7.俺の知らない泉奈
あの日から俺たちは、日曜の度に会うようになった。
冬、雪の季節、そして、初めて二人で過ごすクリスマス
何もかもが幸せだった。
年が明けたある日曜の午後
今日はいつもと違う。
「どうした?なんか今日は、顔色が悪いけど」
「うんうん、何でもない」
いつものように笑う泉奈、だが苦しそうに見える。
「体だるいのか?」
「うん…少しね…私体弱いから、ちょっと風邪ひくと、苦しくなるの、でも大丈夫だよ、ふふっ」
一生懸命笑う彼女 「でも…無理しない方が」
「大丈…」
ふらつく泉奈
「おい、大丈夫か?」
「…う…」
苦しそうに呼吸する泉奈、思わず俺は、彼女を自分の方に抱き寄せる。 「…ふぅ…ふぅ…」
俺は苦しそうな彼女を抱き、病院へ走った。
病院に着くと、すぐに治療が行われた。
廊下の待合で俺は、ただひたすら祈ることしかできなかった。
しばらくして、一人の女の人が、俺に話しかけて来た。
「潤さんですか?」
「は…はい、そうですが」
「泉奈の母です」
俺は驚いた。
目の前には彼女の母親、また中学生の娘に手を出してと、言われるのではないかと、怖くなった。
「いつもありがとうございます。
あの子、あなたに会うのが楽しいみたいで」
怒られるどころか、礼を言われている。俺は複雑な気持ちになった。
「あの子が今まで、元気に過ごせたのも、あなたのおかげなんですよ」
「僕の?」
「そう、あなたがいたから、泉奈は小さい頃から体が弱くって、ずっと家に閉じこもりがちだったの、けど、桜の季節になると、猫を連れて公園へ行くの」
俺は泉奈との初めての会話を思い出していた。
「そして、あなたと知り合ったのね。
嬉しそうに話してた、新しい友達ができたって、あんなに笑ってるの久しぶりに見たわ」
…そんな風には見えなかった。まさかあいつが…
「本当にありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、僕も泉奈ちゃんのおかげで、幸せでした」
俺は精一杯の笑顔でそう答えた。