冷たい手
彼の特別になったことが、堪らなく嬉しかった。
握っているその右手の暖かさに溺れてる。
戻ってきた幸せが嬉しかった。
ただ、それだけ。
変わらぬ病室。
異なる来客。
「じゃ、また明日。」
「うん、また明日。」
そうしてゆーくんは、ぽんぽんと私の頭をなでて病室を出る。
最近は、いつもそうだ。
毎日毎日、ゆーくんは私の元へ来てくれる。
学校のことを知る術があまりない私は、ゆーくんが話してくれることが全てだった。
勉強は何処まで進んだとか、面白いことがあったとか。たくさん。
そして何よりも。
また明日、そう言えるのがすごくすごく嬉しくて。
そして今日も、私はこうしてゆーくんを待ってる。
病室の前を看護師さんや他の患者さんが通るのにもそわそわして。
「・・・そろそろ、かな。」
病室に置いてあるデジタル時計に目を向けて、私は呟く。
時刻はとっくに下校時刻を過ぎている。
そのとき、ドアが開いた。
「ゆーくん、いらっしゃ・・・、」
「・・・・ふふ。」
青菜さんが、いる。
あのときと同じ、残酷な笑みを浮かべて。
「な、なんで・・・、」
声が震える。
「うるさい。」
表情に、もう笑みなんか消えていて。
「お前が壊した。西川くんを。」
「どうして、・・・。」
「お前なんか、消えちゃえば良いんだよ。」
「どうして、そんなこと、・・・っ、」
「これが私の愛だから。」
突きつけられたナイフに、抵抗する時間もくれなかった。
じりじりと痛む刺されたお腹から、だくだくと赤黒い血液が流れる。
それを何度も、何度も繰り返されて。
真っ白だったシーツも、
「・・す、鈴花!?」
真っ赤に染まって。
「青菜さん!」
「どうしたの?」
「っ、・・・くそ、なんで・・。」
「やっぱり、・・・だめなんだよ・・・。」
「鈴花、今看護師さん呼んでくるから!」
「わたしは、・・っ生きてちゃ、だめで・・っ、」
ああ、もう死んじゃうんだ。
ゆーくんは、必死で。
死んじゃだめだ、なんてゆーくんが言ってた気がするけど。
「・・・・・ごめんね。」
さとなら、ゆーくん。




