始まる最後
私は逃げた。
この現状から、逃避した。
ごめん、ごめん。
弱くて、ちっぽけで。
ごめんなさい。
少女と携帯とどこかの屋上。
『ん、鈴花?なに・・・。』
電話口から、ゆーくんの声が聞こえる。
寝起きの声だ、なんて脳天気なことを考えている私の頭は、やっぱり緊張感なんて皆無だ。
「んーん、何でもないよ。ただ、声が聞きたくて。」
『そう・・。それだけ?』
「・・・まあ、それも半分。」
『ったく、声くらい学校で聞けるだろ。』
それが出来ないから、電話してるのに。
「青菜さんが、いるでしょう?」
『あ、・・・うん。』
いつの間にか、ゆーくんの隣には、青菜さんがいるようになってて。
「・・・私さ、真弥のこと、・・・あれ、青菜さんがやったと思うんだ。」
『・・・・なんで?』
「・・・・・そうゆうこと、聞くんだ。分かってるくせに・・。」
『・・・ごめん。』
ほら、やっぱり分かってる。
私、分かんないよ。
どうしてゆーくんは、青菜さんといるのか。
「私、頑張ったんだよ。たくさん、たくさん。」
『・・うん。』
「私がやられたときは、言わなかったんだ。警察の人に、青菜さんのこと。」
『・・・。』
「私、青菜さんに感謝したんだ。」
その結果が、これ。
誰も幸せになんかならない。
「私は自分のことしか考えてなくて。・・それで、真弥も、市音も、・・・。」
しんじゃった。
『・・・ごめん。』
「どうしてゆーくんが謝るの。」
悪いのは、私。
「本当のことを言っても、遅かったの。だーれも信じてくれなかった。」
何もかも、遅すぎた。
「・・・ねえ、ゆーくん。」
『・・なに?』
「私今、何処にいると思う?」
善人ぶっても、どうせ私は。
「私やっぱり、最低だ。」
『鈴花?』
「やっぱり私、・・・自分のことしか考えてない。」
カシャン、私はフェンスに手を掛ける。
「今から私は、本当に最低なことをするの。」
自分でも、酷く醜い心だな、と思う。
『鈴花・・?』
「私今、屋上にいるの。」
『・・え?』
「ごめんなさい。でも、私にはこれしか思い浮かばなかった。」
『鈴花!?』
「私のこと、忘れないでね。」
そう言って、私は携帯の電源を切った。
フェンスを上って、屋上の端に立つ。
それで、私の視界は暗闇に落ちた。




