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そして、また一人いなくなる
私が欲しかったのは、非凡。
あの子が欲しかったのは、平凡。
ねえ、ゆーちゃん。
どうして人生って、こううまくいかないのかな。
ビルの屋上に、裸足でたたずむ一人の少女。
これから彼女がすることは、明白だった。
「あーあ・・・。」
どうして、私には舞い込んでこないのだろう。
非凡が。
弟のゆーちゃんには、とっても楽しそうなことが起きてるのに。
「いいなあ。」
本当に羨ましい。
いつもゆーちゃんにだけ、非日常のようなことが起こる。
六年前のあのコトも、私に起こって欲しかった。
私に、日常なんていらない。
ゆーちゃんばかり得してずるいから、私は今から、ゆーちゃんのことをいじめる。
一番最低なやり方で。
「そろそろ、かなあ。」
そう言い私は、屋上のフェンスの所まで歩み寄る。
カシャン、とフェンスが音を立てる。
すう、と空気をめいっぱい吸う。
「ばいばい、ゆーちゃん。」
でも、こんなことしたら、ゆーちゃんはもっと楽しくなっちゃうな。
空を切りながら、そんなことに気づいた。