848 イジメられてる
今回シエル
敢えて見て見ぬ振りをされているリョウ様…見て見ぬふりしているつもりなのだろう、でしょうけど…誰がどう見ても、見て見ぬふりを出来ていない。遠くからこっちの様子を伺っている様は、まるで小動物のようだ。
「…わ、私悪くないです。」
「シエル様が悪いなどと私は言っておりません。被害妄想を膨らませるのも大概にしてください。」
「悪くないんですもん…」
ずっと、この女が突っかかってきてくる。昨日やめろってリョウ様に言われてたくせに…何で私にこんなことしてくるんですかね? 楽しいんですかね? 本当に性格捻じ曲がってます。エーアイ様でも、私のことを嫌ってるだけなのに、この女ときたら…私を見るや、近づいて来て、説教をし始める。そういえば、ちょっと前にはリョウ様にしていましたね。
「私はシエル様を責めているわけではありません。ただ、なぜそのような態度をとられるのかと質問をしているに過ぎません。それを、ご主人様にさも、自分が苛められているかのように話して」
「本当の事じゃないですか…イジメって言うんですよ! リョウ様もそういってましたし!」
「言わした…の間違いでは?」
この女、リョウ様が近くに居ないと思って、無茶苦茶言ってますね。エーアイ様と違って、完璧主義ではないみたいですね。それともわざとなのか…この女はリョウ様に暴言言われてた時、罰悪そうな表情こそしてましたが、よく見ると口角が少し上がってましたよね。まるで、喜んでいるかのような…そういえば、エーアイ様は怒られ慣れしてませんよね。怒られることなんてなかったから…だからこの女は性癖コジラしたのか。
「違います、言ったんです! あんまり、私イジメてると、リョウ様に嫌われますよ!」
「いじめられている人は、イジメられている相手に向かって、イジメるのをやめろとは言いませんよね?」
「それは、私に言うなと脅してるんですか?」
「勝手な、解釈をされては困りますね。」
「本当は自分がリョウ様に怒られたいだけの癖に! 変態! マゾ! クソビッチ!」
「あまり品のないことを言われると、シエル様の夫でもあるご主人様の品性を疑われるのでそういうことを言わないでいただけると助かるのですが。」
「うっさい! 嘘つき女! あなたは嘘しか言わないんです! ビッチのいうことなんて信じません! リョウ様だって、本当は胡散臭い女って思ってますよ! うっとしいってね!」
「そういう、お子様の様な態度をとられるのも、ご主人様の」
「何でもかんでも、ご主人様、ご主人様って言えばいいってもんじゃないんですよ! ビッチ!」
「ビッチ、ビッチとおっしゃいますが、私は両手で収まるほどしかしたことはありませんが…」
「10人とも…本当にビッチですね!」
「回数の話ですが?」
「10人と10回ですか!? 強烈ですね…中古女。」
「…話になりませんね。」
小動物のように遠くからこちらの様子を伺っていたリョウ様がいつの間にかこちらにやってきていて、話が聞こえる位置にまで来ていた。
「……2人ともみっともないよ? エーアイまで、バカみたいに騒いでさ…」
「も、申し訳ございません…」
反省しているかのように見えるが、やっぱり喜んでいるようにしか見えない。この女の性癖のこじらせ方は異常です。キチガイです。狂ってます。ヤバいデス。
「シエルも、そんなにビッチとか言っちゃ可哀想だよ。」
リョウ様は、ビッチと判断されたのか…それが正しい判断ですよ。さすがのホワイト様も、今の一言には喜びよりも怒りの方が顔に出て来てますね…私の方をにらみつけて来てますけど。本当のこと言っただけじゃないですか…私の思ったこと口にしただけです。
「そ、そうですよね…性癖だって人それでですし…」
「お前には一番言われたくないだろ。女のくせに女がいいとか…」
「別に女がいいってわけじゃ…」
「ミレイに悪影響出てるんだけど……ちょっと引くレベルでヤバいこと言いまくってるしアイツ。コチョウはきっと、子供のおふざけ程度にしか思ってないだろうけどさ、アイツ眼がガチだから、本当に大きくなったらしようと思ってるぞ。既にやろうとしてるのでは?」
「リョウ様レズ物が好きなんですか…しかもロリ。私でも損な性癖持ってませんよ。それにミレイちゃんの場合だと、ロリよりもヤバいデス。もっと幼いデス。」
「なんでそんなに強調するんだよ…もっと大人の方が好きだし。性癖なんてどうでもいいの。」
「あの、ご主人様。私は本当に」
「リョウ様の性癖なんて私は気にしませんが…胸は大きい方が好みで合ってるんですよね?」
「……性癖晒しまくってるお前とは違うから。」
