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自殺志願者

思い浮かんだのは、あの日の光景。


階段、屋上、置き去りの靴。


イナクナル、人。




彼の知らないところで、今日も街は壊れてる。




「ありがとう、ゆーくん。・・・来てくれて。」


「いや、別に。」言われたから。月仲市音(つきなかいちね)に。


「元気そうでよかったよ。・・・安心した。死んでると思ったから。」


「んもうっ!!ひどいよ、ゆーくん!!」


「はは、冗談冗談。・・・ほんと、よかった・・。」



本当に、どうかしてしまうかと思った。本人には言わないけど。


「実を言うとね、・・・来てくれないかと思ったんだ・・。はは、」


「・・・っ、少し、傷残ってるな。・・・・え?」


「あはは、言わないでよ。もう。」


「す、鈴花、お前、」


「・・・ゆーくん?」


鈴花の右目には、いつものような光がなくて。


「・・・め、」


「あ、はは・・えと、失明、したの。はは、」


笑いながら言うことじゃないのに、無理して笑って、きっとこれは。



僕のせい。



「・・別に私は、ゆーくんのせいだなんて、思ってないよ。」


「でも、」


「だって、私は生きてるもん。だったら、もういいよ。」


そう言って、微笑みを浮かべた。


「右目は、もういいよ。左目はぱっちりだしね!」



このときばかりは、鈴花の笑顔に救われた。


「私は、ゆーくんがいてくれれば、それでいいよ。」



小さく、ぽつりと鈴花が言った。



「・・・できるだけ、ね。」


「・・うん。」



鈴花は、一回も青菜さんのことを話題にださなかった。


聞かれるかと、思ってた。




その問いかけの、答えが分からない僕は、安堵していた。






「ただいま、・・どうしたの?」


家に帰ると、母さんが泣いていた。


「・・・母さん?」


「・・ゆ、う。・・・って、」


「え?」


「・・・お姉ちゃん、」



自殺したって。






自殺、僕がもっとも嫌いな死に方。


飛び降りなんて、最悪。



それは、姉さんからの、やりすぎた嫌がらせ。



姉さんは、異質だったから、僕を取り巻く環境下を、羨ましい、とでも思ったのだろう。



だから、死んだ。



どんだけ軽いんだよ、人の命って。





これ以上こんなコトが続けば、僕の心はあの頃に戻ってしまう。


・・・いや、まだ大丈夫だ。


先生がいるから。まだ、大丈夫。





・・・明日になるのが、怖いよ。

















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