851 命名
今回エーアイ
「赤ちゃんってこんな感じなんだ。」
「小さくて、可愛らしいと私は思いますが…」
「うん、そうだね。」
ご主人様は、産まれたばかりの赤ちゃんの世話をしてくれているホワイトを見たが…無視して、話を進めてきた。
「エーアイは体大丈夫なんだよね?」
「つい先程、産んだというわけではありませんので。」
なぜかはわからないが、ご主人様を見るとつい、温かい気持ちでニッコリとほほ笑んでいるような顔になってしまいます。ご主人様はそんな私を見るたびに、少しだけ顔を赤くし、ニコニコとほほ笑み返してくださいます。
「お疲れ様…で、合ってるかな?」
「ありがとうございます、ご主人様。」
「エーアイには、発情期というものが存在したのですね。」
「…あなたも、エーアイなのでは?」
「私には、ありませんでしたから。」
「別に、私は発情なんてしておりません。勘違いもほどほどにしていただきたいです。」
やれやれといった表情でホワイトは、部屋から出て行った。
「しばらくは安静にしておいた方がよろしいのでしょうか?」
「病院の人に任せたら?」
「病院ではありませんが…ホワイトに任せておきます。」
「そうした方がいいよ。」
「ご主人様……」
「なに?」
「先程のホワイトの発言についてですが…」
「大丈夫! なんとも思ってないよ!」
「そういっていただたけると幸いです。」
本当はどう思われているのですか? などと、図太い事を聞くことは私にはできません。
「うん。」
ご主人様はきょろきょろと周りを見渡された後、窓から外の景色を眺め始められた。
「あ、リリアナご一行帰ってきてる。」
御一行? リリアナ様方が帰ってこられたということでしょうか…ご主人様は何故か、ドン引きし始め、少しだが、顔を青くした。それほどまでに、強烈な何かを見たということなのでしょうか? それとも、見たくもないものを見た…とかでしょうか?
「ご主人様、どうされました?」
「こっち、コッチ…」
ご主人様が手招きして私を呼んでくださるので、ご主人様の隣に立ち、窓のところまで寄っていった。相変わらず、私とご主人様の背丈は少ししか変わらない。ご主人様のの方が少し大きいかという程度の差しかない。
そんなことよりも、ご主人様が先程気にされていた、物は何かと外を見渡してみたが、相変わらずの異世界離れした風景しか見えない。高層ビルに、街を覆う巨大な壁、空には青空が見えてこそいるが、薄く結界が見えている。本当に、地球でもなければ、この世界でもない印象を受けるこの街は、別世界と言っても過言ではないだろう。オーバーテクノロジー…まさに、行き過ぎた技術、科学と魔法を取り入れた新ジャンルとベラドンナは言っていたが、私には、未知の領域で、まだまだ識る必要がある…電気の力もところどころ使ってはいるのだろうか…なぜ、ベラドンナにそれらの知識があるのかも不思議ですが、異世界に行くことが出来るとはいえ、おかしい。おかしいといえば、先程から、見えるアレは…車と、なるほど、リリアナ様は外で飛んでおられるのですね。
「…リリアナ様の名前が最初に出た理由は解りましたが…なぜご主人様はそのような反応を取られたのですか?」
「え? いや…だって、アイツ、牢屋! 牢屋引っ張ってるじゃん! 鬼畜かよ!」
「拘束した敵を閉じ込めているのでは?」
「わかるよ! それぐらい!」
確かに、この光景はご主人様が引いてもおかしくはない。リリアナ様は牢屋と牢屋を繋いで、まるで、移動監獄のようになっている。それをリリアナ様が空中で、建物にぶつからないように気を付けながら運んでこられておられる。
「確かに…これは。」
「でしょ!」
「はい。」
「リリアナがおかしいのは、知ってるけどさ、これはおかしいでしょ! なにを考えたらああいう運び方になるの!?」
「直接、確認を取らなければ、私には解りません。」
「う、うん。」
よく見ると、牢の中にはラミアと同じ年ぐらいの幼い子供等も多く含まれている。ほかにも、赤ん坊を抱いた母親、牢を必死に破壊しようと試みる者、様々な行動を取っている人がいるが、全員が全員髪の色が緑色というのが特徴的だ。チラチラと赤い瞳が光っていたりして、ベラドンナ達とは違うのは遠くからでもうかがえる。
