938 エーアイとユキナ様
今回ベラドンナ
「ベラドンナ、あなた……」
ユキナ様はエーアイと一緒に作ったお菓子を頬張りながら突然話しかけてこられた。
「子供いたりしない?」
「はい? いえ、まだ妊娠はしておりませんが……」
「まだ!? やっぱりあなた、やってたのね! 酷いわ! 姉の私に内緒でそんなことしてたなんて!」
「お言葉ですがユキナ様……そこにいるエーアイも私と同罪かと思いますが、いえ、子供も産んでるいるので私よりも重罪かと。」
「さっきからあそこでメイドさんに抱かれてる赤ちゃんがそうなのね……2人して酷いわ! 私折角仲良くしてもらえてると思ってたのに!」
「……ユキナ様、私はご主人様と夫婦の仲ですので、どうかお許していただけないでしょうか?」
エーアイに余計なことを言うなとでも言いたげな目で一度睨まれた……
「え? 私の居る時にイチャイチャしなかったら2人とも許してあげる。」
「ありがとうございます。」
どこで覚えたのか、エーアイはユキナ様のご機嫌を取るのが非常に上手……というよりも、ご主人様の記憶を預かっているから何をどうすればユキナ様が喜ばれるとかまで把握しているのでしょうね。
「ねぇ、2人ともとっても強いんだってねぇ、私も参加したい!」
「参加? ユキナ様もそういった暴力がお好きなのですか?」
「暴力? ううん、魔法、すっごい興味あるの!」
ユキナ様は大半コチョウ様と似ているところが多い。例えば、今エーアイと話している話は興味があるので真面目に聞いていますが、興味がなければコチョウ様と同じように前髪を弄りだしたりするところや、困ったらエヘヘと可愛らしく笑われるところといったところでしょうか……似すぎているのでどうも、ユキナ様には苦手意識と言うよりは、コチョウ様のドッペルを疑うレベルですね。
「前も似た話をしましたが、ユキナ様には魔力はありませんので魔法を使うことは出来ません。」
「出来るよ? 魔武器って言うんだった? あれから魔力を抜き出せばいいのよ!」
「なるほど……ですが、それはこの世界の者でなければ、危険だと思いますが。」
「どうして?」
「ユキナ様の体には魔力というウイルスに対抗できる抗体が存在しないので、ウイルスに感染してしまう可能性があります。」
「ふーん……なら、この体をばらしてリョウに治してもらえばいいじゃない。あの子、ミキサーで抉られた人でも治せるんでしょ? 自分の体を代用させてって方法なら私の体にリョウの体の一部が混ざるからいいんじゃないの?」
「拒絶反応などの危険性もありますが」
「ないわよ、姉弟なんだもの、それに血液型は同じよ?」
「いえ、そういうことではなく……」
「じゃあ、どういうこと?」
「……情報量の多いその体でどうやってここに存在出来ているのかが私には理解できません。」
「なにが?」
「ユキナ様の情報量は100としましょう、この世界の情報の表示限度が80だったとします、ユキナ様の情報量が多いので溢れた20が表示できません。それにもかかわらず、ユキナ様は100でこの世界に居る。それがおかしいと私は言っているのです。」
「ふーん……よくわからないけど、私が本物じゃないって疑ってるんだー。もういい、帰る。」
「ユキナ様どちらに?」
「リョウの部屋。そこ以外に私の居場所なんてないに決まってるでしょ。」
突然エーアイとユキナ様が揉め始めたので少し驚いてましたが、整理すると……エーアイはユキナ様が本物ではないと思っていて、ユキナ様はそう思われたのが不愉快で、出て行かれた。
「……エーアイ、よくあんなこと言えましたね? ご主人様に報告されますよ?」
「構いません、ご主人様ならば、きっと私のこともわかって下さいます。」
「だと、良いのですがね。」
エーアイが理解できないのは種族が日本人となっているユキナ様をおかしいと言いたいのでしょう。魔力云々は誰かから補充は必要とはいえ、魔力を注入してもらえれば魔力を消費させるだけならば確かに可能でしょう。
元々ご主人様の居た世界がこの世界よりも上位の世界でそこから物をもってここに来るのは出来ない。ただ、対応させたのであれば問題なく持ってこれる。ですが、それは、ご主人様のように女神が別の肉体に魂を移したとかでもなければできませんからね。殺してしまった神々の代行はいませんからね……だからこそ、ユキナ様の存在はあり得ないとエーアイがいっているのですね。
それでも、可能性的には、ユキナ様の意識だけが来ているとかが一番濃いでしょうが、肉体を持っている以上、完全な状態でここに居ると考えるべきでしょう……もしくは、エーアイの例え話のあふれた20というのが何か別の物だったとかでしょうか? そう考えるのが妥当でしょうか? 例えば、5感のうち2つぐらいが使い物にならないとか…
「ベラドンナ、考える無駄ですよ。」
「?」
「……」
エーアイは意味の分からないことを言った後、自分の娘を抱き、ソファに座って、テレビで活躍している自分の娘を見始めた。




