895 傷心中のエーアイ様
今回エル
ホワイト様が優勝してなにかをシエルに頼んでいたようでしたが、それは公表されず、無駄に夕食はパーティ状態になっていて、今に至る。どこを探してもエーアイ様の姿はない。怪我は治ったはずなんですけど……ご飯食べないと元気出ませんよね……
「あの、ラミアお嬢様? エーアイ様は……」
「お母さん? お母さんは部屋にいたよ?」
「部屋に? ちょっと見てきますね。カンナちゃん達の見張り代わりにしててください。」
「カンナと一緒に居たらいいんだね。わかった。」
ラミアお嬢様はそういうとカンナちゃんの所にいってお喋りを始めた。これはこれでいいですかね……リョウ様はマスターとリリアナ様に引っ張られて、困惑してますし…まさに両手に花ですね引きちぎれそうですけど…後先考えずに行動されるからそうなるんですよ。
「ちょっと、リリアナはいいでしょ! 正妻とか言ってるんなら、もっと余裕持ったら?」
「ム! 別にいいじゃろ! 今日はリリアナは一緒に居たい気分なんじゃ! 双子ちゃんもあそこにおるわけじゃし。」
「赤ちゃんの面倒見なさいよ!」
「見てるじゃろ!」
「ロリアナのくせに生意気よ!」
「お前の方が生意気じゃ!」
2人は子供のように騒いでますし…周りの目を少しは気にしてください。シエルはシエルで、もう出来上がってますし…バカですよね。
「そんなことよりも、見に行かないと。」
自分に喝をいれるように頬をパチンと叩き、エーアイ様の部屋に向かう。エーアイ様はリンお嬢様という赤ちゃんもいますからね…だから来れなかったとかでしょうか? でも、エーアイ様の怪我を見たのは私ですし…居ないと気になりますよね。
「エーアイ様、エーアイ様はいらっしゃいますか?」
エーアイ様の部屋のドアを軽くたたいて、エーアイ様を呼ぶ。すると、扉は開き、エーアイ様の顔が暗闇の中から現れた。エーアイ様にしては珍しく、服装もメイド服じゃない…オフ姿ってやつですかね? かわいいです。
「あの……パーティに来られないので、少し心配で……それと、そのお姿のエーアイ様もお綺麗ですね。」
「……」
「あの、中に入ってリンお嬢様見たいんですけど……」
「どうぞ、お入りください……」
エーアイ様は凄いしょんぼりされている……自分の完全上位互換が相手でしたし仕方ないんですけど……
「どうぞ……」
エーアイ様は私を椅子に座らせると、お茶を出してくれた。その後、寝室の方からエーアイ様は娘を抱いて出てこられた。
「娘のリンでございます。」
「小さいですね。カンナちゃんも昔はこんなだったのに早いですね……」
「……少し気になってたんですけど、ホワイトの10倍もの時間をお過ごしになられたと、先程お伺いしたのですが……それは事実でございますか?」
「……話さないといけないですか?」
「いえ……エル様が話されたくないのでしたら、諦めます。」
「……」
長生きしてるのに負けたのをバカにされるのかと思ってましたが、それはひねくれすぎでしたね…
「本当は生きていますが、記憶はありません。私の時間は一つの本に全て保管してもらってますから……でも、いつからか本をなくしてしまって……」
「…エル様は本来のお力ではないということでございますか?」
「別の世界で生きた時間を全てしまっただけです。無くしたというべきでしょうか……無くしたものを力とは言いませんので。」
「……」
「私がシエルに劣っている点でもありますけどね。」
「エル様がでございますか? エル様は、シエル様の能力値よりも大幅に上回れておあれるではありませんか、私とホワイトのように……」
エーアイ様は、ホワイト様との間にある力の差というのを理解されているにもかかわらず、しつこく粘られてたんですね…どうしてでしょうか。考えるだけ無駄ですよね…
「エル様、その本というのを私が見つけてきましょうか?」
