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交通事故で死んで女神に異世界に送られた3人は  作者: あかあめんぼ
未来編
801/957

801 ご主人様とメイド

今回エーアイ

「ご主人様、お待たせしました。」


「別に待ってないよ?」


 お館の前、門の下で待ち合わせしていた。本当は待ち合わせの時間には30分ほどあったはずなのだが、ご主人様は何故かもうご用意されていた。


「エーアイなんて言うか…凄い可愛いね。」


「普段はこのようなものは着ないのですか…似合ってるでしょうか?」


 水色のワンピースというのが一番近いデザインの物で、熱くなりつつあるこの時期なので、あえて半袖の物を選んだのだが…ご主人様が私に初めて買って下さった服の内の1着で、未だに大切に保管されていたのでご主人様と出掛けるのだったらと選んだのですが…


「清潔で清楚で…でも、色っぽさもあって、エーアイらしいよ。美人だけど可愛いエーアイならよく似合ってるからね。」


「ありがとうございます。ご主人様に褒めていただけると私も嬉しいです。」


「うん。」


 色っぽいというのは、胸元の事でしょうか? 確かに、胸が少しだけ大きすぎたのか谷間が少しだけ見えている。一応、ネックレスなどの小物もご主人様から頂いたものやベラドンナと買ってきたものばかりですが。


「じゃあ、行こうか。コチョウが珍しくそんな気の利いたことをするんだね。」


「私も、正直なところ驚きました。コチョウ様なら、私のことを突き飛ばしてきてもおかしくない方ですから。」


「結構根に持つんだ…まぁ、あいつ器小さいから、気にしなくていいよ。シエルとかもかなり、小さいからな。胸がじゃないぞ? その点、エルは慎ましい胸のわりに性格はシエルと違ってみみっちくないしな。」


「胸の話はエル様嫌ってるようでしたが…」


「仕方ないよ…ないから。」

 

 ご主人様はとても残念そうにおっしゃられているが、エル様の胸を生で見たことはないのでは? シエル様やリリアナ様の物はあるかもしれませんが。


「ご主人様は胸がお好きなのですか?」


「いや…変態とか思ったの!?」


「…多少。」


「え…」


「冗談ですよ、ご主人様でしたら胸がお好きでも構いません。」


「ちょっと怖かったんだけど…嫌いにとかなってないよね?」


「私が、ご主人様を? 私はご主人様のことを嫌いにはなりませんよ? ご主人様の事は好きです。」


「そお? じゃあ、行く? あまり、もたもたしてるとシエルが出てきそうだから。」


 ご主人様はちょくちょく、シエル様のことを悪くいわれるますが、シエル様のことは嫌い…ではなかったはずですが、なぜでしょうか? ご主人様なりの、愛情表現の一種でしょうか? 私には至って普通に接されておられるのに、少し羨ましいです。ご主人様は私のことは異性としてるのかどうかで言えばあまり見ていないでしょう…私はこれと言った魅力はありませんからね。


「映画館は…あちらですね。」


「本当に便利だよね…スマホなんて屁じゃない?」


「ご主人様の基準がよくわかりませんが…便利ではありますね。」


 ベラドンナの作ったシステムは、検索機能や、マップなどの機能を多種多様に備えている。聞いた話だと、ゲームなどの機能も備えているそうです。電子妖精と呼ばれる、人工知能シエル様をモデルに作られた彼女が色々とサポートして下さるそうですが…


「…エーアイのシエル寝てるね。」


「スリープモードですので…」


「寝てる感じが、シエルにそっくりw」


 ご主人様がシエル様のことをバカにするなり、自販機からコインが飛んできた。


「イタッ!」


 私の電子妖精がクスクス笑っている。どれほどの権限を持っているのでしょうか…


「こいつ…マジで憎たらしいな、シエルみたいで腹が立つ。アイツが煽ってくると鬼腹立つからな!」


「シエル様と仲がよろしくないのですか?」


「よくは思ってないから…無理矢理やってきたし、なんでこっちが痛い目に合わないといけないんだよ! 意味わからんやろ?」


「まぁ…それと、そんなに大声で話されては、シエル様に聞こえるのでは?」


「あーうん…そうだね。チッ、帰ったら絶対にベラドンナから弱点聞いてやるからな。」


 どうぞ、どうぞとでも言うかのような態度をとる、私の電子妖精ピクシー


「こいつ…」


「あまり、ピクシーを挑発するのはどうかと…」


「まぁ…うん。」


「3D表示や、物理的に触ることが出来るようにすることが可能らしいので、セクハラ対策で用意した機能や、そういった対処手段があるのは当然かと。」


「まぁ…もう! 早く行こっ!」


 先程から、ゆっくり歩いていたご主人様が急に早足になられた。気のせいか、私のピクシーがクスクス笑っている。確かに、これは腹が立つとおっしゃったご主人様の気がわからなくもない。


 ご主人様と映画館に入り、飲み物と軽くつまめるものを購入し映画館に入った。席はまさにど真ん中の位置をご主人様は選ばれた。まだ、映画という文化が馴染みきっていないためか、それ程満員ではない。まだ、舞台などで講演したりする方が主流なので仕方がないのかもしれないが…


「…思ってたよりも超高画質なんだ。」


「ベラドンナは凝り性ですからね。」


「へぇ…」


 ご主人様と、それからはしばらく黙って映画を鑑賞していましたが、コチョウ様がコチョウ様らしくなく、とても大人の女性…色っぽい表情や、スタイルのいい体での誘惑などもとても、本人がやっているとは思えないほどに、とても色っぽい。



