940 お外と許可証
今回カンナ
「んー……これにしとく。」
「はい、それでしたら、ランクFクエストでございますね。」
「薬草集めが?」
「街の外に出ますので、Fランクでございます。」
「わかった、それでいい。」
「はい、それでは手続きが終わるまで、ここで少々お待ちください。」
そういって、受付のお姉さんはチャチャっと手続きをしてくれた。
「それでは、ご武運を!」
受付のお姉さんは次の人の対応をもう、し始めた。忙しそう。
私は取りあえず、歩いて街の外に出る門の所に行って出ようとしたら門番の魔装兵に止められた。
「申し訳ありませんが、10歳未満の子供の許可のない外出は条例で禁止されておりますので何か許可証の様なものを確認させていただきます。」
「ん。」
私は、門番にクエストを見せた。
「なるほど、でしたら問題ありません。どうぞ、お通り下さい。外には危険が多くありますのでお気を付けて。」
実際外もモンスターとかそういうのは滅多にいない。狩り尽されているから……魔物の素材よりも鉱物等の方が丈夫だし、動物の皮の方が上質、羽や毛皮なんかもそう。魔物とかモンスターとかそんなのはただの害でしかないから、駆除されている。おかげでこの街の周辺数十kmに及ぶ範囲ではそんな存在はいない。
「ん。」
私は、門番の人に挨拶をして、てくてくと歩いていると誰かに腕を捕まれた。
「……」
「痛い……」
「申し訳ございませんが、いくら許可証をおもちといえどもあなたを通すわけにはいきません。もう一つ別の許可証をお持ちでしたら、直ぐにでもこの手を離しましょう。もし、お持ちでないのであれば、ここを通させるわけにはいきません。」
「もう一つ?」
「…とぼけられても無駄です。」
胸に赤の星……大隊長クラスの魔装兵、恐らく名前持ち。私なんかの情報もちゃんと持ってるんだ…
「きっと、別人と勘違いされてる。」
「勘違い? いえ、それはありません。私は、あなたの情報を見ただけですので、容姿で判断したわけではありません。」
「情報?」
「この国では、出生時に情報登録されるのです。どこのだれで誰の子供かをわからせるために。」
「……」
「貴女は、イマイ・カンナ・フォ」
「わかった。」
「では、お母様かお父様の外出許可証をお持ちでしたら私にお見せ下さい。お持ちでないのであれば、連れ帰ります。」
「……」
勝手にギルドに登録して出て行こうと思ったけど、ダメだったみたい…
「私、お外でもちゃんとできるよ……」
「そういう問題ではありません、許可が必要なのです。多少の変装では、一般の魔装兵などは誤魔化せても私のように一般以上の役職の者には直ぐに気づかれます。」
「……」
「お持ちではないのですね、では、このままお館の方までお送りします。」
そういって、大隊長は私を抱っこして家まで連れていった。
「カンナちゃんが? わざわざ、すいません。カンナちゃん、後でお話があるので大人しくしててくださいね。」
私はお母さんの所まであっけなく連れていかれた。お母さんは大隊長にお礼を言って、少し経つと怒った顔をして私の前に座った。
「どうして、そんなことしたんですか? そんなにお外に行きたいのでしたら、私に言えば連れて行ってあげますよ? それじゃ、ダメなんですか? カンナちゃんは賢いんですから、その位わかりますよね?」
「……うん。」
「じゃあ、どうしてですか?」
「1人でお外行きたかった。」
「ダメですよ、外は危ないし、カンナちゃんの知らないこともいっぱいありますよ。」
「……私、Fランクだよ?」
「Fランク? 何がですか?」
「ギルドの……」
「ギルド? あー……どこのですか?」
「ギルド・ヒカリ」
「ヒカリ? よくギルドに所属できましたね。」
「魔法使えるから入れた。」
「あそこは、実践型の魔導士しか入れませんよ。」
「私の魔法は実践型。」
「カンナちゃんの魔法は別に実践型魔法じゃないじゃないですか、付与魔法の上位魔法だったとしても、ダメなものはダメです。」
「私、そんな魔法使わない。」
「なら、人形の魔法ですか?」
「ちゃんと作ったから使える。」
「使えるって言っても、子供のおもちゃみたいなものです、ダメです。」
「ケチ。」
「ケチじゃありません。」
「お母さんは過保護過ぎ。」
「私が過保護なんじゃありません、周りが過保護過ぎなだけです。私はどちらかというと放置してるに近いと思いますけど、あ、でも、カンナちゃんは大好きですし……放置してるわけじゃないですけど、それ程厳しくしているわけでも、過保護に育ててるわけでもありません。」
「……」
「なんですか? 何か文句でもあるのであれば、言って下さい。」
「……お母さん、嫌い。」
「そんなこと言っても、お外に1人で行くのはダメですよ。ちゃんと門限は守るつもりだったとか言ってもダメです。」
「門限、私破ったこと一度もない……」
「それはそうでも、ダメなものはダメなんです。」
「ミレイは、1人で外に出てるのに?」
ミレイはよく川で綺麗な石を拾ったヨ! とかいって、私にキラキラした石を見せてくる。
「ミレイちゃんは…マスターにでも許可貰ってるんでしょう、でも、私は許可しません。だから、カンナちゃんが1人で行くのはダメなんです!」
「もういい……お母さんじゃなくてもいいって聞いた。」
「リョウ様だって、してくれませんよ? なにせ、許可証の書き方知らないんですからね。」
「……お母さんの他にもお母さんはたくさんいる。」
「え??」
私はそれだけ言って、許可証を書いてくれそうな人たちを回ることにした。




