812 コチョウ様と
今回エーアイ
コチョウ様は今日は帰るのがめんどくさいと言って、泊まってもいいかと尋ねてきたので、構いませんよというと、嬉しそうにお風呂借りるねといって、風呂場の方に向かって行かれた。
「お母さん…私、お姉さんとミレイちゃんと一緒にお風呂入ってくるね。」
「わかりました。」
「お母さんは一緒に行かないの?」
「いえ、遠慮しておきます。」
「…じゃあ行くね。」
傍にいたラミアはコチョウ様の後を追って風呂場の方へと向かっていった。
「ふぅ…」
椅子に腰を掛け、少しため息をついたら飲み物をそっとホワイトが出してくれた。
「コチョウ様は苦手ですか?」
「苦手というわけではありませんが…」
「可愛らしくて、子供っぽいですけど…女優してる時はとても大人っぽいんですよ。素が出るとアレですけど。」
「確かにテレビに映っているコチョウ様はいつもとは違って女性らしいですが…」
「そうですね、流石はご主人様の上位互換ですね。」
「ご主人様が下位互換とでも言うのですか?」
「ご主人様が勝っている点がありますでしょうか? コチョウ様もご主人様と同じぐらいお優しい方ですよ?」
ご主人様はお優しいと言おうとしていたのに、先に封じられた。
「……」
「ないのですか? 私なら言えますが?」
「わ、私だって言えます…」
「そうですか?」
ホワイトも私もその後はしばらくお互いに何もしゃべらなかった。風呂場の方から賑やかな声が聞こえてくるのが私たちのところまで響いてくるだけだった。
「……ミレイお嬢様ですが。」
「ミレイ様がどうかされましたか?」
ホワイトが沈黙を破って、話しかけてきた。
「ミレイお嬢様に魔法教えたのは恐らくはラミアちゃんだと思いますよ。」
「ラミアは光以外の魔法は使えません。」
「使えなくても知ってるんだと思いますよ。使えないんじゃなくて、使わないとかかもしれませんし。」
「…知っている可能性は否定できませんが、使わないのは違います。」
「意外と見てるんですね…そこはいいんです。ミレイお嬢様を見て不自然だと思いませんか?」
「いえ、特には…強いて言えば、コチョウ様の真似をよくされてますね。」
「真似…確かにそうですが、知力と精神が合ってないと思うのです。」
「行動は3歳の子供となんら変わりないと思いますが…」
「ラミアちゃんは7歳にしてご主人様が本来なら習うべき計算等の学業をしています。天才ですよね?」
「そうですね。」
「多少は間違えるとはいえ、天才です。ミレイお嬢様もそれを3歳でやられております。」
「そうですね、とても頭がいいのではないでしょうか?」
「いえ、どう考えてもおかしいと思うのです。」
「どこがおかしかったのでしょうか?」
「ミレイお嬢様、魔力を外に向けることは出来ないと言っていいほどの事しかできません。火花を散らせる程度の爆発でしたら起こせるようですが、そのぐらいです。」
「そうですね…」
「ミレイお嬢様はコチョウ様かシエル様が、魔法使えないようにちょっとした細工をされています。それなのに、魔法を使えます。」
「言いたいことが理解できません。」
「魔法は知力に直結していますよね?」
「していますね。賢い方が魔法の計算や処理が速く正確ですからね。」
「…ミレイお嬢様は賢いのに出来ない。おかしいですよね?」
「それは細工されたからでは?」
「細工をされていても、無理矢理こじ開けれそうなものですが…」
「出来ないと思いますが…」
「はぁ…考えるだけ無駄でしたね。」
珍しくホワイトが諦めた。
「何の話してるの?」
「コチョウ様、上がられたのですか?」
「うん! ミレイちゃんがどうのこうのって聞こえた気がするんだけど…やっぱりミレイちゃんかわいいってわかってくれた!?」
「それは、存じておりますが…」
「それにしても、2人ともそっくりだねー、シエルとエルも見分けるの大変なんだよ? 胸で判別したらエルが怒るし…じゃあ、同じ服着ないでよ! って言っても、似たようなセンスですからね。なんて言って2人して笑ってくるんだよ!」
「そ、そうでございますか…ですが、私達は服は変えておりますのでご安心下さい。」
「…ホワイトって白い服着てるだけだよね? 白い服着たただのエーアイだよね。」
「そうですね、髪の色も力を取り戻してからは元の色に戻りましたし。」
弱体化状態だから白かったってことでしょうか…
「ふ~ん…じゃあ、面白いこと教えてあげる。」
「なんですか?」
「ミレイちゃんの話してたみたいだからね、教えるけど。ミレイちゃん片目しか魔眼じゃないんだよ!」
「そうなんですか?」
「うん! しかもあの水色っぽい青い目が可愛らしいのに、真っ赤になるんだよ! ちょっと怖いんだけどね、ミレイちゃん怒ったら目の色変色して赤になるからわかりやすいんだよ!」
「そうでしたか…」
「それにね、ミレイちゃんの魔法も面白くてね。オーバーパワーってシエル呼んでたけど…どういうのかは私知らないの。なんか危ないんだって。」
「危ないとは…ミレイお嬢様がですか?」
「そうだよ! ミレイちゃんが危ないっていうからシエルの言う通りにしたけど…2人ならどんなのかわかったりする?」
それを今、ホワイトが私に話していたのだが…先程からホワイトしか返事をしていない。ホワイトに任せておいてもいいかもしれませんね…
「名前から考えると過剰な力を加えることができるとかでは?」
「かなー? 私もそうおもんだよ? シエルに聞いてもアホのマスターじゃ理解できないですよ。ってニコニコしながら言ってくるんだよ! ホント、腹が立つよね!」
「それは…どうでしょうか?」
「エーアイの立場じゃそういう悪いこと言っちゃダメとかあるんだろうけど…そう思うでしょ?」
「私は、エーアイではありますが、エーアイではありませんよ?」
「もう! 細かいんだから!」
ホワイトはそういって、席を立ったかと思えば、お酒を持ってきて、コチョウ様の分を注ぎ始めた。
「あ、ありがとう!」
「いえ、お口に合えば嬉しいです。」
ホワイトとコチョウ様は楽しそうに喋られている。その内容の大半が子育ての話で私は一切ついていけない。ホワイトも途中からコチョウ様に勧められてお酒を飲み始め、12時を過ぎたころにはホワイトは飲み潰れた。コチョウ様ほど強いわけではないので、先に潰れるのはわかってましたが…潰れるまで飲むのはどうですかね?
「ごめんね、エーアイ。お姉さん飲みつぶしちゃって。」
「姉ではありませんが…コチョウ様もそろそろおやすみになられては?」
「そうだね、私も寝ようかなー…ベッド3人寝れるの?」
「寝れますよ、ゲストルームが2部屋程ありますからね。」
「そっか…」
そのうちの1つをホワイトが勝手に使っているのだが、
「ヤッパリ、部屋の中に部屋っておかしいよね…」
「文化の違いだと思いますよ。私は慣れましたし。」
「わ、私も慣れてるよ!」
「コチョウ様はこちらの部屋をお使いください。」
「うん…」
コチョウ様はベッドに寝転んだかと思えば、既に眠られていた。ご主人様と同じで寝るのに時間が掛からない方なのですね。




