827 ラミアの夢
今回はエーアイ
ご主人様が私の部屋に訪ねてきたので、出迎えたら私に用があるわけじゃないと言って、ホワイトを見つけるなり、それからずっとホワイトと喋られている。私は2人を少し離れたところでそれを横目にラミアと座っている。
「お母さん見て。」
「…これは?」
「メイド長に教えてもらいながら作ったの。凄く上手にできるようになったから、お母さんにプレゼント。」
ラミアはとても私が着れるサイズではない服を私にくれた。
「……お母さんにというわけじゃないんだけど。」
私が服を少し弄っていたら、ラミアが気になったのか言葉を付け足してきた。
「お父さん気になるの?」
「えぇ…」
「お父さん、あの人とお姉さんと喋ってるから?」
「お姉…」
ホワイトがそう呼ばしているのだが……ホワイトは本当は1000年もの時間を生きた人なので…人族の感覚で生きている私からしてみれば、かなりの歳の人。尊敬はしていますし、信頼もしていますが…ご主人様と喋っているとなるとその内容がとても気になる…私よりもご主人様のことを知り尽くしている彼女がご主人様と長い時間一緒にいるのはあまり良しとは思えない。彼女は、ご主人様には何もしないし、何もさせないと言ってましたが…同じ私ですからね、とても大丈夫とは思えない。ご主人様に手を出したら…と考えると目を離せない。
「お母さん?」
「なんでしょうか?」
「私、メイドになりたいって言ったら怒る?」
「怒りまはしませんが、ここに就職することは出来ないと思いますよ。」
「じゃあ…コチョウお姉ちゃんみたいな人になるのは?」
「コチョウ様? コチョウ様のような方というのは…教師ですか? それとも、女優でしょうか?」
「教師? テレビに映る人になりたい。」
「それは構いませんが…本気でなりたいのでしたら手助けはします。なんでしたら、今すぐにでもやりますか? 演技力ということですが…子役にしては上出来だと思えるほどにはあると思いますので心配は要りませんね。ただそうなると、ラーシャ、リーシャの2人では足りませんね。専属のマネージャーが必要でしょう。」
「マネージャー…」
「私はそのような知識は持ち合わせておりませんので……」
「私、もう働くの?」
「お望みでしたら……」
「……そうする。」
「ベラドンナに言えば、今すぐにでもコチョウ様のように仕事がポンポン入ってくるようにできますが…自分の力でと言うのでしたら、厳しい道になると思います。私としては、ベラドンナに頼んで出してもらった方がいいと思います。それに、あなたの素性を隠して役者を続けるのは限界があります。最初から身分を明かしていた方が後のことを考えると楽になると思います。」
「……ちょっと考える時間欲しい。」
「じっくりとお考え下さい。」
ラミアは紙に何かを書き始め、黙々とペンを動かしている。見た感じ、将来の事を計算しているのでしょう。人生の起こりうる可能性の計算が出来るとは…7歳にしては賢過ぎますね。超英才教育でもずっとされてたのではないでしょうか…
「お母さんはどうして、お父さんのメイドになったの?」
「私ですか?」
唐突にラミアは私に話を振ってきた。私が、どのような過程があってご主人様のメイドになったのかか…私からしてみれば、1年近く前にご主人様によって生み出され、私に広い住むところが欲しいと最初に頼まれ…私は最初に元のお屋敷があったところにそれほど大きくなはいが大きめの屋敷を建てた。そこの環境を維持するためにメイドをし始めた…という感じでしょうか。
「なるべくしてなった…でしょうか?」
「じゃあ、お父さんとどうやって結婚したの? メイドと主人の関係だったんでしょ?」
「それは……今の私にはわかりかねます…」
ラミアはしばらく私のことを見つめていたが、私がこれ以上何も言わないのかと思ったのかまた計算の続きを書き始めた。
しばらくは、黙っているであろうラミアから目を離しご主人様の方を見つめていた。しゃべっていなければ、ご主人様たちの会話が少し聞き取れる。
「ご主人様は冗談が好きですね。」
「そんなことはないと思うけど…」
ご主人様がお茶を飲み干したので注ごうとティーポットを持とうとしたら手が、飲み干したのに気が付いたホワイトがご主人様に注ごうと持ち手を持った手を握った。
「ご主人様がわざわざ注がれなくてもよろしいのですよ?」
「その位自分でできるよ?」
「それと…手を放していただけると嬉しいのですが……」
ホワイトは自分で注げるからと言って、手を中々離さないご主人様の手を邪魔だと言わんばかりにチラッと見て、ご主人様の目に視線を戻した。
「ご、ごめん……」
ご主人様はホワイトには強く物を言えないないのではないでしょうか…それよりも、ホワイトがご主人様を嫌ってるとも思えるような行動を取るとは驚きです。普段私と会話するときはご主人様のことを褒めちぎっていたり、たまに羨ましいと言ったりするぐらいの彼女があんなことをいうなんて。私がご主人様に手を握られたら……流石にあんな言い方はしないとは思いますが、私が注ぎますと言うのは同じでしょう。
「ご主人様は何もされなくてよろしいのですよ。私や、他のメイドが全てをしますので。それと、絶対にとは言いませんが、あまり私の体には触れないでください。」
「え? どうして?」
「前々から言おうかどうか迷うっていたのですが…そもそも、ご主人様が私に触れられることなど滅多にありませんからね。」
「うん……」
ホワイトがとんでもないことを言い始めた。実はご主人様のことを嫌っていたのでしょうか…1000年生きた…エルフや魔族の1000年とはわけが違う。全種族の中でも短命である人族の感覚、同じ10年でもエルフや魔族とではわけが違う。体はその間に成長したり、老化していたり……大リリアナ様の生きた時間の数十倍は長く感じていたことでしょう。そんな長い時間の中でほんの短い間だけしかご主人様と一緒にいれなかったことに対する不満等からあのような言動に繋がってるのでしょうか?
