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前略、幼き日の僕達へ。

作者: 相葉広果

覚えてますか あの優しい春の日を

覚えてますか あの眩しい夏の日を


そして 君が消えて


覚えてますか あの切ない秋の日を

覚えてますか あの寂しい冬の日を


僕はまだ夢にまで見る

踵を返して遠ざかった

それ以来 君はもう見えなかった


忘れましたか 二人出逢った春の事

忘れましたか 二人擦れ違う夏の事


そして 君が消えて


忘れましたか 二人引き裂く秋の事

忘れましたか 二人遠くなる冬の事


僕はまだ思い出している

出逢ってからもうすぐ十三年

一日だって 君を忘れたりしなかった


どこに居るの 春はもう駆け足で過ぎて

どこに居るの 夏はもうすぐやって来る


そして 君はいない


どこに居るの 秋にも君は戻ってこない

どこに居るの 冬は僕達も離れ離れだよ


僕はまだ動けだせずにいる

あれからもう二年も経って

それなのにまだくすぶったまま


君と出会ってから十三年

君が消えてから二年

いつか いつか 君がいない日々の方が長くなるときがやって来る



前略 君へ

出会いはあの公園の小さな砂場

覚えてますか 忘れましたか


前略 砂場様

僕たちが出逢った日のことを

覚えてますか 忘れましたか



そして


前略 あの日の僕へ

忘れてませんか 自身の過ちを

十五歳の君は少しだけ気付きました



いつかきっと思い出す

いつかきっとまた出会う

そう信じて歩いて行く


あの砂場から離れて歩く日も来るだろう

それでも僕は いつもどこかで君を待つ



忘れないで 否定しないで 覚えていて

それが僕にとっての幸せ


忘れていいよ 否定していいよ 覚えなくてもいいよ

それが君にとっての幸せならば


忘れたあと 否定したあと 記憶から転がり落ちても

僕は覚えて 君は忘れて

それもひとつの形なんだろうな



前略 君へ 僕へ あの日の二人包んだ砂場様


とりあえず 僕は今十五歳

君を待ちながら 砂場を踏むこともなく

窮屈な日々に肩で息をしながら生きています



少しだけ 過去を振り返りながら 歩いています

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