935 クッキー
今回エーアイ
「……」
「アハハ……姉ちゃん、やめときなよ。」
「私何もしてないもん。」
「姉ちゃん……」
何故か知りませんが、ご主人様の部屋に入ると、ユキナ様に物凄く睨みつけられた。嫌われているのでしょうか?
「ひ、人の弟をたぶらかそうたってそうはさせないんだからね!」
「たぶらかす? 私は、上手にできたのでこれをご主人様に召し上がって頂こうと思っただけなのですが…ユキナ様が、そうおっしゃられるのでしたら、私はこのまま、帰りますが。」
「上手にできた? なにが?」
「ユキナ様にお見せできるほどの物ではありませんが…」
私はそういって焼いてきたクッキーを見せた。
「クッキー? なんかホントはお店で買って来たんじゃないの? でも、この人メイドだしお菓子作ったりもするのかなぁ……ん、おいし!」
ひょいと私の持ってきたクッキーを1つ摘まんでユキナ様は試食? された。
「美味しいじゃん、リョウ、この料理上手な別嬪さんならお嫁さんにしていいわよ!」
「その人、既にお嫁さん。」
「誰にでも手だしてんじゃないわよ! このバカたれ!」
結構な距離の離れた場所でご主人様はテレビを見てくつろがれていたが、ユキナ様はここからご主人様の所まで一気に飛び乗った。ご主人様の上に馬乗りになって一度だけご主人様の顔にビンタされた。
「お姉ちゃん、そんな浮気癖の強い子にした覚えないんだけど!」
「姉ちゃんが育てたわけじゃないじゃん!」
「弟は姉のいうことを素直に聞けばいいの!」
バシバシ叩かれているが、コチョウ様がご主人様を叩いているよりももっと強烈な音のなる叩き方をされる。止めたほうがいいのかわかりませんが、今は何もせずにただただ、ユキナ様がされていることを見つめている方が良さそうだ。
「……もう、じゃあ、妹の前で恥ずかしい姿見せちゃったじゃないの!」
「姉ちゃん、存在自体が恥ずかしいよ。」
「あんた、後でどつきまわすわよ?」
「姉ちゃん、シャレにならないからやめて。」
「じゃあ、口答えしないの。」
「うぃ。」
ユキナ様の方がご主人様よりも立場は上らしい。
「あ! この人、よく見たらテレビで見る人だ! ほら、あそこにもでてる!」
私を睨んでいるのかと思っていましたが、どこかで見たことのある顔だと思って見つめていただけだったんですね。
「あれは、娘のラミアです。」
「そっくりなのね!」
「よく言われます。」
「へ~…リョウとは長いの?」
「リリアナ様、ベラドンナにの次ぐらいには。」
「そっかぁ…そっか、そっかー」
「で、リョウの事は好きなの?」
「疑われるのですか?」
「え? だって……あなたみたいな別嬪さんがリョウの事好きなわけないじゃない。寧ろ、もっといい男みつけれるんじゃないの?」
「私の中ではご主人様が一番です。それ以上言われるのであれば、例えご主人様の姉であっても許しません。」
「なによ、ケンカでもやろっていうの?」
「ユキナ様のステータスでは相手にもなりません。ユキナ様は大人しくされているのが一番だと言っておきます。」
「言ってくれるじゃない! 私、30対1の喧嘩でも無傷で勝ったことあるんだからね! 喧嘩なんてしたこともなさそうな顔してるくせに!」
「お言葉ですが、ユキナ様は誰も殺したこともなさそうな顔をされておりますよ。」
「殺すのは犯罪でしょ! 人殺しにリョウは渡せないわ!」
「勘違いされているようですので教えてあげますが、ここはユキナ様が過ごされていた場所とは違い、そこまでしっかりとした法等なかったのですよ? 安全な場所もなく、ここからでも見えるあの壁の奥には沢山の孤児が山のようにいます。孤児が珍しいものではなく、普通な場所なのです。」
「だ、だったら何よ…追い出す気?」
「しようと思えば、私でもユキナ様を簡単に追い出せます。」
「……なんでみんな揃って喧嘩腰なの? 意味わかんない。」
ユキナ様は怒ってリョウ様の隣に座りこまれた…言い過ぎだったでしょうか? 偶然にもこのあたりに出てきて、未来にでも来たと勘違いされていたようですが、大丈夫でしょうか?
「……早く帰りなさいよ!」
「その、まだご主人様にお渡ししておりませんので…」
「私がやってあげるから!」
ユキナ様はこっちに来たかと思うと、バシッと私から奪うように取り、ご主人様の隣にまた座られた。
「リョウ、金髪で背の高い別嬪さんが…そうそう、丁度あそこに出てる人のお母さんからのプレゼントだって。」
ユキナ様は私の名前は知らないらしく、私の特徴をご主人様に伝えられた。ご主人様はニコニコと手を振ってくださったが、直ぐにユキナ様に、私に意地悪する人にニコニコしないでよ! と言って、無理矢理ご主人様をテレビの方に見るように横からバシバシ叩きながら言われた。
ユキナ様のステータスはただの日本人ということになっているが、とても30人に襲われて無傷でいられるほどの飛びぬけたステータスがあるわけではない。本当に普通の少女位のステータスを持たれている。
「それでは失礼します。」
「バイバーイ。」
今度はユキナ様もご主人様も一緒に仲良く手を振って私を見送ってくださった……お2人は本当に仲のいい姉弟なのですね。




