865 第2試合観戦
今回コチョウ
試合開始の合図とともに、リリアナは何かを喋っている…
「マスター、いい加減出てってくださいよ…」
「いいじゃん、ここで見させてよ。ミレイちゃんもエルと一緒がいいよねー?」
「うん! ミレイちゃん、エルといっしょ! いっしょにみるヨ!」
「そんな事よりもエル、マイク大きくしたら?」
「どうしてですか?」
「リリアナ何かしゃべってるよ?」
「フム……まぁ大丈夫でしょう。ここにだけ、あそこの会話も拾うようにしますね。ついでに、私の仕事を邪魔した罰として……」
エルは、マイクを片手に持った。
「なんと! あの、空前絶後の超絶人気のスーパー女優のコチョウさんが来てくださいました! バスト、ウエスト、ヒップ、ともに世の女性の憧れ! グラビア写真はとぶように売れ! 主演した映画も同じようにバカ売れし続ける! まさに、世の憧れ!」
「や、やめて! 恥ずかしいよ!」
「……コチョウさんが解説席に来てくださいましたー!」
泣きそう…
「おかーさん、どうしたの? いじめられてるの? ミレイ、エルたおすヨ!」
「ち、ちがいますよ! 全く、マスターは子育てが下手なんですからね…」
「なによ、もう!」
「子供が子供を育てるのは無理がありますからね。」
「子供じゃないもん…」
「はいはい、じゃあ実況しないといけないので。」
そういって、エルはマイクを持った。
「試合開始と同時に何か口約束をしていたようですが……やっと動き始めました! 何という速度でしょうか!? 私は眼で追えますが、そんな動体視力のいい人はまぁ私ぐらいでしょう! リリアナ様のまさに、文字通り光速移動! 流石のベラドンナ様も目では追えないのか、防御態勢を取り始めました!」
リリアナの動きは全く見えないが、ただわかるのはリリアナは魔力を使っていない…アレがリリアナの身体能力とでもいうの? ステータス絶対、魔力と速度にガン振りでしょリリアナは。
「リリアナ様の強烈な蹴り! ですが、流石にベラドンナ様の防御結界を崩すことは出来なかったようだぁ!」
対するベラドンナは防御ガン振りね…いや、結界も魔力使ってるから…防御と魔力ガン振り? リリアナのピストルの様なキックはベラドンナに当たらなかったけど、リリアナはそのままクルクルと何回転もしながら宙を舞った。元々、防御されるの前提で蹴ったということかな? 本気で蹴って防がれたら足首やられちゃうもんね…自分のキックの威力が帰ってくるから。
「リリアナ様の綺麗な着地ぃ! まるで、舞を踊ってるかのようです!」
「凄いね…」
「もっとガンガン言ってもいいんですよ?」
エルはマイクを押さえ、私にもっと喋れと言ってくる。
「わかったよ……」
ミレイちゃんはここで少し走り回ったから疲れて私の膝の上で丸くなって寝てる…親指をしゃぶりながら寝てる……
「今度は! 何とリリアナ様が忽然と姿を消した!? ステルスアタックでもされるのでしょうか!」
「対するベラドンナは防御態勢…いや、攻撃の態勢を取ってる…のかな?」
「わかりませんが、カウンターを狙った態勢なのは間違いありませんね。」
「リリアナは姿を消したんじゃなくて…ずっと動き回ってるの?」
「どうでしょう、リリアナ様は光魔法を使えますからね、光を屈折させて隠れたりしてるかもしれませんよ。姿を消す前に魔力を感じましたので、ありえなくはありませんが、そう思わせるためにわざと魔力を使った可能性もあります…リリアナ様の速度では、動いても風も音もなりませんからね。リリアナ様だけが、動けている…といった方が正しいかもしれませんね。」
「どういうこと?」
「光速でも超えたんじゃないですか? 私達からはリリアナ様はどうあがいて見えませんし、リリアナ様からは恐らくは見えてはいるかと思いますよ? この辺で飛び回っているので音も拾えているでしょうし…リリアナ様の体があって初めてこういうことが出来るんですよ。」
光速に近づくにつれて重くなるって聞いてたんだけどなぁ…かあリリアナは今は質量無限なのかな?