わざと、ホワイト様のことばに被せて言いましたが、物凄い睨まれて…あれ、睨んでない。寧ろ何かざまあみろと言わんばかりに煽ってきてますね…今、あなたの方がリョウ様の中でランク凄い堕ちて来てるんですよ? 一番上の方にいたのに今じゃ、下の方に…
「ウッッグ……」
……ホワイト様が泣き始めた。そんな馬鹿な…エーアイ様を基準に考えても、メンタルもっと強い筈ですし…嘘泣き? 嘘泣きですか…
「ど、どうしたの?」
リョウ様も敢えて何も触れてなかったが、流石に突然泣き始めたホワイト様には驚かれたのか、凄い慌てている。
「いえ、いいのです。私のことは…それよりも、仕事に私情を挟み申し訳ございません。」
やはり、泣き続けることは不可能だったのか、すぐに泣き止みいつも通りの涼し気な表情に戻っている。
「え…でも泣いて。」
「泣いておりません。」
「でも……」
「泣いておりません…」
「シエルの言ったことそんなに傷ついたの?」
「私は女性です。私はご主人様のために一生を尽くしたというのに、それを愚弄されたどころか、私のしてきたすべてを否定されました。ご主人様にビッチと言われた私の気持ちはわからないかとは思いますが、私はご主人様以外の男性にこの体を触らしたこともありません。息子を男性と含めるのであれば、息子、孫は触ったとなってしまいますが、私の裸を見られたわけでも秘部を見られたわけでもございません。いわば、私の忠誠心を愚弄されたのです。」
「えっと…シエルが悪いの? してないことしたって吹き込むのは良くないのはわかるけど…シエルは滅多に嘘つかないから…シエルの勘違い?」
「たとえ勘違いといえど、私を侮辱したことには変わりありません。」
「リョウ様、この女はきっと、邪魔な私を消したいだけなんですよ! リョウ様の周りにいる羽虫を消す位の気持ちで私と接してるんですよ!」
「でも、そんなことしないと思うけど…」
リョウ様は優柔不断で自分で決めれない。すぐに人の意見に左右されるから…リョウ様の中では私とホワイト様での、信用の天秤がどっちに傾けばいいのかと迷ってるところでしょうか、消して自分の意見を言うという判断には至らない…以前のリョウ様なら言えたかもしれませんが、1年近く甘やかされ続けたリョウ様は既に、お子様も同然。ご主人様というよりは、お坊ちゃまといった方がいいレベルで…
「シエル様の被害妄想に付き合ってる暇はありません。」
「被害妄想じゃないです! そっちからいきなり絡んできたんじゃないですか! 目障りなだけなんですよ! きっと!」
「う~ん…2人の意見が物凄い食い違いがってて何とも言えない…」
「ご主人様の信じる方のいうことを聞けばよろしいのでは?」
そんなに、自分に自信あるのかこの女は舐めたことを言い出した。
「リョウ様、私はリョウ様と結婚もしてますし、嫁のいうことの方を信じてくださいますよね? メイドじゃなくて。」
「ご主人様、私はご主人様のメイドですが、それでも、ご主人様でしたら、私のいうことでも信じてくださいますよね? シエル様ではなく。」
「2人とも悪いんじゃないの……どっちでもないよ。それに、お前がそんなに図太いやつとは知らなかったよ、ちょっと減滅。」
リョウ様はホワイト様にそれだけ言って、自分の部屋に戻っていった。
「嫌われましたね、ざまあみろです。」
「シエル様は下がるだけの評価がないので羨ましいですね。」
「え? 私リョウ様からの評価は高いですから…イジメられてる私のことを気を使って下さるんですよ! あなたとは違って!」
「シエル様はそれしか言えないのですね…可哀想に、頭まで悪くなられたのですね…」
ホワイト様は憐れんだ目で私を見てくる、非常に腹が立つ。ムカつく、うざい!
「もうほっといてください!」
「あら、どこへ行かれるというのですか? シエル様がどちらに行かれても、私には関係ありませんが、一応はご主人様の奥様の一人ですからね。」
「わかりましたよ、ホントは、自分が私の座が欲しいんですよね? 絶対に譲りませんからね!」
「? 何の話でしょうか? 私は、既に一生を終えた身、今更、ご主人様にどうこうされたいとか、どうこうしたいとか、そんな感情ありません。息子と言っていいほどに、ご主人様のことを幼く見ておりますので。」
「嘘ばっかり! リョウ様から全部聞いてるんですよ! あなたが、リョウ様に触られると、発情するのでやめてくれって言ったのも、全部!」
「それだけで、そう判断されるのは困ります。」
「もういいです! さようなら!」
私は、何かまだ言っていたが、無視して自室に戻った。