「ご主人様のことを嫌っているわけではございません。寧ろその逆、とてもお慕いしております。」
「……」
「お慕いしております。お慕いしているからこそ、私は昔ご主人様と結婚もしました、子供も2人作りました。私にとってのご主人様はご主人様がお考えになられている以上にとても…特別な方なのです。」
「そうなんだ…じゃあ、何で触っちゃダメなの? 話が繋がってないよ?」
「私は既に、ご主人様と結ばれ、ご主人様との間に生まれた子供が、私達から離れて好きな人を見つけ結ばれて子供産み、孫を見て…その孫の孫も私は見ました。さらに言えば、その孫の孫の代辺りから私は再びメイドとしてお仕えし始めました。ご主人様とのつながりをどうしても忘れたくありませんでしたので…私がご主人様のことを死ぬほど愛しているのは間違いありませんが、私と同じようにここのエーアイもご主人様のことをお慕いしているのです。それを差し置いて、自分が…というのは図々しいとは思いませんか?」
「それは…確かに昔の自分の邪魔はしたくないっていうのはわかるけど……」
「ご主人様に触られると……わかり易くいえば、自分を抑えられない程に興奮してしまうかもという話です。もし、そんなことをして再び私がご主人様と結ばれる何てことになったら…私が私を」
「わかった。わかった。相変わらず、エーアイって話が難しい上に重いなぁ。」
「そうでしょうか? 昔からご主人様は私にそのような印象を持たれておられたのですね。」
「うん。知らない言葉ムッチャ使ってくるし…尊敬語? 謙譲語? よくわからないけどその喋り方してくるし…」
「ですから、基本敬語で喋っているつもりなのですが…ご迷惑でしたでしょうか?」
「そんなことはないけど…」
「私の方が精神的にも実際にも歳は上なので今のご主人様を見るとどうしても、可愛らしく見えてしまうのですよ? それは、ちょっとしたことから手を出してしまいたいほどに…」
「そ、そうなんだ…エーアイってやっぱり結構エロいね。」」
「ご主人様に対しては、多少は積極的ですからね。そうでもしないと、私達の様なこれと言って一際目立つ魅力がない女に振り向いてくれませんからね。」
「十分魅力的だと思うけど……」
「ルックスには多少は自信ありますからね。水着姿位でしたら、いくらでもお見せできますよ? スタイルには自信ありますからね。」
「うん……」
ご主人様が何度かホワイトの胸をチラッと見ていたが、世の女性は男性の目が胸を見ているなというのはわかってはいても何も言わないですからね。ホワイトもまた、何も言わずに話をずっと続けていた位でしたし…しかし、ホワイトは私のことを考えたうえでご主人様にあの様な事を言ったのですね。
「お母さん、私、お母さんとお姉さんがなっていいって言うならなりたい。」
「女優にですか?」
「うん。」
考えがまとまったのか、ラミアが凄い嬉しそうにしている。子供の考えはあまり理解できませんが…ラミアの考えていることはすこしずつですが、理解ができるようになったと思います。
「いいよね?」
「私は止めはしません。挑戦して、それで何をあなたが学ぶかが最も大切なことだとだけ言っておきます。」
「わかった。」
ご主人様達の方も話が終わったのか、ご主人様は部屋から出て行かれた。ホワイトの方は、私たちの方にティーポットやティーカップなどを片付けた後、やってきた。
「私も、ラミアちゃんの行動は止めはしないし何も口出しする気ないですけど…しっかりと考えて行動をしなさいとだけ言っておきます。」
「うん!」
「……」
「エーアイ、どうかされましたか?」
「いえ、先程のご主人様の会話で、ご主人様はあなたのことをエーアイと呼んでおりましたので、それが少し気になっただけです。」
「私とあなたは、同じエーアイでしょう? なにもまちがってはないと思いますが…ホワイトというのも、単なる、愛称。もしくは、区別するための名前という認識でしたが…」
「いえ、わかってはおりますが…多少やきもちを妬いてしまいました…」
「そうですか…そういえば、あなたの体の事なんにも知らないご様子でしたが……」
「明日……話します。」
「昨日もそれを言ってたのに何故言わなかったのですか?」
「ご主人様を前にするとどうしても……恥ずかしいと言いますか。」
「ご主人様は本当の意味で責任を取れる…父親としての自覚は恐らくはあると思いますので、大丈夫だと思いますが…リリアナ様もつい先日ご出産されたところ。ご出産はリリアナ様の所に昼間は良くいらっしゃってますからね。子育てはちゃんと手伝いはしてくれるとは思いますが…夕方ぐらいにしか来ないと思いますよ?」
「構いません。」
「ベラドンナはまだ、ご主人様は責任を取れないと考えているようですが、大丈夫でしょう。私はご主人様はちゃんとそういう責任も取れると思いますので。」
「わかりました…」
「後3週間程でしょうかね? 出産の際は、私がしてあげますので安心してて大丈夫ですよ。」
「……」
「私たちは他の方とは多少違った出産方法なので…私がやるのが一番いいと思いますが…それとも、ベラドンナに任せますか?」
「いえ…どうせ、恥ずかしいところを見られるのでしたら、自分に見られる方がましです。」
「あなたは、しっかりと栄養を取っていればいいんですよ。」
「わかりました。」
ホワイトは何かと私に世話をしてくれる…私の専属メイド以上に世話をしてくれる。正しくは、私の専属メイドが仕事がなくなるほどに世話をやいてくれるといった方がいいかもしれなませんね。




