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交通事故で死んで女神に異世界に送られた3人は  作者: あかあめんぼ
未来編
864/957

864 不戦勝

今回はラミア

「みなさーん! それでは、第1回、リリアナ様の気まぐれ大会一回戦第1試合が始まります! 対戦表は! 学園のアイドル的存在! ミズキちゃんと! ジワリと、絶賛大ブレイク中! ラミアお嬢様です! 大会の内容はいたって簡単! 相手を戦闘不能にするか、降参させるだけです!」


 ……エルは、どうして私のことを変な風に紹介するのかはわからないが、お母さんに今朝、やるからには全力で戦えと言われているので、例え姉といえど、全力でやるつもりだ。


「嫌だぁ…ミズキ、やらない! やりたくないよ!」


 ミズキ姉は、泣きながら出てきた…物凄い数の観客に見られているにもかかわらず…


「嫌だよぉ…ミズキ、恥ずかしいよぉ……」


 ……お姉ちゃんは、恥ずかしいから泣いているのか、ずっと泣いている。エルは、実況席から、可愛らしい泣き顔、持って帰りたいほどです! などと言い始めた。


「……ミズキやらない、棄権! 棄権する!」


 ……お姉ちゃんは泣きながら走り去っていった。


「えと……ラミアお嬢様の不戦勝、ですね。」


「戦う気のないやつを出すのは間違いじゃったな。まぁ、結果はかわなかったじゃろうしな、問題はなしじゃ。」


 リリアナは酷い…お姉ちゃんあんなに悲しんでたのに…

 観客もブーブー言っていたが、リリアナの一言から皆黙った。言葉に魔力を乗せた、とても重い一言。


「オーディエンス諸君も黙ってくれたことじゃ、さっさと次をやるのじゃ。と、次はリリアナじゃな…オーディエンス諸君を湧きあがらせてあげるのじゃ…」


 リリアナは実況席から飛んで出てきた。いつも通りの華やかな色の、華やかな服に、珍しく、ツインドリルヘアーだ。私の眼の前に降りてきたかと思うと、フンとそっぽを向いた。


「お前の出番は終わりじゃ、明日のリョウとの対戦でも考えておくんじゃな。リリアナが脅して、リョウは嫌でも、真面目にするはずじゃぞ。」


「……?」


「お前の勝ち目は薄いと言っておるのじゃ、母親に対策でも練ってもらうのが賢い判断じゃな。」


「……」


「相変わらず、無口な奴じゃな。」


「そんなことは……ない……です。」


「? リリアナとお前は親子なんじゃろ? リリアナの娘はサクラとララだけじゃがな、実の娘ではなく、なんというのじゃったが…興味のないことは覚えていないのじゃ、お前はそこで見るのか? リリアナは構わないのじゃが、危ないと思うのじゃ。」


「?」


「ベラドンナとリリアナじゃぞ、相手を殺したり、体を破損させたりするのは反則行為じゃからな、力をセーブしても、近くに居ては危ないと思うのじゃ。」


「わかった。」


 私は言われた通り、他の姉妹や、お父さんたちがいる場所に急いで戻った、私が戻ると丁度、さっきの私にしていた説明みたいなのが始まったところだった。


「戦闘力トップクラスのこのお2人、エルフのリリアナ様と、メイドのベラドンナ様です!」


 なんとも適当な説明だが、観客の大半は…お父さんに何かしらの関係のある人ばかりで、あんな紹介を受け入れているのか、物凄い歓声が聞こえる。

 ふと、近くを見ると、ミズキお姉ちゃんがお姉ちゃんの母親のシエルに甘えていた…


「ウゥ、ウゥ、ミズキヤダよぉ…」


「そ、そうですね…ミズキちゃんには向いてませんでしたね。元々優しい子ですからね、人を傷つけたり出来ないですよね? 仕方ないですよ、今度からこういうことあった場合、出場しないようにエルにしっかり言っておきますね。」


「ウゥ、ウゥ…」


 お姉ちゃんに話しかけるのは気まずいから、お母さんの所に行くことにした。


「ちょっと、エーアイ聞いてるの?」


「聞いておりますよ?」


「じゃあ、どうしてあなたが、そっち側を座るのよ! メイドのくせに!」


「お言葉ですが、コチョウ様? 私も一応はご主人様とは夫婦でございます。」


「私だって! そんなことよりも、あなた子供産んだんでしょ! ここに居ていいの? おっぱいとかあげないといけないでしょ!?」


「何が何でも、私がここにいるのが気喰わないご様子ですが、あの子でしたら大丈夫でございます。」


「どうしてよ?」


「生まれたばかりですので、今日の夜までは」


「あっそ、ねぇリョウ? こんな、真面目で少しも色気のない嫁か、色気のある嫁かどっちが好き?」


「ご主人様を困らせないでいただけるでしょうか?」


「あなたが困らしてるのよ。」


「私はご主人様の傍に居るだけでございます。」


「別に隣の席座らくなっていいでしょうに…」


「ご主人様、コチョウ様のことばを真に受けはいけてません、ご主人様の考えで行動してくださいませ。」


「え、えとぉ…」


 お父さんは両手に花、でも、その花は自分だけを見てほしいのか相手を蹴落とそうとしている…同じ嫁である、シエルは2つ後ろの席でずっとミズキお姉ちゃんを慰めているのに…お父さんの1つ後ろの席ではミレイちゃんが寝ている……興味がないみたい。