「どうして……いえ、ホワイト様に勝ちたいんですか? 流石に、あそこまでの力の差を埋めれるわけがないと思いますが…エーアイ様本気だったじゃないですか……ホワイト様にはまだまだというよりも、本気のホの文字も存在しないくらい軽く戦われてましたよ? 全部、エーアイ様と同じ攻撃をカウンターでやり返してただけでしたし……言いづらいですけど、絶対にあの力の差は埋まりません。それほどの大きな時間があります。私とシエルとではそこまでの差はありませんけど……それこそ、シエルが本気で勝つ気で来れば、私も負けることもあり得るでしょうし…エーアイ様にはその確率すらありませんよ?」
「ですが……」
何かを納得できない様子のエーアイ様……リンお嬢様は私の腕の中で眠っている。エーアイ様の娘なだけあって、生まれた時から知能が高いんですね。既にラミアお嬢様の半分も……それ以外は本当に赤ちゃんですけど。
「でもも、くそもありませんよ。無理なものは無理です。エーアイ様では埋めることは出来ません。戦闘型のリリアナ様ですら、割と舐めプされてましたよ?」
「その本の中にある時間の方がホワイトよりも長いのでは?」
「長いと思いますよ? 私ここに来るまで時間と時間、空間と空間ありとあらゆる場所を移動したことになってるんですからね。」
「……なっているとはどういうことでしょうか?」
「記憶にないからわからないんです。私の記憶じゃ、元の時間から抜け出し、時間を彷徨ってここに辿り着いたことになってますから……別の世界で既に本は完成してるんです。私には記憶がないんです……その本を見つけたのは何年前でしたか…カンナちゃんが生まれる前まで良く行ってたんですけどね…」
「では本は王都に?」
「でしょうね…探しても無駄ですよ? あの本は本じゃないので…正しくは、この世界の法則にのっとった本ではないからでしょうか? 別のルールで作られた本。」
カンナちゃんの探している、魔法じゃない魔法に近いような気がしますね……
「明日、カンナお嬢様、ミレイお嬢様と行くことになっておりますので、その時探してみます。」
「え? ユキ様とヒカリ様が一緒だったんじゃ……」
「ベラドンナに反対されたそうです。」
「ベラドンナ様に?」
ベラドンナ様は賢いといえば賢いですが……勘が物凄くいいってのも大きいですよね。何かを感じたとかでしょうか…
「あの、絶対に…カンナちゃんには取られないでください。カンナちゃん、最近様子がおかしいので……」
「わかりました。ですが、私はお嬢様を止めれないかもしれません……力でお嬢様に敵わない可能性がありますので…」
「エーアイ様が!? まだ、カンナちゃんにはそれほどの力は……」
本を、ペラペラとめくっただけで、覚えている……ユキ様ヒカリ様から聞いたことがもしも、事実で…ここじゃないところにいきたがってる。カンナちゃんの事です、恐らくここの研究所に存在する本すらも読み終えた可能性が高い…
「カンナちゃんの障害って、良い障害だったんですね…記憶力が異常。これが障害……ホワイト様の考える敵になりえるとは、賢過ぎるが故の……魔力操作も異常な速さで習得し、完全体得されて……どんな魔法でも使おうと思えば使える。エーアイ様やホワイト様、シエルや私と同じように、知識さえあれば使える。それがカンナちゃんの現状……」
「あの……」
エーアイ様は心配そうに私を見ている…心配しに来た私が心配されるとはおかしな話ですが…なるほど、カンナちゃんの危険性は確かにホワイト様の言う通りですが、でも、でもですけど…ホワイト様がビビるほどの敵じゃないんじゃ…頭の性能の差ですかね? カンナちゃんのもっと危険性でもあるって言うんです科ね……
「大丈夫ですよ。」
「いえ…今、エル様がおっしゃられたことですと……カンナお嬢様は、何を考えられていらっしゃるのか。覚えたら使いたい。それが子供の思考……その知識の中には危険なものも存在するということなのでは?」
「え……あ、確かに! 明日、私もこっそりついて行きますね!」
なるほど、カンナちゃんがそういうのを使わないように気を付けたら解決じゃないですか! ホワイト様は大げさなんですよ。他人の娘のためにそこまでする義理はないってことなんでしょうけど




