終わるシアワセ
「冗談だよ。」
これが、ゆーくんの口癖。
私だけが知ってる、特別なこと。
・・・なんだろ、さっきから、視線を感じる。
彼女は、帰ってきた幼馴染みの家に向かっていた。
平凡すぎて、気づかなかった。
密かに迫る、破壊の足音に。
「・・・気のせい、かな。」
家を出てから、ずっと、誰かにつけられてる気がする。
・・・へへ、自意識過剰・・・かな。
でも、きっと大丈夫。
ドラマや小説であるようなことは絶対にない。
だって、そんなのあるわけがない。
小学生の頃だって、近くで不審者が出たから気をつけるように、なんて言われても、生徒の誰一人も、そんな人とは出会わなかった。
だから、今日も大丈夫。きっと。
ほら、もうすぐそこに、ゆーくんの家が・・・
「・・・え?あ、」
「こんにちは。ふふっ。」
「青菜さん・・・。」
青菜由織が、そばにいた。
「どうしたの?青菜さん。」
家がこの辺なのかな・・・。見たことないけど。
「・・・青菜さん?」
「・・・・。」
ただずっと、だまり続ける青菜さん。
すると、急に喋りだした。
「待っててね西川くんきっと救ってみせるから。」
「え?」
「こんなの、すぐに殺せるよ。ふふっ。」
そう柔らかく微笑んだあと、見えなかった右手から、金槌が見えた。
それを、私の方へ、振りかざして・・・。
「い、いやああぁああ!!」
よく分からない鈍い音がした後、私は意識を手放した。
金槌を振り上げるときの、青菜さんの笑顔が怖かった。