893 決勝前
今回エーアイ
「勝者はサクラお嬢様! サクラお嬢様です!」
シエル様の実況で会場は物凄く盛り上がり、歓声が途絶えない。
「残念じゃなぁ~もう少し、サクラを苛めてほしいのじゃ。」
「母親が何てこと言うんですか!」
また、シエル様とリリアナ様がマイクを付けたままにも関わらず、揉めていらっしゃる…
「ちょっと! リョウってば、私のあーん受け取ってくれないの!? 私みたいな、ものすっごい! 売れてる可愛い美少女からのあーん拒否するなんて! バカなの!? ねぇってば!」
「恥ずかしいんだよ、ちょっとは頭使えよ、バーカ。」
ご主人様とコチョウ様は仲良くされていらっしゃる…
「ほらね、いくらラミアが頑張ってもサクラ姉が勝つって言ったでしょ?」
「でも、ラミアおねーちゃん頑張ってたヨ!」
「頑張ってはいたけどさ…」
「ミレイ、信じてたヨ!」
ミレイお嬢様とカンナお嬢様は2人仲良くくっ付いて試合を見ておられる…
「ホワイト様、もしも、もしも、あなたが何かしたら私、絶対に許しませんからね。」
「エル様、話の内容を聞いてまだそのような事をおっしゃられるのでございますか? それに、先程話は済んだはずでございますよ。」
「いいえ、納得できません。」
「ですが、エル様、ご自身も私と同じ目でお嬢様を見ておられたではありませんか。」
「……自分の家族のことは自分でできます。バカにしないでください。それと、私の方が10倍以上年上なんですからね! もう少し敬って欲しいものです。」
「エル様のことはこれ以上ない程敬っておりますよ。」
珍しく、怒り気味のエル様と、ニコニコと愛想笑いのホワイト…何かもめられたのかエル様はホワイトに絶対に許さない等、睨みつけている。
「私は、エル様の事を嫌ってなどおりません。」
「でしたら、私の言ってることを聞いて欲しいですね。」
エル様は嫌味っぽく笑われる。怒っていらっしゃるのでしょうね…
「私は、決勝がありますので。」
「はい。」
ホワイトはエル様の元を立ち去り私の方へと歩き寄ってきた。
「下に降りるまで、少し時間があります。話しながら下におりましょう。」
そういって、ホワイトは私を連れて歩く。決勝の会場にむかいながら歩く足はいつも通りの歩幅で緊張している様子もない。
「…エル様やシエル様というわけではありませんが、私達も賭けをしませんか?」
唐突にホワイトは、賭けを持ち出してきた。私とホワイトでこんなことをしても意味はないのだが…
「勝てば相手を何でも命令できるとかですか?」
「それも魅力的ですが、そうですね……何にしましょうか。」
ホワイトは嘘っぽく考えているふりをして、何かをひらめいたような演技をした。
「1日ご主人様を独占できるというのはどうでしょうか?」
「ご主人様は私の物でもあなたの物でもありません。」
「その割に、あなたは随分とご主人様にかわいがってもらってるようですが?」
「ベラドンナも十分かわいがってもらいますので、私だけが可愛がられているわけでは……ありません。」
ホワイトは、もしかすると…ご主人様に甘えたいのでしょうか? 確かに私も1000年もの間愛しい人に会えず、出会えたはいいもののご主人様の体をもつ別人となって目の前に現れ。自分の知るご主人様よりもずっと若いころのご主人様が現れ、一度敗北し、ご主人様の情けで拾っていただき、ずっと愛していた人が目の前で自分と瓜二つの私がご主人様と仲よくしているのは気に入りませんよね。
「そうでしょうか?」
「わかりました、あなたのためにその賭け乗りましょう。ですが、私が勝っても何も得がありませんが…」
「ご主人様の一日独占権と私にどんな命令をしても構わないというのでどうでしょうか? あなたの場合なら絶対に拒否するようなことでもなんでも、構いません。死ねというのは、流石にできませんが…裸になって街の中を歩けと行ってもかまいませんよ。」
「……流石にそのような命令はしません。ですが、それで、いいんですね?」
「はい。」
絶対に私には負けない自信があるのでしょう…エル様やシエル様の様な関係ではなく。単純に生きた時間の差と経験の差程度しか私達には存在しない。イコールの関係とまでは行かないかもしれませんが、限りになく私たちは同一の存在であることには変わりません。だからこそ、私はホワイトに勝つことは不可能。ホワイトには全てにおいて私は劣っている。経験も、判断力、演算能力、攻撃力や速度…ありとあらゆる部分で私はホワイトに劣っている。
「ご主人様の前で恥ずかしいことをさせるなんてことは流石にしませんよね?」
「しませんよ。私自身の印象まで悪くなりますからね。」
ホワイトは絶対にご主人様が欲しい…ということでしょうか? 1日でいいんでしょうか? 自分でいった、この時間はあなたの物。だから私は、ご主人様に手は出さない。見守ることを最優先事項にします。と言ったから、自分のことばで苦しめてるんですね。ご主人様に私と同じように優しくされたり、夫婦の様な事をしたり、子供と一緒に庭でお茶をしたり……何も言わず、本当に見守っていただけのホワイトが今度は見守るだけじゃなく自分も……ということでしょう。
一度くらいなら……例え、ご主人様と発展しても……ホワイトには、既に女性としての機能は……子供を産む力は存在しないのですから、何かあってもすぐに結婚の様な深い関係を築いたりは出来ないはず…
「ご主人様からのあなたの印象はどんな感じなのか知ってますか?」
「メイドか、妻……もしくは、都合のいい女。といったところでしょうか。」
「お姉さんと思われてるそうですよ? 私も含めてですが…」
少し嬉しそうに頬を少しだけ赤くしたホワイト……
「では、私はあちらで待機ですので。」
ホワイトは反対側の待機部屋に歩いて行った。