「リリアナがやったのかな。」
「牢はエル様の魔力のようですが…」
「あいつもやったのか…」
「奥様方はとてもお強いのですね。」
「…エーアイもその1人なんじゃないの?」
「……」
ご主人様の奥様になった記憶はありませんでしたが…そうですよね、元々未来では結婚していて、子供いて、そうですよね…ご主人様とは既に夫婦関係にあったということですよね。今だって、つい先程、痛い思いをして、産んだ私の子供もすぐそばで、寝ているわけですし…
「ですが…」
「自分はおかしくないって言いたいの? そうだね、エーアイは普通だと思うよ…精神的には。一番普通な感じ? シエルはメソメソすぐにするくせに、無駄に勝てない相手に突っかかっていって、それでまた、しょぼしょぼして。コチョウは怒ったら何するかわかったもんじゃないし…アイツ、シエルと喧嘩した時、シエルの顔にあざが出来る程殴りまくったとか聞いてるしさ…リリアナは我儘だし、あ、でも…ベラドンナは割と普通かな。噂じゃ、なんか、俺にいちゃもん付けに来た女神だか、神さまだか、知らないけどひねりつぶしたとか聞いたことあるけど…」
「ベラドンナ? なぜ、ベラドンナの名前が? ただのメイドだったのでは?」
「あ…えと…その……なんて…言いましょうか………」
ご主人様は私から目を背けた。
「……ご主人様?」
「エーアイには、言わないほうがいいって言われてたのに……」
ご主人様は更に、私から顔を背けた。私に対して口止めをするとすれば、ホワイトか…
「構いません、ベラドンナがずっとご主人様のことを慕っているのは知っております。私からすれば、ちょっと前の話ですが…と言っても、ここから10年以上も昔の話ですが…ベラドンナによく相談されてましたので。」
「そうなんだ…」
「はい、ご主人様がシエル様とお付き合いをされた時は、ご主人様のことを愚痴ってもいましたよ。」
「え!? 初耳…」
「10年も前の話なので時効かと…それに、ベラドンナはその当時は仕事も得ずに部屋に閉じこもっていたりもしましたよ。覚えていらっしゃいませんか?」
「うん…割と、会わない日もあったから…」
「ベラドンナが結婚・・・」
確かに、結婚願望など強そうでしたからね…最近のベラドンナはご主人様のことをとても気にしてましたし、それでも立場というものも理解しているようでしたし…此間、そういった話をベラドンナがしていた時、避妊しているとかどうとか言ってましね。
「どうかしたの?」
「いえ…結婚したのですよね。ベラドンナも子供が…とかなんとか言っておりませんでしたか?」
「ううん…でも、避妊はやめるって。すぐに子供出来るようになるわけではないって言ってたし…すぐに欲しいわけじゃないんじゃない? 仕事が忙しいから、落ち着いてからって…ベラドンナの落ち着いてからって、後継者みたいな人見つけてからってことなのかな? ホワイトにやらせる気満々だったけどね。」
「いいのではないでしょうか? 彼女、子供は産めない体ですし…何よりも、頭が誰よりもずば抜けておりますので、問題はないかと思います。」
「だねー…そういえばさ、この子の名前なんて決ってるの?」
「名前でございますか…ご主人様がお決めになられるのでしたらそれで構いませんが……」
「エーアイ考えてるの?」
「2通りほど…」
「あるんだー! エーアイが決めたのにしよっ! それでいいでしょ? ね!? ね!? ね!?」
「ですが……」
「ううん、決定事項! 早く言ってよ!」
「私には、どうしてもセンスがないので…シエル様やコチョウ様が考えたような名前は付けれませんが…」
「大丈夫、大丈夫。」
「では…レティか、リン。どうでしょうか?」
「リンの方が好みかなー」
「そうですか…私もそちらの方がいいと思っておりましたので、ご主人様と同じ意見で嬉しいです。」
ご主人様はやはり…名前を漢字に出来る名前の方が好みらしい…いや、日本人っぽい名前の方が好みなのでしょうか? サクラ様も、ミズキ様も、カンナ様も、ミレイ様も、ラミアは…少し厳しいかもですね。ですが、お子様方には、日本人でも付けていておかしくない名前ばかりですね…今回のリンに関しても…




