドンナちゃんも一緒になってイジメてきたって!」
「……脅迫ですか? 私はユキナ様の味方でもありますが」
「じゃ、じゃあ助けてよ! いちばん強いんでしょ?」
「一番強いわけではありませんが、エーアイを止めるとなると、ユキナ様が巻き込まれて死んじゃいますよ? 傍観してる状態が一番ユキナ様には安全かと思いますが。」
「言葉で止めたらいいじゃない! ホントに殺されちゃうよ!」
「言葉で……とても、このバカを止めれるとは思えませんが、ご主人様を連れてきましょうか? 恐らくエーアイに全力で妨害されると思いますが。」
「で、でも……」
エーアイはユキナ様に攻撃をやめたかと思うと、私の方をじっと見ている。敵になると判断した瞬間、私を狙うつもりですね。本当にこいつは、仲間意識ってのが薄いですよね。
「エーアイちゃんなんて大ッ嫌い!」
それだけ、ユキナ様は大声で言うと、私の方に全力疾走で走ってきた。飛んでくるナイフを回し蹴りで弾いたり、物凄い角度になるまで体をひねったりして全力回避をしている。さすがのエーアイも焦ったらしく、私の眼の前に瞬間移動か何かで現れ、ユキナ様の進路を阻んだ。
「ど、どきなさいよ!」
「それは出来ません、もし、ベラドンナがユキナ様の味方になった場合は、少々私の立場が危ういので。」
「危ういって、本性表しただけでしょ! リョウのためなら手段を選ばないような危険人物をリョウの傍にはやっぱり置けないわ! リョウの傍に居ていいのは、コチョウかベラドンナちゃんか、リリアナちゃんだけね!」
「エル様やシエル様は?」
「あの二人? ダメよ。あの二人は、穢れてるもの。」
「穢れてる?」
「初心な、エーアイちゃんには関係のないことよ!」
「……」
「言っとくけどね、私、既にリョウに伝えてあるんだからね! エーアイちゃんに襲われてるって!」
例えあらかじめ言っていたとしても、今伝えたとしても、ご主人様は信じないでしょうね。ご主人様の中でのエーアイは清楚で、頼りになって、優しいお姉さん。みたいな評価でしょうし、何よりも、ご主人様の頭の中にエーアイ本体がいるみたいなもんですからね。いくら、ご主人様から抜け出したといえども、ご主人様の思考を読み取る能力がある以上、ご主人様に自分のマイナス印象を与えるようなことはしないしさせないでしょう。
「……それは困りましたね、ユキナ様にそんなことを言われたのであれば、私は……」
それだけ言って、エーアイはナイフを構えた。
「そ、それ以上攻撃してきたら、こっちもやり返すわよ!」
「ユキナ様が? 基礎ステータス的に私に攻撃するのは得策ではないかと思いますが?」
エーアイは余裕あるのかないのかは表情からはわかりませんが、それでも、ユキナ様を甘く見過ぎている。シエル様を泡吹かせて失神させるだけの攻撃を持っているユキナ様を相手になぜ挑発的な事をするのか。シエル様の方がエーアイよりも少し、防御力は低い位なだけなのに……確実にエーアイであれば、泡を吹いて倒れる位の攻撃になるでしょうね。
「……べ、ベラドンナちゃん、やっつけて?」
半泣きで私を見つめてくるユキナ様。流石に罪悪感を覚えますが、それでも私は何もしません。エーアイは、どうせ、ユキナ様が危険じゃないとわかったとたん、謝るつもりなんでしょうね。すいませんでしたで済むと本気で思ってるのか……