「コチョウって、カメラ映りはいいんだな…」


 ご主人様の映画が終わってからの第一声はコチョウ様のカメラ映りの話のようで、どうやら、コチョウ様が女優としての活動中はとても美人だとご主人様は話されていた。最後に、コチョウ様のことをまぁ、家じゃ頼りにもならないし、メソメソ泣くし、面影が一切ないな。とコチョウ様に対してはご主人様はいつも強く物を言われる。


「ご主人様は、少しお昼の時間が過ぎてしまいましたが、どうされますか?」


「そうだねぇ…何か食べたい料理とかある?」


「食べたい料理ではありませんが…行きたい料理店はあります。」


「どこ?」


「ここから、少し離れていますが…よろしいでしょうか?」


「うん。」


「場所は…あちらの、元奴隷の方々の生活地域と街の境目にあるのですが…ご主人様はそのような偏見一切ありませんよね?」


「ないよ。てか、奴隷とかあったんだ…」


「ありましたよ。ベラドンナが根こそぎ買いまくったようですが…」


「ど、奴隷使ってたの!?」


「いえ、奴隷としての契約は継続だと思いますが、見た目では判断できないように工夫されてます。それに、彼らはこの街においては市民です。ベラドンナは奴隷解放を目指しているようですので。」


「へぇ…良かった。ベラドンナって何を目指してるの?」


「私にもさっぱりですが…案外この街と私の持つ土地で独立したりしそうですね。」


「え? 独立?」


「可能ですからね…私の土地は国から買い取ってますから。魔族領と面している土地の大半は買い占めているようですし、十分国としての土地はあります。国民の方も、ベラドンナの者達や、市民の方々などを含めれば、国としての最低基準は達していると思いますが…最も、政治をする機関が既にあるというのが気色悪いですが。」


「あるの!?」


「お館の生活空間以外のスペースは、全て議会や、政治をするための空間になっておりましたし、裁判所なども存在します。独立する気はあるんでしょうね。彼女の事ですから、完璧に準備が整ってからするのでしょうね。」


「へぇ…」


「それと到着しました。」


「ん? ここが、行きたかった店? 割と普通な感じだね…」


「安く、美味しくがモットーだと言い張ってましたからね。」


「誰が?」


「ご主人様もそれなりに知る人物ですよ。」


 ご主人様と一緒に店に入ると、店は既に、昼食の時間を過ぎたというのにそれなりに繁盛しているようで、にぎわっている。


「へぇ…内装は結構お洒落なんだ。店員も緑系じゃない…」


 ベラドンナの手の物ではないと言いたいのでしょう。彼女が雇っているのは、このあたりに住む人々達なのですから、当然と言えば当然ですが。


「いらっしゃいませ、2名様ですね。当店は、禁煙となっておりますのでご協力お願いします。」


 銀色の髪をした店の者が私たちを案内する。


「メニューと、お水です。」


「……どこかで見た顔。」


「私の顔がどうかされましたか?」


「いや…誰だったか…」


「……おかしいな、私の知るこの男はもっと老けていたはずだが。」


「は!? お前あれか! アイツやろ? えーっと、お屋敷の!」


「マイティな? 一応、捕虜だったからな…解放されてクビになったも同然だったから、店を開いたんだ。結構売れていてな…エーアイさんには感謝してます。」


「…俺との対応の差激しくない?」


「客としてきたんだろうな? お前にはただ飯はやらんぞ?」


「エーアイ、こんなこと言ってくる!」


「彼女は、既に私の部下でもなければ、身内でもありません。友人の一人です。私に命令権などありません。」


「フン、まぁ、料理の味の方は心配いらないからな。」


 わざと、ご主人様とわかっていて、普通の店員の対応をしていたが案外あっさりと気付かれたようで…ご主人様の人を記憶する力が著しいのは知ってましたが、かなりひどいのですね。


「わぁお! エーアイが作ってくれるのと一緒じゃん!」


「そりゃ、教わったからな…」


 マイティはご主人様に対しては、素で話しをする。メイドの時も仕事中以外はこれでリリアナ様やコチョウ様等と話しをしていたのですが、リリアナ様方が気にならないと言って下さるので、マイティは捕虜の身でありながら、メイドをしたり、自由にしたりとかなりいい待遇だったはず。最も、捕虜の期間が終わると同時に解雇された形になったが。メイドとしての働きは申し分ないのだが、捕虜としてずっといるわけにはご主人様が許されないだろうから、仕方がない。



「…案外安いんだね。」


「普通だ。お前金の感覚ずれてるんじゃないか?」


「そうかも…エーアイはどう思う?」


「ご主人様は、お金の考え方が少々違われるので仕方ありません。」


 物の価値観など、様々な部分でご主人様はずれておられる。それはご主人様がこの世界の常識とは違う、異世界の常識で長年生活をされてきたからでしょうか。


「フフッ従者にバカにされる主人…ップ」


「んな!」


「バカに等しておりませんが…」


 マイティもヒドイことを言いますね。


「…もういい、行こ。」


 ご主人様と私の勘定を済ませ、ご主人様の後を付いて歩いた。


「美味しかったね。」


「そうですね。」


「エーアイはああいうの得意なの?」


「料理でございますか? 人並みには出来るつもりでございます。」


「…人並み?」



 それからも、ご主人様としばらく色々なところをまわり、日も暮れてきた。洋服店、イヤリングなどのアクセサリーの店、様々な店をまわった。


「もう暗くなってたし、帰ろっか?」


「わかりました。」



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