「なによ、私がうるさいみたいな言い方して! そんなに黙らしたいなら、黙らしてみせないよ!」


「よろしいのですか?」


「出来るのならね!」


 ツンとした態度で、コチョウお姉さんはお母さんに言う。


「ご主人様……前々から相談に乗って頂きたいことが…今よろしいでしょうか?」


「相談? いいよ。」


「はい、セクハラを受けているのでございます…」


「せくはら? ケツとか、胸とか触ったりしてくるやつ? ベラドンナに相談した方がいいんじゃない?」


「ですが、相手は、ご主人様の妻でもあるお方でして……ご主人様にも間接的に関係のあることでございます。」


「そ、そうなんだ…」


 流石のお父さんも話の流れが分かっていたらしい…隣にいるコチョウお姉さんにされているってお母さんは言いたいのを察したのか、気まずそうにお父さんは、2人の顔を見ないように、実況席で長々と未だに紹介を付け加えているエルの方を見ている。


「その、胸を揉まれたり…前の方も少し弄られたりして、抵抗したら酷いわよと言った言葉で、私に抵抗することを許してくださらず…」


「ちょっと! 私そんなことしてないよ! ねつ造しないでよ!」


「誰も、コチョウ様がとは言っておりませんが?」


「チラッチラ見てんじゃない! そんなことされたら嫌でもわかるわよ!」


「……レズなの?」


「ち、違うわよ…どちらかというと……両方?」


「……でも、セクハラっておやじじゃないんだから…」


「ち、ちがうのよ! エーアイにそんなことしてないもの! そりゃ、たまにいきなり抱き着いたり、ちょっと胸触って羨ましいなぁって思ったりすることはるけど……セクハラじゃないわ! 女が女にセクハラしてもセクハラじゃないもの! エーアイの被害妄想! 被害妄想よ!」


「……ですが、触られて、抵抗することを許してくださらないのはどうかと思います。ご主人様はどうお考えですか?」


「2人とも、ラミアが見てるのに……」


 後ろから見ていたにもかかわらず、お父さんは私が見ていることに気づいていた。


「ラミアちゃんは、私の見方だよね? お仕事でも、前に一緒になった時助けてあげたし!」


「何を言っているのですか? 娘が母親の敵なわけがありません、ラミア、私はあなたがどう答えても怒りませんからね。」


 お母さんがそういう表情するのは珍しいが……お母さんの様な完璧な人になりたいと思ってはいるが、お父さんのことになるとどうしてこうもダメな人になってしまうのだろう…


「どっちもどっちだと思いますけどね…………いえ、何でもありません。」


 後ろでシエルがボソッと言ったが、2人に睨まれて黙った…


「……コチョウ様はこんなところで油を売っててもよろしいのですか?」


「?」


 突然お母さんがおかしなことを言うからお姉さんは困った表情をしたが、お母さんが手を指した先にはミレイちゃんがいた。さっきまで寝ていたミレイちゃんはいつの間にか実況席に入り込んでいた。エルは気づいていないらしい…


「あ! ミレイちゃん! どうして!? まさか、あなたが?」


「勘違いしないでください、私はコチョウ様よりも視力がいいだけでございます。お嬢様には指一本触れておりません。」


「魔法使ったわけじゃないし、あの子ってば、また勝手に変なところに…リョウごめんね、私みたいな超絶美女が傍を離れちゃうけど悪いメイドにメロメロにならないでね? ちゃんと帰ってきたら、お帰りのキス位はしてね?」


「えっと……人前でそんなことできないのと、早くしないと大惨事だと思うんだけど…」


「そ、そうね…」

 

 コチョウお姉さんは急ぎで実況席に向かっていった。

 しかし、お母さん達が喧嘩していたのはどっちが好かれているかではなく、相手に惚れられ過ぎないように自分をアピールしあっていただけだったのか……喧嘩したわけじゃなかったんだ。

 お父さんは唐突に立ち上がり伸びをして、また席に着いたが、先程お姉さんが座っていた席に座った。お母さんとお父さんの間に1人分の席がぽかりと空いてしまった。お母さんは、嫌われたのかと思ったのかお父さんの顔色を窺っている。


「ラミア、ここにおいで、アイツどっか行ったからここに座っておけがいいよ。帰ってきたら、お父さんがどこか行くから。」


「え…うん。」


「あ、あの……」


「別に嫌ってるわけじゃないよ? でも、エーアイも必死になるんだね……ざんねんな方向に。」


「申し訳ございません……」


 お母さんは凄く悲しそうな顔をして、お父さんの方から私の方を見た。


「遅れましたが、お帰りなさい。ラミア。」


「ただいま、お母さん。」


 お母さんは、優しく頭を撫でてくれた。お父さんは背中を優しくポンポンと叩いた。街中や、ドラマで見る、普通の家族4人や、5人ぐらいの家庭はこんな感じなのかな……



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