音もなく、ベラドンナだけ吹っ飛んで行った。ベラドンナが消えたようにしか私には見えなかったが、リリアナが見えたと思ったら鈍い音と爆発音が聞こえたから吹っ飛んで行ったとわかった。リリアナも本気じゃないだろうし、ベラドンナも多分本気じゃない…っていうか、ベラドンナは本来は武器を用いて戦うから素手で戦うとなると、不利かも…
「……私があんなことされたら体がもげちゃいそうですね。運が悪かったら死にそうです…あ、私の場合は1回休みですかね?」
1回休み…シエルとエルがたまに喧嘩するときはどっちかが死ぬまで続ける…基本エルが勝つのだけど、いくら後で復活するからってねぇ…1回休みと言って、死んだことを軽く見ている……エルとシエルの喧嘩が恐らくここの誰よりも激しい…何せ殺し合いだから。どっちがか参るまでじゃなくて、降参しても容赦なく殺しに行くから……そうしてお互いにしばらく喧嘩しないようにしているのだろうけど…エルとシエルに関してはやたらと意見が食い違って喧嘩をし始める…最後まで発展すれば、喧嘩…ではなく殺し合いが始まる。
「……ベラドンナは何事もなかったかのように元の場所に戻ってきてるけど?」
「うーん…恐らくは、ベラドンナ様は回復能力とか大したことありませんし、ノーダメージだったと考えるべきでしょうか? ベラドンナ様の場合は、体が負傷しても、しばらく動かずに回復に専念すればリョウ様と同等かそれ並みの回復力あるのは事実ですが、その間はリョウ様と違って一切の行動が出来ませんからね…歩くことも、喋ることも、攻撃することも…防御結界を張ることもです。」
リョウ並みの回復力って言われても、私リョウが、大けがしたところなんて見たことないし…大けがさせたことはるけど、その時は私が頑張ってたけど全然だったし……
「じゃあ、アレはダメージがなかったってこと!? すごっ!」
「ですね…」
にしても、攻撃力及び速度最強のリリアナと防御力最強のベラドンナ…矛と盾みたいだね。時間凄くかかりそう。
「リリアナは随分と嬉しそうだね。」
「消化不良とか言って、ハイエルフを片付けてましたからね…あの人たちは今頃、地下牢にでもぶち込まれたんじゃないでしょうか? 聞けばここを乗っ取て、王様気取りたかったそうですし…」
ふぅーん…なにかあの二人喋ってるみたいだけど全く分からない。会話とかも全部マイクで拾ってくれないかな…
「? どうかされましたか?」
「ううん、あ! 動き出した!」
今度はベラドンナがリリアナを蹴り飛ばした。 リリアナもベラドンナもキックしたときあんなに足上げてるのに、パンツが見えないようにキックしてる…2人ともロングスカートだから? それでも見えると思うんだけどなぁ…
「ベラドンナ様も強力な蹴りです。が、リリアナ様は空中で留まりました。リリアナ様も見た目以上に防御力はあるみたいですね。」
なによそれ…リリアナが一番ステータスおかしいってことじゃない。ベラドンナじゃ勝てないんじゃない? 武器がないので攻撃力が下がってるのに、その下がった状態ではリリアナにはダメージ通らないし、てか、あいつ、魔眼で次の行動とか見てるんでしょ? チートじゃん、勝てないよ普通。
「何か、ベラドンナ様が喋ってますね…マイクの人すいませんが音声拾ってもらってもよろしいでしょうか?」
やっと、声が聞こえるようになった。
「棄権します。」
「えっと……」
「また…棄権?」
「あの、如何いうことですか? とっても、エキサイトしてたと思うんですけど?」
エルがマイク越しにそう聞くと、返事はすぐに帰ってきた。
「これ以上の負傷は仕事にも影響が出ますので、これ以上の意味のない戦闘は無意味かと。」
「……これだから、効率厨は。」
エルはマイクを押さえ、愚痴を漏らした。
「勝者! リリアナ! リリアナ様の勝ちです!」
エルが、そうアナウンスすると、リリアナがこっちに飛んで帰ってきた。
「ウぅむ…残念じゃが、仕方ない。ベラドンナもルールを破ってまで試合を続行するのは難しいと思ったのじゃろうな。」
「なにが?」
「ム? ベラドンナは殺しの技しか持ってないということじゃよ、流石のリリアナでも下手すればということを考えれば、使うわけにはいかないということじゃな。リリアナの様な殺さない技を持ってないんじゃろうな…ベラドンナの仕事はメイドと外敵の排除。外敵を捕獲したりするのは出来ないんじゃろうな。殺すしかできないのじゃから仕方ない結果じゃ。その気があれば、リリアナも本気でやらないとやられそうじゃしな。」
「え? あんた今の本気じゃなかったの?」
「当然じゃろ? 本気でベラドンナを怒らせるのはマズいのじゃ。」
「誰も嬉しくないですからね…殺し合いされても。というよりも、リリアナ様! 全然オーディエンス諸君を湧きあがらせやるのじゃ! とか言って出て行っておきながら、大したことありませんね。皆、うーん…って感じでしたよ?」
「それは悪かったのじゃ。じゃが、ミズキがまさか恥ずかしがりとは知らなかったのじゃ。知っていれば、
もう少し後の方の試合にしてたのじゃ…」
「そうですよね…今度は私ですか? よりにもよって、エーアイ様ですか? しかもホワイト様の方…エーアイ様はエーアイ様同士でぶつけておけばよかったんですよ。絶対に本気でやり合ってくれますからね。」
確かに、ホワイトの方が、エーアイに何か言って戦いそう…
「ダメじゃな、それじゃと面白くないのじゃ。リリアナは両方とあわよくばと考えておったんじゃからな。」
「見え見えにしてない辺り、考えてますね…」
「当然じゃ。」
「でも、カンナちゃんが大リリアナ様とというのはいただけませんけどね。」
「カンナはどっちにしても戦えないのじゃから、派手な演出と派手な負け方をしてくれそうなやつにあてるのが一番じゃろ。エーアイなんかじゃ圧勝とか面白くない結果じゃ、アイツは大丈夫じゃろ。」
「なら、私もクレーム! ミレイちゃん、。どうしてサクラちゃんとなの!」
「サクラの性格からして、攻撃はしばらくしないじゃろうが…ミレイはそんなのお構いなしの攻撃をするはずじゃ、面白そうじゃろ?」
「面白くないよ! ミレイちゃん、もしはもう使ったらどうする気なのよ!」
「既に使われてるじゃありませんか、爆裂魔法。」
「だから、しょっちゅう魔法掛け直してるのに! 大変なんだよ! この子何かされるのわかると、なかなか寝ないし技と騒ぎ始めるし、私の髪を爆発で痛めてきたりするのよ!」
「あれマスターはいつから、ミレイちゃんのこと知ってるんですか?」
「なによ、母親なんだから、全部知ってるわよ。ミレイちゃんには私がたくさん魔法掛けて長生きできるようにしてあるんだから!」
「そんなことしなくても、寿命なんてないと思いますけど…ラミアお嬢様とミレイちゃんとリンお嬢様も寿命はない筈ですけど…」
「なんで?」
「さぁ?」
なによ……




