表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

7.俺の知らない泉奈

あの日から俺たちは、日曜の度に会うようになった。

        冬、雪の季節、そして、初めて二人で過ごすクリスマス

        何もかもが幸せだった。

        年が明けたある日曜の午後

        今日はいつもと違う。

        「どうした?なんか今日は、顔色が悪いけど」

「うんうん、何でもない」

        いつものように笑う泉奈、だが苦しそうに見える。

        「体だるいのか?」

「うん…少しね…私体弱いから、ちょっと風邪ひくと、苦しくなるの、でも大丈夫だよ、ふふっ」

        一生懸命笑う彼女        「でも…無理しない方が」

「大丈…」

        ふらつく泉奈

        「おい、大丈夫か?」

「…う…」

        苦しそうに呼吸する泉奈、思わず俺は、彼女を自分の方に抱き寄せる。        「…ふぅ…ふぅ…」

        俺は苦しそうな彼女を抱き、病院へ走った。

        病院に着くと、すぐに治療が行われた。

廊下の待合で俺は、ただひたすら祈ることしかできなかった。

        しばらくして、一人の女の人が、俺に話しかけて来た。

        「潤さんですか?」

「は…はい、そうですが」

        「泉奈の母です」

        俺は驚いた。

目の前には彼女の母親、また中学生の娘に手を出してと、言われるのではないかと、怖くなった。

        「いつもありがとうございます。

あの子、あなたに会うのが楽しいみたいで」

        怒られるどころか、礼を言われている。俺は複雑な気持ちになった。

        「あの子が今まで、元気に過ごせたのも、あなたのおかげなんですよ」

「僕の?」

        「そう、あなたがいたから、泉奈は小さい頃から体が弱くって、ずっと家に閉じこもりがちだったの、けど、桜の季節になると、猫を連れて公園へ行くの」

        俺は泉奈との初めての会話を思い出していた。

        「そして、あなたと知り合ったのね。

嬉しそうに話してた、新しい友達ができたって、あんなに笑ってるの久しぶりに見たわ」

        …そんな風には見えなかった。まさかあいつが…

        「本当にありがとうございました」

「いえ、こちらこそ、僕も泉奈ちゃんのおかげで、幸せでした」

        俺は精一杯の笑顔でそう答えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